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8話 伝説のドラゴンが現れた

 善は急げ。

 さっそく、私はエリクシル草の生えている島に飛んだ。


「あれかな?」


 しばらく空を飛んでいると、目的の島が見えた。


 大きさは、クロエちゃんが住んでいる街と同じくらいかな?

 島の右手に森。

 左手は平原が広がっている。


 ひとまず、私は平原に降り立った。


「さっそく……探知!」


 探知系魔法を使い、エリクシル草を探す。

 魔法の構成を組み替えることで、目的のものを探すこともできるんだよね。

 魔王である私には、それくらいは朝飯前だ。


「んー」


 見える範囲に反応はなし。

 なら、もっと拡大してみようかな?


 魔力を込めて、魔法の効果範囲を島全体に広げる。


「……あった!」


 森の方から反応が返ってきた。

 細かい位置は、森に行ったところで確認しよう。


 よかった。

 本に載っていた通り、ちゃんとエリクシル草が生えていて。


 魔王城にある本はどれも古くて、おまけに魔族が書いたものだ。

 だから、たまにだけど、内容が偏っていたり、間違っていたりするんだよね。

 知識を得るために本を読んだのに、誤った知識を仕入れたりしたら意味がない。

 そうならないために、人間の書いた本を取り寄せた方がいいと思うんだけど……

 お父さんは、絶対に納得しないだろうなあ。

 石頭なんだから。


「あそこかな?」


 少し歩いたところで、森が見えてきた。

 そんなに深い森じゃなさそうだ。

 たぶん、この森のどこかにエリクシル草が生えているんだろう。


 もう一度、探知系魔法を使って細かい位置を……


「グォオオオオオォッ!!!」


 ビリビリと空気が震えた。


 空を見上げると、大きな翼をはばたかせて、己の巨体を誇示するように、ドラゴンが滞空していた。


「貴様、何者だ?」


 ズゥンッ、と大地を響かせながら、ドラゴンが着地した。

 金色の瞳で、ギロリと私を睨みつける。


「人間……ではないな。魔族か」

「私はルイフェ。よろしくね」


 ドラゴンは、私に敵意を向ける。


 まあ、仕方ないよね。

 魔族は、ほとんどの種族と敵対しているからね。

 竜族も例外じゃない。

 過去に、何度も戦いを繰り返したことがある。


 でも、私は竜族と戦ったことなんてないし、敵対するつもりもない。

 できれば、仲良くやりたいんだけど……


 まずは話をしてみよう。

 ひょっとしたら、穏便に済ませられるかもしれないからね。


「ここは、あなたの縄張りなんだよね?」

「そのことを理解しているのならば、なぜ、ここに来た? 我の領域を犯すつもりか?」

「ううん。そんなつもりはないよ」

「ならば、何用だ? 魔族の娘よ」

「この島に生えている薬草が欲しいの。少しでいいから、分けてくれないかな?」

「エリクシル草のことか。なぜ、欲する?」

「友だちが呪いに犯されていて、それを治すために必要なの。お願い!」

「ふんっ、断る」


 私の必死のお願いは一蹴されてしまう。


「エリクシル草は、我の魔力を吸い取り、成長したもの。いわば、我の血と肉の一部。それを、どこの誰ともわからぬ人間のためにくれてやる義理も義務もない」

「そこをなんとか!」

「断る、と言ったぞ」

「どうしても、エリクシル草が必要なの! 私の……大事な友だちのためなの! ねえ、あなたにも、大事な人はいるでしょ? その人が苦しんでいたら、なんとかしたい、って思うでしょ? だから……」

「くくく。我は闇を背負う者……孤独を愛し、孤独に愛されるのだ。群れることは、弱き者がすること。弱者の気持ちなど、我にはわからぬな」


 むう。

 このドラゴン、頭が固いなあ。

 まるで、お父さんみたい。


 口調も、どことなくお父さんに似てる。

 なんていうか、芝居がかっているんだよね。

 ドラゴンって、こんな種族だったっけ?

