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7.鳥人間ふたたび!




 過去の私へ。

 人を見た目で判断してはいけません。




「──いた! あそこだ!」


 ピラミッドから出るや、待ち構えていたのは鳥頭の人間、略して鳥人間でした。

 ぎゃー!


「お前! そこを動くな!」


 鎧を身に付けた屈強そうな兵士を両脇に引き連れた鳥人間が、もうすぐそこにいる。

 この距離じゃ、もう逃げられない……。


 私はピシリと姿勢を正して、ついでに両手も挙げた。

 わたくしには何も他意などございません、と相手に分かるように態度で示す。

 こういうのは万国共通だと信じて。


「お前、どこの所属だ。名を言え」


 鳥人間が目の前までやって来た。

 万事休す。

 私は大人しく指示に従った。


「さ、小々波(さざなみ)かえでと申します。『まじゅら』とやららしいです……」

流れ者(マジュラ)?」

「はい……」


 大きな鳥の顔が私を見下ろす。これまた大きな尖った嘴が私の鼻先に触れるか触れないかまで接近した。

 ああ私、鳥の餌と間違えられて食べられちゃったりしないよね……。


「……その言葉、どこで知った」

「え?」

「本当の流れ者(マジュラ)なら、流れ者(マジュラ)という言葉は知らないはずだ。あちらには無い言葉だからな」


 どこも何も、さっきお兄さんに教えて貰ったんですけど。

 そう思って横を見た。お兄さんに助けを求めて。


 けれどそこには、誰もいなかった。

 忽然と、お兄さんは消えていた。

 私を置き去りにして、お兄さんは居なくなっていた。

 お兄さん(自称四十歳)は……いずこ?


「聞こえなかったか? どこでその言葉を知ったかと聞いたんだ」

「えっと……ピラミッドの中にいたお兄さんに……」

「お兄さん? お前の兄か?」

「いえ、さっき知り合った……」

「ピラミッドの中に人がいたのか!?」


 目の前の鳥人間は急に慌て出し、隣の兵士と何やら話し出した。

 とても切羽詰まってる様子。

 やっぱりピラミッドの中には入っちゃダメだったのだろうか……?


「援軍を呼んだほうがいいな。本部にも連絡してくれ。もしかしたら街に入ったかもしれない」

「あの……」

「お前! その男の特長は!?」

「……………」

「お前も共犯か!?」


 きょ、共犯かと問われれば、私も不法侵入したのでぐうの音も出ない。


「お前も盗み出したのか!」

「盗み!?」

「違うなら言え! 男の特長は!?」


 え? まさかお兄さん、泥棒だったの!?

 ピラミッドととかに良く出るという、墓泥棒ってやつだったの!?

 嘘でしょ……。いやたしかにあの大荷物は怪しかった。途轍もなく怪しかった……。なんで気づかなかったんだ私!?


 背に腹はかえられない。私まで墓泥棒の一味だと思われたら牢獄まっしぐら。そんなの嫌です。

 ごめんねお兄さん!


「……背が高くて、髪が黒くて、大きい黒のリュックを背負ってました」


 私はお兄さんの特長をつらつら述べた。

 薄情? 鳥の餌になるよりはマシです。


「りゅっく? りゅっくとは何だ?」

「えっと、背負う鞄です。人が一人くらい入りそうなほど、大きいやつで……」

「ああ、あれか。分かった」


 すると鳥人間は、兵士達に私には聞き取れない言葉で何やら話し出した。それは日本語でも英語でも中国語でも無い言葉だった。

 あれ? 自動翻訳は?


「あの……」

「お前は俺と一緒に来い。事情を聞きたい」


 事情聴取!?

 つまり任意同行ということですか!


「………………」


 行きたくない……でも泥棒の片棒を担いだとも思われたくない……。

 そんなわがままな思考に囚われていた。

 黙り込む私へ、鳥人間は優しい声音で言った。


「どうした? ああ、不安なのか。安心しろ、お前が本物の流れ者(マジュラ)でなかろうとも、話を聞くのは女性だ。仮に盗人であれ、弁護人をつける事はできる。ただし、神殿の神具を盗んだ場合は死刑だ」


 鳥人間のとてもお優しいお言葉に、私の心は奈落の底に沈みました。


 一体どうなっちゃうの私!?




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