たった一言、『愛している』と
僕は今日死んだらしい。
だから一生の終わりに自分語りでもしてみようと思う。
そうだな……じゃあまず聞くね。君には大切な人はいますか? その人とは毎日会えますか? それともたまにしか会えませんか?
僕にはね、毎日お見舞いに来てくれる幼馴染みの女の子がいたんだ。
同い年だから確か……そうだ、17歳くらいの女の子。
惚気けたいだけだろって? 違う違う、それにもう死んでしまったんだから惚気るどころか、もう会うことも叶わないんだ。それに心配なのが僕のお見舞いばかりでちゃんと好きな人とかいたのかなって思うんだよ。
誰かあの子もらってあげてほしいな。すごい可愛いだよ。
あぁ、話がそれてしまったね。さっきの質問の意味なんだけどね、それを語るにはまず、僕の人生の生い立ちから話そうか。
僕はごく普通の一般家庭にて生まれ育った。3歳で先ほど話題に上がった幼馴染みって言う存在がいて、アニメの主人公みたいなスタートはきれたんだ。でも、それ以降はもうバッドエンド一直線。もうほんとに何の疑いの無いような絵にかいたようなバッドエンドだったよ。
5歳の時にその幼馴染みと公園で遊んでいたら急に倒れて病院送り。当時の話を親から聞いたら、倒れた僕に抱きついて離れない幼馴染み……何だか幼馴染みっていい疲れたから名前にするね。華恋。それが彼女の名前だ。
それじゃあ話の続きね。倒れた僕に抱きついて離れない華恋に、どんなに揺すぶられても起きない僕。救急車がついたときは、公園内がカオスだったそうだ。華恋を含めた子供たちは全員泣きじゃくるし、親達は突然の出来事に何をすればいいのかわからずあたふたしていたそうだ。
僕が親からその話を聞いたときは病室のベッドで笑い転げていたがナースの人に怒られてしまったのは今でも鮮明に覚えているな。
それで僕の病名なんだったかな? えーと、ちょっと待ってね。
………………
うん、駄目だ。思い出せない。諦めよう。
まぁその病気なんだけど、それが不治の病。現代医学では治せないそうだ。それに長くても中学卒業までしか生きれないって言われたけどなんとか高校二年まで生きてやったぜ!
それでなのだが、僕は、5歳の時からずっと病院暮らし。唯一の外との繋がりは華恋の持ってきてくれたクラスの友達からの「早くよくなってね」と言う手紙の束と病室に備え付けてあるテレビくらいだった。
それと余談なんだけど華恋の届けてくれる手紙を見るたびに心の中で「この病気は治らないんだよ」って何度も何度言ってたな。
その度に華恋が「大丈夫だよ」って抱き締めてくれたな。それで一度「毎日華恋に会えるから僕は頑張れるよ」って言ってあげたら泣き出して困ったな。
何していいかわからなかったから軽く抱き寄せてあげた時にボソッと聞こえちゃいけないことを聞いちゃったんだよね。
「やっぱり好き、死なないで」
この言葉を聞いた時、胸が物凄く傷んだ。
それから1週間くらい寝る前や華恋に会ったときに心の中で何度も謝った。
「ごめんね、ごめんね」って声に出せたら、声に出して謝って病気が治るのならどんなに楽だったろうかと。そして、願わくば華恋と幸せに暮らせたらって……
あ、話が逸れてしまったね。
まぁとりあえずそんなこんなで年月が過ぎて中学3年の卒業式。その日にクラスのみんながお見舞いに来てくれた。
理由は単純で学内アイドルの華恋が一声かけたらみんな渋々来たって感じだったけど、僕の顔を見た瞬間男の子たちはまるで敗北したような、女の子たちはまるで人気俳優を生で見ているような、そんな不思議な顔をしていた。
あとで聞いた話なんだけど僕のルックスはそんじょそこらの俳優たちじゃ比べ物にならないくらいにカッコ良かったらしい。自分でも物心ついたときに一度鏡を見たことある程度だったから、それを言われて鏡を見るまで自分がどんな顔をしているのか知らなかったんだよね。
それから僕が死んでしまうまで、クラスのみんなが代わる代わる来てくれた。
勿論、華恋も毎日来てくれたし、時々、華恋の怒った表情も見れて僕は最後まで幸せに暮らせた。
最後の最後で友達が増えて、みんなにかこまれて終われるのは良かった。
僕は満足だ。
だから最後にみんなに向けて一言。
クラスのみんなに、僕を生んでくれた父さんと母さんに、そして、誰よりも大切な華恋に……
今までありがとう。
生まれ変わりがあるのなら、次は元気な男の子としてみんなの前に顔を出したいな。あと、今までの恩返しもしたいな。
最後に、
もう一枚紙があると思うけど華恋以外は読まないでほしい。
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「うぅ」
私は彼が最後に書いた遺書を渡され自分の部屋に行き読んでいた。
また泣いてしまう。ずっと頑張って生きていてくれたのに……このまま泣いていたんじゃ会わせる顔がない。
「私、君になにも、してあげられてないのに」
なのに、なのになんで『ありがとう』なんて言ってくれるのだろうか? 感謝される言われも恩返しもしてもらう必要もないのに。
「なによ、私を誰かにもらってほしいって」
私の気持ちを知っていて『自分は死んでしまうから他の誰かに』とでも思ったのだろうけど、私にはあなた以外考えられない。だから、ごめんね、その望みは叶えられないの。
「そう言えば、もう一枚あるのよね」
私は止めどなく流れ出る涙を拭いながら彼の最後の言葉を読んだ。
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華恋、こんな別れ方になってごめんね。
君はこんな僕でもずっと好きでいてくれた。
多分、誰がなんと言おうが、君は僕以外選ばないのかもね。
だから最後に一言。
愛──て─る
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最後の文字だけ少し濡れていて、少し文字が消えていたが、今の涙で見えにくい私の目でも何て書いてあるか察しがついた。
「最後くらい、ちゃんと言葉にしなさいよ……!」
私はそう叫ぶが、私だって言葉にしなかった。
彼の生きている間に。
この気持ちを伝えていれば。
そう、「愛している」と。
これは中学の頃に突然いなくなってしまった私の大切な日とをモチーフにした作品です。
あ、事実ではないのでそこはあしからず。
楽しんでいただけたのなら幸いです