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4話 友だちたくさんできるかな?

 馬車に揺られること、数時間……

 街に着いた。


「うわあああああっ!!!」


 馬車から降りた私は、街を見て目をキラキラと輝かせた。


 人。

 人。

 人。


 子供からお年寄りまで、たくさんの人がいるよ!

 こんなにたくさんの人を見たの、生まれて初めてかもしれない。


 これだけ人がいるなら、何人か、友だちになってくれないかな?

 クロエちゃんだけじゃなくて、他にも友だちができるかな?


 目指せ、友だち100人!


「どうしたのですか?」

「えっと……私、ずっと田舎暮らしだったから、街に来たの初めてで……だから、ちょっと驚いちゃった。あと、感動も」

「まあ、そうなのですね。ふふっ、でも、この街は小さい方なんですよ?」

「えっ、そうなの?」

「一度、お父さまに連れられて大陸中央の王都に行ったことがあるのですが、そこは、この街の何倍……いえ、何十倍も大きいところでした」

「ふわあああっ、何十倍……!!!」


 すごいすごいすごいっ!

 そんな街を作っちゃうなんて、やっぱり人間はすごいね!

 ますます、人間の友だちを作りたくなってきたよ。


 まあ、人間じゃなくてもいいんだけどね。

 エルフとかドワーフとか、他種族でも全然OK!

 友だちになれるのなら、誰でも大歓迎です!


「おーい、二人とも。そんなところで何をしているんだい?」

「今行きますわ」


 アストさんに声をかけられて、クロエちゃんが応えた。


 クロエちゃんが、私の手を取る。


「あっ……」

「ルイフェちゃん、行きましょう?」

「うん!」




――――――――――




 ハーヴェイ商店は、主に生活雑貨を取り扱っている店だ。

 こぢんまりとしているものの、評判は良い。

 常連客がたくさんいるらしい。


 ……という話を、店に向かう途中、クロエちゃんから聞いた。


 店の裏手に馬車を止めた。

 そのまま、住居になっている二階に足を踏み入れる。


「はっ!?」


 いざ中に入ろうとしたところで、私はとても大事なことに気がついた。


 これは……友だちの家に遊びに来た、という、あの夢のシチュエーションじゃあ!?


