表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

11/35

11話 友だちじゃなくて、弟子ができました

「どうか、我を弟子に!」

「え? いや、その……どうしてそんな話になるの?」


 さっきまで、あんなに尊大な態度をとっていたのに……

 今は、ものすごく低姿勢だ。

 どういうこと? ワケガワカラナイヨ。


「我は思い上がっていました。我こそが最強、我に敵うものはいない……しかし、ルイフェさまは、その慢心を打ち砕いた。おかげで目が覚めました。我が最強を謳うなど、おこがましい。まだまだ修練を積まなければならない……と。そのために、ルイフェさまの元で色々と学ばせていただきたい!」

「えー」


 私、友だちが欲しいんだけど……

 弟子なんていらないよ。


「ごめんね。弟子とか、そういうのはよくわからないから」

「そのようなことを言わず、お願いしますっ」

「えっと……弟子じゃなくて、友だちはダメ?」

「滅相もありません! 我などが、ルイフェさまの友になんて……どうか、弟子に!」

「いや、だから……弟子はいらなくて……」

「お願いしますっ!!!」


 ぐぐぐっと、おもいきり接近されて頭を下げられた。

 大迫力だ。


 うーん。

 ここまでしているのに、断るのはちょっとかわいそうかな?

 弟子とか、よくわからないけど……

 でも、一緒にいたら友だちになるチャンスがあるかな?

 そのうち気が変わるかもしれない。

 そう考えると、そんなに悪くないかもしれない。


「うん、わかったよ。弟子にしてあげる」

「本当ですか!? ありがとうございますっ」


 ドラゴンは器用にお辞儀をした。

 よっぽどうれしいのか、尻尾がフリフリと揺れている。

 犬?


「でも、強くなる方法とか、よくわからないからね? 教えられることはあまりないと思うけど、それでもいいの?」

「構いません! ルイフェさまと一緒にいるだけで、色々と学べることはありそうなので。傍にいることを許していただけるだけでも、とても光景なことです!」


 傍にいるだけでいいなんて、健気なドラゴンだなあ。

 なんか、ますます犬っぽい気がしてきた。


「あなたの名前は?」

「リリィと言います」

「あれ? もしかして、女の子?」

「はい、そうです」


 なんだ、女の子だったんだ。

 服が燃えて裸を見られちゃった、って焦ったけど、女の子なら問題ないや。


「これからよろしくね、リリィ」

「はい! よろしくお願いします、ルイフェさま」


 握手……はできないから、私の手の平の上に、リリィがぽんと爪先を置いた。


「さてと……それじゃあ、クロエちゃんのところに帰らないと」

「そのクロエというのは、さきほどの話にあった、ルイフェさまのご友人ですか?」

「うん。大事なお友だちだよ」

「ルイフェさまのご友人ならば、我にとって師と同等の立場であり……失礼がないように気をつけます」

「そんなにかしこまらなくてもいいんだけどなあ」


 いずれ、リリィとも友だちになりたいから、最初から、こんなに固い態度をとられても困る。

 まあ、仕方ないか。

 竜族も魔族と似て、強い者に従う傾向があるんだよね。

 リリィが私の弟子になりたいっていうのも、理屈はわかる。


「あっ。でも、どうしよう? 街中にリリィを連れて行ったら、大騒ぎになっちゃう」


 人間のことは詳しくないけど、それくらいの常識は持ち合わせていた。


「それならばご安心を。変身の魔法を使いましょう」

「え? そんなものがあるの?」

「はい。見ていてください……ていっ!」


 リリィが光に包まれた。

 シュルシュルと光が小さくなって……

 やがて、人の形をとる。


「どうですか、ルイフェさま!?」


 光が消えて、15歳くらいの女の子が現れた。


 金髪のロングヘアー。

 肌は陶器のように白い。

 八重歯が特徴的で、元気な印象を受けた。


 ただ、完璧に変身できるわけじゃないらしい。頭の上に、ちょこんと角が残っている。あと、背中に小さな翼がぱたぱたと。尻尾もある。


 ちょっとドラゴンの要素が残っているけど……すごくかわいい。

 リリィが人間になると、こういう風になるんだ。


 でも……


「裸! 裸だよ!? 服は!?」

「ふふんっ。王者である我に、人間の服など必要ありません」

「必要あるからね!? 恥ずかしくないの!?」

「いえ、まったく?」

「私の方が恥ずかしいから、服を着て! 今すぐ着て!」

「むぅ。よくわからないことを仰りますね。まあ、ルイフェさまがそう言うのならば」


 リリィが手をかざすと、光があふれた。

 光がリリィの体に絡みついて、衣装に変わる。

 私と同じように、魔力を使って衣装を作ったんだろう。


「これでよろしいですか?」

「うん、よろしいです」


 フリフリのドレスだ。

 すごくかわいい。


「似合っているね」

「ふふふっ。せっかくなので、我にふさわしいドレスを選びましたからね。これは、我がオーラを包み込むにふさわしい衣装と呼べるでしょう」


 リリィって、たまに、変なことを言うよね。

 もったいぶるというか、変に格好つけているっていうか……

 中二病?


