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嘘の世界  作者: たぬきを狩るタヌキ
第1章 嘘か真実か
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第一章 2 「真」




夏目千穂の人生も新田智和と同じく十八年で終わりを迎えた。

彼女の人生を一言で表すなら智和とは真逆で「真」だろう。


彼女は幼い頃母親に読んでもらった"嘘をつく子供"という童話の話を知ってから嘘をつかなくなった。


嘘はダメなこと、悪者なのだと子供ながらに嘘をつく友達に伝えていた。

だが、中学二年生の時その嘘をつけない、つかない性格で初めて後悔をすることになる。


彼女には小学校から仲の良い友達が一人いた。その子の名前はメグと言ってお互い隠し事をしないしなにか悩み事があれば真っ先に話す。まさに親友と呼べる仲だった。

そんな二人の仲を裂くことになったのは他でもない千穂だった。

彼女はあるときメグにある重大な相談をされた。


それは将来のことだった。


メグは声優になりたいと言った。アニメで自分が元気をもらったり感動させてもらったように今度は自分がテレビの前の人たちにそれをしたいと語った。


「それがメグのしたい、やりたいこと?」

するとメグは彼女の目をまっすぐと見たあと一度だけ首を縦に振った。


メグが彼女をまっすぐと見た時の目は今までに見たことがないくらいやる気と覚悟に満ちた目をしていた。

それを見て彼女は「がんばれ」と一言声をかけた。

そして少し見つめあったあとメグはホッと胸をなでおろし

「がんばる!」と言った。



そして事件は起こる。

ある日、彼女とメグのクラスで七夕を飾ることになった。

短冊を一人一枚書くことになり、彼女は「メグが声優になれますように」と書いた。


だが、これが悲劇の始まりだった……



7月7日を迎えた。

この日、教室の隅に一本の大きな笹が立て掛けられ皆で短冊をつけ飾り付けをした。

するとみんな短冊に何が書いてあるか見始め、とある女の子が笹の真ん中のらへんにあった一つの短冊に目をつけた。



「メグが声優になれますように…?え?なぁメグ!おまえ声優になりたいのかよ!アニメの声優かなにかか?」


メグは肩をビクッとさせなにも言えずに立ちすくんでいた。


無言を肯定だと捉えたその女の子は周りにいる子達を見渡しみんなで笑い始めた。



夢を侮辱する笑い声が針のようにメグに突き刺さり、それを防いでくれるものはここにはなかった。


--


夏目千穂がトイレから教室へと向かう途中から笑い声が聞こえてきた。そして教室に着くと異様な光景が広がっていた。


メグがクラスのみんなに囲まれるようにいた。そしてそれは良い方ではなく悪い方で囲まれているのだとすぐに分かった。



メグが泣いていた


何が起こっているのか理解出来なかった。

だが一人の女の子が発した言葉で全てを理解し、理解させられた。


「千穂も馬鹿だよな〜短冊に人の夢書くなんてさ」


泣いている原因が自分の短冊のせいだと知り、教室のドアにかけている手から、教室に入ろうとする足から血の気が引いていくのがわかった。

するとクラスメイトのひとりが教室の入口で固まっている彼女に気付いた。


「あー千穂帰ってきた!」


その一言で全員の目線がこちらへ向く。

その時、彼女は初めてクラスメイトに恐怖を感じた。


一人の女の子がこちらに向かってきて「メグってほんとに声優になりたいの?」と口の端に笑みを浮かべながら聞いてきた。


彼女はメグを見ると小さく首を振っていた。


しかし彼女の口から出てきたのはメグの望んだ答えとは違った。


「そうだよ」


彼女は俯きながらそう答えた。

彼女は嘘をつかなかったのではなく、つくことが出来なかった。

メグが望む答えとは違ったとしても、メグの夢を否定してしまうことはその場だけの嘘だったとしても彼女にはできなかった。


彼女が顔をあげ、メグを見ると歯を食いしばり怒りとも哀しみとも違う表情をしていた。


その日からメグはいじめられ、千穂はメグもクラスメイトから避けられるようになった。


クラスメイトから避けられるのはあまり痛くなかったがメグから「もう関わらないで」と言われた時は体の一部を無理やりもぎ取られたような切実な痛みを感じた。


そしてメグに関わらないでと言われた以上イジメにも不登校になった時も見て見ぬふりをするしか無く彼女の心は完全に壊れていった。


中学の卒業式にもメグは参加しなかった。卒業式からの帰り道、彼女は最後の通学路を歩きながらあの時もし嘘をつけていたらこんなことにならなかったんじゃないか……そんなことばかり考え、葉を散らした木の下を歩きながらメグを想い家に着くまで泣き続けた。