 友だちを探しに旅に出て、1日……

 まさか、こんなに早く夢に見た体験ができるなんて。


「どうしたのですか、ルイフェさま?」

「ううん、なんでもないよ」


 感動に打ち震えていたら、クロエちゃんの声で我に返った。

 靴を脱いで、家に上がる。


「お、おじゃまします」


 緊張で、ちょっとだけ声が震えた。


「さあ、こちらへどうぞ」


 リビングに案内された。

 クロエちゃんの隣に座る。

 対面に、アストさんとミリアさんが座り、カップに紅茶を注いでくれた。


「どうぞ」

「はい、いただきます」

「ケーキもあるわよ」

「わあっ!」


 ついつい、大きい声を出してしまう。

 仕方ないよね。

 私は魔王だけど、その前に、一人の女の子。

 女の子は、甘いものには勝てないんだよ。


 というわけで、いただきまーす♪


「はぅっ、すごくおいしいです!」

「喜んでくれたみたいで、良かったよ」

「よければ、もう一つ、食べる?」

「いいんですかっ!?」

「ええ、もちろん」

「じゃあ……って、クロエちゃんは?」

「私は、食が細いので……二個は食べられないのです」

「んー……なら、はんぶんこにしない? 私、クロエちゃんと一緒に食べたいな♪」

「ルイフェさま……はいっ、喜んで」


 クロエちゃんとはんぶんこして食べるケーキは、とてもおいしい。

 ニヤニヤ。

 甘くて幸せで、笑顔が止まらないや。


「さて……ルイフェさん」


 アストさんが、かしこまった声で言う。


「改めて、危ないところを助けてくれてありがとう。心より、感謝しているよ」

「いえいえ、気にしないでください。ほら。困った時はお互いさま、って言うじゃないですか」


 友だちになれるかも、っていう打算はあったけど……

 でも、それだけじゃない。


 魔王城にいた頃は、たくさんの魔族が私のことを助けてくれた。

 いつも気にかけてくれて、困った時はすぐに駆けつけてくれた。

 それは、私が『魔王の娘』によるものだから、なんだろうけど……

 でもでも、助けてくれたことは素直にうれしいし、感謝している。


 だから、今までに助けてくれた分、私は、誰かの力になりたい、って思う。

 お父さんが聞いたら、『魔族にそのような情はいらぬ!』って言うんだろうなあ。


 でも、これが私だ。

 私の心の在り方だ。

 曲げるつもりなんてない。


「こちらが、助けてもらったお礼と、ここまで護衛をしてくれた謝礼だよ」


 革袋を受け取る。

 けっこう重い。

 中を見ると、金貨が少し。

 あとは、銀貨と銅貨が半分ずつくらい入っていた。


 えっと、この前読んだ本を参考にすると……

 平均的な人間の一ヶ月分の稼ぎ、くらいかな?


 ……こんなにもらっていいのかな?

 私、大したことしてないんだけど。


「ちょっと大すぎません?」

「いやいや、そんなことはないよ。ルイフェさんがいなければ、私たちは、今頃どうなっていたか……それに、街まで護衛をしてくれて、本当に助かったんだ。正当な報酬だから、受け取ってもらえないだろうか?」

「えっと……はい。そういうことなら」


 遠慮しすぎるのも失礼と思い、素直に受け取ることにした。

 それに、人間が使うお金を持っていないから、正直、助かる。


「ところで、ルイフェさまは、あのような森で何をしていらしたのですか?」


 報酬を受け取り、仕事は完了。

 すると、今度は雑談タイムがスタートした。


 特に予定はないし、もっともっとクロエちゃんとお話したいと思っていたし、雑談なら大歓迎だよ♪


「えっと……」


 魔王になって好き勝手できるようになったから、人間の友だちを作るために適当に空を飛んでいました。


 うん。こんなこと、言えるわけがないね。

 魔王は元より、魔族っていうことも伏せた方がいいかな。

 基本的に、魔族は他の種族全部と敵対しているからね……


「すごい田舎で暮らしていて、そこで魔法を習っていたんだけど……10歳になると、あちこちを旅して修行をしなければならない、っていうしきたりがあるんだ。それで、旅を始めたんだ」

「ルイフェさまは、旅人だったのですね。素敵です」

「旅と言っても、出発したばかりなんだけどね。で、途中でクロエちゃんたちを見つけて……っていう感じかな」

「なるほど。どこか、運命を感じるような出会いですわ」

「うん。私もそう思うよ」


 クロエちゃんは、気が合いそうというか、仲良くなれそうというか……

 きっと、良い友だちになれると思う。

 そんな幸せな予感でいっぱい。


 クロエちゃんと出会えたことは、本当に運命なのかもしれない。

 そう思うくらいに、私はこの出会いに感謝していた。


「今後はどうされるのですか?」

「うーん……しばらく、この街に滞在しようかな、って。ずっと田舎にいたから、こういう街とか珍しくて……色々と見て回りたいかな?」

「宿のアテはあるのかい?」


 アストさんが、そう尋ねてきた。

 私は首を横に振る。


「いえ。この街は来たばかりですし……宿に泊まったこともないから、よくわからなくて……これから探してみようと思います。どこか、良いところを知りませんか?」

「それなら、ウチはどうだろう?」

「ふぇ?」

「実は、部屋が一つ余っているんだ。よければ、どうだろう? 無論、お金はいらないよ」

「でも……どうして、そこまで?」

「ルイフェさんに受けた恩は、お金だけでは返しきれないからね。困っているのなら、力になりたいんだ。それに……娘も、ルイフェさんと一緒にいたいようだしね」

「はいっ。ルイフェさまと一緒に入られるのなら、それは、とても素晴らしいことですわ」

「どうだろうか?」


 これが、人の『縁』っていうヤツなのかな?

 温かくて、優しくて……

 とても素敵だね♪


「ぜひぜひ、お願いします」

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