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花火は桜橋の上で見る。  作者: 仙北谷瑠楽
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君の隣で過ごした夏

聖天高校に通う主人公、星川みのり。

彼女には忘れられない夏があった。

それは、幼なじみである春上亜季と過ごした小学校5年生までの日々。

毎年、7月7日桜橋の上で花火を見ていた2人。交わす言葉はたったひとこと。それでも心地よい時間だった。

だが小学校6年生の7月7日、春上亜季は失踪した。

みのりとの約束を放ったらかして。


純愛と運命とミステリーが交差する奇跡の物語。




私とあっくんは赤ちゃんの頃から毎年花火を見に行っていたらしい。

そして5歳の時、初めて2人で花火を見に行った。




花火の上がる音と共に見上げた夜空はきっと忘れられない。




「あれが、でねぶ、あれが、あるたいる、あれが、べが。夏の大三角っていうんだよ。」


「あっくんはなんでも知ってるね、すごいなあ。」


「ぼく、おおきくなったらお星さまになりたいんだ。」



その時の私はその言葉の意味なんて知らなくて



「すごい!!あっくんならなれるよ!!」



なんて声をかけた。きっとあっくんもただ単に星に憧れていただけだと思う。けど、5歳にしては考えがまとまっていたなあ、なんて思ったりした。

・・・今、思えばなんて恐ろしい将来の夢なのだろうと思う。


そして、次の年また次の年も7月7日、桜橋の上で花火を見た。

毎年、夜空は綺麗で透き通っていた。天の川の反対側にいる織姫と彦星は今年もちゃんと会えたかな、そんな事を思いながら夜空を見上げた。


「あっくん、織姫と彦星は今年も会えたかな」


「きっとな、こんなに澄んでる夜空だし。」


小学5年の時の会話はこれだった。


毎年、私達は会話もなしにただただ夜空に咲く大輪の花を見上げる。

会話はひとことずつくらいだ。

それでも毎年見に行けるのが嬉しくて。真剣に夜空を見上げるあっくんがカッコよくて、無言なんて全く気にしなくって。



"また、来年も"



そう私に言うとひと足先にいつも帰るあっくん。それを見届けるのは私。

あっくんを見届けてから帰路につき今年も満足した、とひとこと日記に書いて寝る。


それが、小学5年生までの一年に一度の楽しみだった。まるで自分が織姫、とでもいうくらいに自分とあっくんを織姫と彦星に例えていた。



小学6年になり、あっという間に7月7日になった。もちろん、あっくんと行くつもりでいた。


浴衣に着替え、軽く髪の毛を結い、唇を紅でそめ家を出る。向かう場所はもちろん桜橋。


だけど、あっくんは来なかった。

いつもなら、開始10分前にはくるのに。

それからずっと待っても来なかった。

何発も花火が夜空にあがった。


「あっくん、見れなくなっちゃうよ。早く来てよ、あっくん…」


「_____それでは、最後の花火を打ち上げます!!」



バーーーーーーン!!!!!




嗚呼、今年は見れなかった。けどあっくんも予定が入ったんだろうなそんな事を考えて月曜日、学校へ向かった。・・・いつもならあっくんが迎えに来るのに来なかった。小さいながらに胸騒ぎがした。



「____と、今話した通り春上が7日の夜から失踪している。皆も十分、不審者には気をつけるように。」


「え、先生、あっ…春上くんはなんでいなくなったんですか?」


「連れ去られた可能性もあるな。花火大会だったかはな…」


一気に寒気がした。



そして、気づけば保健室の独特な匂いが鼻を占領していた。

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