 頭は良いって聞いているんだけど……


 とにかく、普通の話し合いじゃ、エリクシル草は譲ってもらえなさそうだ。

 なら、別の方向からアプローチしてみよう。


「じゃあ、取引をしよう」

「取引だと?」

「なにかしてほしいことはない? あなたのお願い、私が叶えてあげる。そうしたら、エリクシル草を譲ってくれないかな?」

「ほう……魔族とはいえ、たかが小娘が、我の願いを叶えられると?」

「うん。なんでも、っていうわけにはいかないけど、大抵のことはなんとかなると思うよ」

「その根拠は?」

「魔王だから」

「……なんだと?」

「私、魔王なんだ。この前、代替わりしたの。知らない?」

「……そういえば、そのような情報が我らのネットワークに流れていたな。あのゼノス・マクバーンが己の娘に負けて、魔王の座を譲った……と」

「私がその娘だよ」

「ルイフェ、と言ったな? ふむ、確かに聞き覚えがあるぞ。ゼノス・マクバーンの娘の名と同じだ」

「信じてくれた?」

「……半分だけだ」

「えー、どうして?」

「貴様のような小娘がゼノス・マクバーンに勝利したと言われても、信じられるわけがなかろう。親子故に、手を抜かれたのではないか? あるいは、小細工を弄したのではないか? それとも……」

「ていやっ」



 ゴォンッ!!!!!



 あれこれ言うドラゴンに、私の力を見せつけるため、それなりの力で近くにあった岩を殴った。

 岩は木っ端微塵に砕けた。


「……どうやら、それなりの力はあるみたいだな」

「信じてくれてうれしいな」

「ふむ……いいだろう。取引に応じよう」

「ホント!?」

「しかし、貴様に我の望みが叶えられるかな?」

「言ってみて。聞いてみないことには、わからないよ」

「我の願いは……闘争心を満たすことだ!」


 バサッ、と威嚇するようにドラゴンは翼を広げた。


「我が力は、神に疎まれし力……あまりに強大すぎる故に、全力を振るうことはできぬ。それは、戦う力を持った者には辛いことだ。全力で戦いたい……満たされぬ闘争心が嘆き、心躍る戦いを求めているのだ」

「えっと……全力を出せなくてつまらないから、私に相手になってほしい……っていうことかな?」


 このドラゴン、脳筋?

 どうして、強い人ってこんなこと考えるのかなあ?

 お父さんも似たようなぼやきをこぼしていたことあるし……

 戦いよりも、友だちと遊ぶ方が何倍も楽しいと思うんだけど。


 まあいいや。

 戦いたいっていうなら、私が相手をしてあげよう。

 でも、やりすぎないように注意しないと。


「いいよ。私が相手になってあげる」

「貴様に我の相手が務まると?」

「魔王だからね」

「くくくっ、その自信、いつまで続くかな?」

「そっちこそ、すごい自信だね? 竜族はとても強い種族っていうことは認めるけど、さすがに、魔王に勝てるほどじゃないと思うよ」

「貴様の言う通りだ。が、例外は存在する」

「例外? ……もしかして」

「ほう……その反応、知っているか」

「あなた……もしかして、エルダードラゴン?」


 ドラゴンは、大きく分けて、四つの種類に分けられる。


 普通のドラゴン。

 ドラゴンの数倍の力を持つ、ドラゴンロード。

 さらに、その10倍の力を持つ、エンシェントドラゴン。


 そして……伝説に謳われるほどの力を持つ、最強中の最強、エルダードラゴン。

 伝説上の存在だと思っていたけど、実在するなんて……


 目にも止まらぬ速さで飛んで……

 その鱗は、オリハルコンでできた剣も弾いて……

 ドラゴンブレスは、島を丸ごと吹き飛ばす。


 魔王を上回る力を持っている、まさしく、世界最強の存在……らしい。


「いかにも。我は、エルダードラゴンだ」

「すごいすごいすごい! エルダードラゴンって、伝説の存在じゃなかったんだ! 実在したんだ! サインくださいっ」

「え? いや、その……」

「あっ……ごめんなさい。興奮しちゃって、つい」

「う、うむ。まあ、我の力に憧れる気持ちは、わからんでもないぞ」


 サインを求められて、うれしいのかな?

 ちょっと、締まりのない顔をしてる。


「さあ、どうする、小さき魔王よ? エルダードラゴンである我と戦うことができるか? 我は手加減は一切しないぞ。死んだとしても、おかしくは……」

「うん、戦うよ」

「……あっさりと決めるな」

「だって、それがあなたの願いなんでしょ?」


 願いを叶えないと、エリクシル草を分けてもらえない。

 エリクシル草を分けてもらえないと、クロエちゃんの呪いを解くことができない。


 なら、私がやることは一つだよね。


 相手がエルダードラゴンだろうとなんだろうと、必要があるなら、戦うまでだよ!

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