「基本的に、私と一緒にいる時は人間の姿でいてほしいんだけど、平気?」

「どうしてですか?」


 ドラゴンと一緒にいたら、人間の友だちは作れないと思う。

 そんな自分の都合なのだ。


 でも、そんな理由で、リリィが納得してくれるかな?

 ここは、もっともらしいことを口にしておこう。


「えっと……修行だよ」

「修行ですか!?」

「ほら、その……そう! あえて人間の姿をとることで、力をうまく制御する方法を学ぶの! なんていうか、ギプスみたいな? あんな感じ!」

「なるほど! そんな修行があるなんて、盲点でした。確かに、それならば、より強い力を得ることができるでしょう。さすが、ルイフェさま!」


 納得しちゃったよ……

 自分で言っておいてなんだけど、いいのかな?

 うぅ、ちょっと良心が痛む。


 まあ、人間の姿になると、色々と苦労するのは確かだ。

 その困難を器用にくぐり抜けることができたら、スキルアップに繋がるだろうから……ウソはついていないよね。うん!

 そういうことにしておこう。


「じゃあ、クロエちゃんのところに帰ろうと思うんだけど……ついてこれる? その状態で、空は飛べる?」

「すみません……滅多に人間の姿になることはなかったので、飛行魔法はまだ習得していなくて……」

「なら、私が連れて行ってあげる。はい、手を繋いで」

「失礼します」


 リリィと手を繋いだ。

 飛行魔法の範囲を、私一人じゃなくて、リリィのところまで広げる。


「飛行」


 ふわりと飛び上がる。

 リリィは……うん。問題なく、一緒に飛んでいた。


「誰かと一緒に空を飛ぶなんて、初めてだからちょっと緊張したけど……うまくいってよかった」

「ルイフェさま? もしも、我が落ちていたら、どうされるつもりだったのですか?」

「……」

「ルイフェさま? その沈黙は……?」

「冗談だよ。絶対に成功する自信があったから、大丈夫!」

「本当でしょうか……?」

「師匠の言葉を疑うつもり?」

「そ、そんなっ、滅相もありません! 失礼な口をきいてしまい、申しわけありませんでした!」


 罪悪感が、さらにプラスされていくよ……


 ごめんね、リリィ。

 今度、真面目に強くなる方法を考えるから、それで許して。


「じゃあ、いくよ」


 リリィと一緒に、空高く舞い上がる。

 島が小さくなるくらい飛翔したところで、くるっと方向転換。

 クロエちゃんが住む街に向けて、空を移動する。


「ところで……リリィさん、って呼んだ方がいいのかな?」

「えっ!? ど、どうしたのですか、突然」

「だって、私より年上だよね?」

「おそらくは」

「いくつ?」

「303になります」


 ものすごい年上だった!


 まあ、竜族の平均寿命は三千って言われてるから、リリィはまだ若い方だ。


「私、10歳になったばかりなんだけど……」

「そのようなこと、気にしないでください。我は、ルイフェさまの弟子。師が弟子にどのような口をきいても、問題はないでしょう」

「でも、リリィって伝説のエルダードラゴンなんだよね? 伝説の存在が、10歳の女の子に呼び捨てにされて、周りに対する示しはつくの?」

「我は、孤高の存在故、他のドラゴンとの関わりはあまりありません。なので、ルイフェさまがそのようなことを気にされることはありません。呼び方などは気にせずに、我は、ルイフェさまの弟子なのですから」

「うーん……じゃあ、呼び捨てにさせてもらうね」


 その方が距離が縮まるかもしれないからね。


 もっとも……

 『弟子』としてかしこまるリリィを見ていると、友だちになるのは、なかなかに骨が折れそうだなあ……なんて思ってしまうのだった。

気に入って頂けたら、評価やブクマをしていただけると、とても励みになります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