表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/11

婚約破棄の理由【貧乳】

日間ランキング20位

ありがとうございます

一日で一万PV、ありがとうございます

婚約したことを発表するなら破棄することも発表しなければならないという妙な理論のもと、ある男性が婚約破棄パーティーを開いた。


前代未聞のことで、しかも破棄することを発表するということで、どこのダンス会場も貸してくれない。


その事だけで噂は巡り、あとには引けなくなった男性の両親が自分達の邸でおこなうことにした。


「レヒミオ・キャンプスがここに宣言をする!ルシンダ・ケイヒルとの婚約を破棄する」


何故かバラで飾られた雛壇でこれから婚約破棄をする二人が並んでいる。


女性の方、ルシンダは唇を噛み締めて紺色の飾りの無いドレスを着ていた。


「婚約破棄の理由は何でしょうか?」


記者たちが質問を投げかける。


その質問を待ってましたとばかりにレヒミオは得意気に笑った。


「それは!」


「それは?」


「貧乳だからだ!」


「はぁ?」


理由としては重大かもしれないがわざわざ宣言をすることでもなければ、家の繋がりが必要な貴族では婚約破棄の理由には弱い。


ルシンダの胸は確かに大きいとは言い難いが膨らみが無いわけではない。


「男性諸君には理解してもらえると思う。こんなつるぺたな女では将来に楽しみが無いことを」


必ず共感を得られると思っているレヒミオはいかに胸の大きさが大事か演説を始めた。


それを黙って聞きながらルシンダは扇を握りしめた。


婚約破棄の発表に同席する必要など本当ならないが、不在となれば不貞を疑われる。


「あの柔らかい胸さえあれば他に何もいらない。だから僕は新たにフロレンシア・バーリーと婚約をする」


「おぉ」


レヒミオが紹介した女性は両手で抱えるには大きすぎる胸とフリルとレースがふんだんに使われたドレスを着て、まるで妖精のような雰囲気を持つ女性だった。


男性陣が色めき立つくらいには豊満な胸だった。


「彼女との出会いは、あるユリ園でのことだった。涙を流すフロレンシアの可憐さと言えば周りのユリが霞むほどであり」


いかにフロレンシアが美しいかということを語り婚約破棄をした相手のことなどすっかり忘れてしまっていた。



***************


後日談


「なっなっ何故無くなってるんだぁ!」


レヒミオは邸中に響く声で叫んだ。


「あの柔らかな胸はどこに?それでは、つるぺたルシンダと変わらない。いや、むしろそれよりも小さい」


「あら?そうかしら?」


フロレンシアは優雅に微笑むが、ルシンダより小さくなっているのは事実だった。


レヒミオはフロレンシアの裸を見たこともあったからパットで誤魔化していないことは確かだった。


それでも無くなっていた。


「なぜだ?なぜ」


茫然自失となりレヒミオはフラフラと外に出た。


歩ける距離にかつての婚約者だったルシンダの家はある。


何度も通ったことがあるから迷うことはない。


無意識のうちに呼び鈴を鳴らしていた。


応対した執事は門前払いをしようと思ったが、レヒミオの顔色の悪さに主人に確認をした。


「それで我が家に何のご用意ですの?」


「それは・・・」


何か明確な意思を持って訪ねたわけではないから何も返せなかった。


「かつての婚約者だった方ですもの。知らない仲では無いので今回ばかりは多目に見ますけど次からは改めてくださいましね」


「・・・・・・確かに前触れなく訪れたのは悪かったが、子爵家の君に言われることはない。俺は伯爵家の当主だ」


「伯爵家の当主、ですのね?間違いなく」


「そのような言い方は失礼だろう」


身分が上なら何をしても許される。


子爵家の身分のルシンダの言い方は処罰されてもおかしくなかった。


「申し訳ございませんわ。わたくしにもようやく縁談が来ましたので少々気が立っておりましたの。お許しくださいませ」


「分かればいい。多少の物言いくらい謝れば許さないほど狭量ではないからな」


ふんぞり反っているがルシンダが一度も微笑んでいないことに気づいていなかった。


レヒミオという男は笑みよりも胸の大きさに価値を置く男だった。


「それで用件だったな」


「えぇ」


「フロレンシアの胸が縮んでいたのだ。あれならお前の方が大きい。だからフロレンシアと離縁した暁には後妻に迎えてやろうと思ったのだ」


