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0.プロローグ
砂漠の海が風に揺蕩う月の夜。
私は砂の海の上に建つ神殿の前に、呆然と立っていた。
目の前には、異国の異形。
頭は猫。
手は人。
足も人。
パッと見は仮装でもしているかのような風貌。
けれどその青い大きな眼と真っ黒な瞳孔は、たしかに光を持って私を見つめている。
異形の彼はこう言った。
「そなたが我のマタタビか?」
背後には壁。挟まれて逃げ場なんて無い。
眼前には猫の頭をした男。
どうしてこうなった……?
私、仕事帰りに古本屋に寄っただけなのに!