第一章 1 「嘘」
──このふたりは誰だ?
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新田智和の人生は十八年で終わりを迎えた。日本男性の平均寿命は約八十年だから四分の一も生きることが出来なかった。
そんな彼の人生を一言で表すなら「嘘」だろう
彼は物心ついた時から毎日嘘をついていた。小学生まではすぐ嘘だとバレるようなものが多かったが中学生になりその嘘は友達との話題作りのためや、自分を取り繕うための嘘へとなり嘘が嘘だとすぐにバレないようなものへとなっていった。
彼は高校生になりそんな自分に嫌気が差した。
嘘を守るために嘘を新しくつき、次の日、昨日の嘘を守るために新しい嘘を重ねていく
今まで嘘をつくことが当たり前になっていた彼だが、積み重ねてきた嘘が多くなっていくにつれ
──明日どういう嘘をついたら今までの嘘と矛盾しないだろう。
気付けばそんなことを毎日寝る前、考えるようになっていた
彼は自分に嫌気を感じながらも今まで積み重ねてきた人間関係を失ってしまうのが怖くて嘘をつき続けた
そして彼は最後の日を迎えることになる。
あの日いつものように登校し下駄箱を開けるとそこに一枚の手紙が入っていた
差出人は夏目千穂。内容は体育館裏に放課後来て欲しいといった旨のものだった。
彼女とは特に接点がなく学校に夏目千穂という人物がいるのを知っているというくらいの関係だ。彼女は生徒会役員で風紀委員長をしているので、彼が彼女の名前と顔を知っていることは当然といえば当然だった。
そして放課後になり彼は体育館裏へと約束通り行くとそこで彼は、彼女に殺された
彼は嘘を積み重ねていく自分が嫌いで死んでリセットしたいと思うこともあったが、いざ「死」が間近になると多くの人がそう思うように彼も死にたくないと思った
今までついた嘘が全てバレずに済むとしても彼がついてきた嘘は自分が生きていてこそ意味のあるものだったのだと皮肉にも死ぬ間際に気付いた。
そして次の瞬間、彼は自分の嘘を置き去りにしたまま、彼女に殺された理由も知ることが出来ずにこの世を去った。
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そして物語は冒頭へと戻る
──このふたりはだれだ?
僕は夏目千穂に体育館裏に呼び出され突然殺されはずなのだが、死んだはずの僕は目を開けることが出来た。
そして視界に入ってきたのは白い髪の若い男と女だ
二人は僕の顔をのぞき込んで変顔をしたり、いないいないばあをしたりしている
はっきりいって全然おもしろくない。むしろ不気味だ
考えてみてほしい、目を開けると知らないふたりが変顔をしているのだ。恐怖以外に何を感じろというのだろうか
僕はかなり大きなベッドのようなものの上にいるようだ首が何かで固定されているのか少ししか動かないので自分の状況があまり把握できないので目の前で変顔をしている二人に聞くことにした。
「うぁ〜」
ん?
「んばぁ〜」
……あれ?
寝起きの時のような声しか出ない。
しかし目の前のふたりは僕が声を出したことで目を見開いたあと、満面の笑みに変わり男の方が僕を抱えて踊り始めた。
と、ここでひとつおかしなことに気がついた
若い男の身長はだいたい180cm、僕の身長は165cm
抱えて踊るには無理がある。
違和感を感じていると男は僕を抱えたまま洗面所に来た
そこで僕は鏡に映る、男に抱かれる"モノ"を見て、今までの違和感がなくなると同時に自分の状況を信じたくはないが把握出来た。
僕は生まれ変わって赤ちゃんになっていた。
最後までお読みいただきありがとうございます
次話は夏目千穂について書きます。
楽しみにしていてください!
コメントでここをこうしたら良くなるよ!とか教えていただけるとうれしいですm(*_ _)m