そして彼女は高校生になった。

中学の時のような明るいイメージは消え失せ、笑うことはほとんどなく厳しい。

まさに氷の女帝のようになっていた。


高校に入ってからしばらく経った頃、彼女は時折変な夢を見るようになった。


--


真っ白い空間に彼女はいた。

そこは何もない空間だった。


そんな空間に一人の女がいた。


白髪

モデルのように手足が長く

控えめな胸のふくらみ

キュッとしまったお尻


この空間には似合わない妖精のような女が私の方を向いてそこにいた。

彼女はひどく優しげな表情をしていて印象は優しいお姉さんといったところか。


「初めまして。千穂さん」


彼女の美貌に見とれているところで話しかけられた。

彼女は耳の底で優しく囁かれるような、聞いていてとても気持ちの良い声をしていた。


「あの…千穂さん? 聞こえていますか?」


「すみません、少しテンパっていました」


「いきなりこんな場所に呼び出してしまいすみませんでした。私からあなたに提案したいことがあってお呼びしました」


「はぁ……その提案というのは?」


「こちらの世界に来ませんか?」


えっ?

頭の中が疑問符で埋まっていくのを止められない。


「つまり異世界へ転生するってことですか?」


「はい。 あなたのことはずっと見ていました。 中学二年生のときのことも。 あなたはあれから心を壊してしまった。 今後も今の世界にいる限りあのことを忘れることが出来ずこのまま壊れたまま過ごすことになるでしょう。 なのでこの世界を捨てて、違う世界で一から始めてみませんか?」


異世界に転生することはにわかに信じ難い話だったがなぜだか彼女のいうことに嘘や偽りがないということは直感だが感じられた。



私は決めた。


「違う世界に連れていってください。今の世界にいてもいずれ自分から死の道を選ぶことになると思います。そうなるくらいならメグの十字架を背負って異世界へ行き一からやり直します」


「分かりました。しかし一つ転生するために必要なことがあります」


「なにですか?」


すると彼女は表情を一つも変えずにこう言い出したのだ



「同じ学校に通う 新田智和という男を殺してください」


え……?


「ちょ、ちょっと待ってください。なんでその男を殺さないといけないか聞いてもいいですか?」


すると彼女は少し戸惑ったあとゆっくりと語だした


「彼は物心つくころから嘘をつき続けていて、嘘をやめたいのに人間関係が切れるのが怖くて嘘に嘘を重ねていっています。 何度も死んでリセットしたいと思っているみたいなのであなたと共に違う世界に連れていってあげようというわけです」


彼女がそう言うならばそうなのだろう。

それなら違う世界に一緒に行くのも悪くないのかもしれない。

一人で異世界に放り込まれるのは不安の種が尽きない。

殺すというと聞こえが悪いが異世界に連れていくということなのだし自分が異世界に行くことに必要なことならば成し遂げよう、そう決めた。


「わかりました。私は彼を殺した後はどうすれば異世界へ行けるんですか?」


「夜になり眠ると私がまたこのように迎えに来ます。他になにか聞きたいことありますか?」


正直聞きたいことは山ほどある。

私たちを異世界に連れていくあなたのメリットやその他もろもろだ。

でもなぜか彼女は信用できると思った。

なので一言


「ありません」


そう言い私は新田智和という男とともに異世界に転生することを心に決めた。


「わかりました。それではまた夜にお会いしましょう」


彼女がそう言うと千穂は深い海の底から引き上げられるようにして目を覚ました。


夢の出来事はしっかりと記憶に残っていた。

千穂はその日のうちに彼を殺すのを実行することにした。


そしてプロローグへと話は戻る。





次話はついに異世界に転生します。

ほかの人の作品と比べたらまだまだですが暖かい目で見守っていただけると嬉しいです笑

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