「・・・わたくしにもようやく縁談が来ましたと先程申しましたが?」


いい案だと信じているレヒミオは子爵家のルシンダが、はい、以外の返事をしたことに理解が追い付いていなかった。


「相手は誰だ?伯爵家である俺よりも優先すべき相手なのか?」


「はい、相手はベルムド・モーズリー公爵ですわ」


「何をでたらめなことを。モーズリー公爵などわが国にはいないではないか」


「昨年、ようやく同盟を結ぶことができた隣国の方ですもの。わが国にはおりませんわね」


同盟を結んだという吉事ならレヒミオが知らないはずはない。


現に子爵家のルシンダは知っていた。


そして嫁ごうとしていた。


「同盟を結んだ何て聞いていない」


「キャンプス伯爵」


「レヒミオでいい」


「レヒミオ様は、この一年間もの間、遠征に出られていましたわね」


「軍に所属する者として義務だからな」


普通は新しく婚約をした場合は最低でも半年は婚約期間を経るのが暗黙の了解だった。


だが、レヒミオが遠征に立つということでフロレンシアの両親が、すぐの婚姻を望んだ。


フロレンシアの実家は公爵家であるから伯爵家であるレヒミオに拒否権はなかった。


拒否権があっても当時のレヒミオはフロレンシアが自分の物になることに浮かれてすぐに婚姻の手続きをした。


「ちょうど遠征に出られた頃に結ばれたのですわ。遠征に出ている方にも知らせは送ったと聞いておりますが、遠方であったから届かなかったのかも知れませんわね」


「嘘をついても分かるから同盟の話は本当だと信じてやろう。それで何故、子爵家のしかも婚約破棄された行き遅れの女が嫁ぐことになる?」


「同盟の証として何組かの縁談がありますが、権力の低い者を望まれたのですよ。その点、わたくしは子爵家の婚約破棄された行き遅れですので都合が良かったのですよ」


ルシンダが嫁ぐ理由も分かった。


いくら他国とは言え、公爵家に喧嘩を売るほど馬鹿ではなかった。


「そうそう、レヒミオ様が遠征に出られてから不思議なことがありましたのよ」


「不思議なこと?」


「えぇキャンプス伯爵家に、男児が産まれたと」


「なん、だと?」


レヒミオは確かにフロレンシアと結婚はした。


だが、遠征の準備が忙しく結婚してから一度も家に帰れていなかった。


結婚前は婚前交渉は嫌だと言ったフロレンシアの気持ちを考えて清いお付き合いをした。


「それにレヒミオ様がお好きな大きな胸が縮んだとのことですが、文字どおり縮んだのではないかしら?」


「ど、どういうことだ?」


「ご本人にお聞きになられては?まぁお聞きになってもレヒミオ様には何もできないでしょうけれど」


「ど、どういうことだ?」


「ご本人にお聞きになられては?」


卓上のベルを鳴らしてメイドを呼んだ。


「レヒミオ様のお帰りですわ」


優雅に微笑んで、かつて婚約破棄の発表をしたときに屈辱に耐えていたルシンダはいなかった。


執事に見送られて、とぼとぼと歩いた。


「おかえりなさいませ、旦那様」


「フロレンシア、君は妊娠していたのか?」


「あら!今頃お気づきでしたの?」


無邪気な笑顔をはっきりと見た瞬間、自分は騙されたのだと自認した。


「あのとき、わたくしは妊娠しておりましたわ。相手はしがない庭師でしたの。愛し合っておりますから合意の上です」


「分かっていて俺の求婚を受けたのか?」


「えぇ貴方がわたくしの胸だけが目的であるのも分かっていましたわ。それに結婚してすぐに遠征に出られるのも都合が良かったですし、身分が下なのは、もっと良かったですわ」


「どういうことだ?」


「だって、公爵令嬢の身分のわたくしが子どもを伯爵家の子として認知しろと申せば拒否出来ませんでしょ?」


「それが目的か」


「ふふ、それを目的としたところで何か問題がございまして?」


あれだけ大々的に胸の大きさに重きを置いていることを記者たちの前で宣言をした。


そんな男が、かつての婚約者よりも小さな胸の、別の男で平民の子を我が子だと認めなければならない。


「そうそう、報告をしなければならないことがございますの。新しい庭師を雇いましたの。使用人の采配は女主人のわたくしの仕事ですもの。よろしいですわね?」


「・・・あぁ」


返事をするしかなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