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嘘つきと泥棒の始まり  作者: 柴田 鴨
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嘘つき男と地味女



「君、すっごく可愛いね!良かったら俺とその辺の喫茶店でお茶しない?ケーキとか奢ってあげるよ」




恋愛経験ほぼ0に等しそうな地味女をとっ捕まえてはそんな世辞を吐いてナンパをする。

話し掛けられた女は最初こそ警戒して離れようとするが、俺のテクに掛かれば小一時間で親密な仲にまで発展させられる。今迄しくじった事なんて無い。

ある程度仲良くなって、がっぽり貢がせて、そろそろ良いかなという頃合でこっちから切る。勿論恨まれたり面倒なトラブルにならないよう、それっぽい言い訳を付けて。


嘘をつかせたら世界一と自負している俺にとってそれくらいの事は朝飯前。金が足りない時は例によって攻略が簡単そうな女を捕まえる。

…本当に、俺から言わせれば人生なんてイージーだよ。

こんなに口達者に生んでくれた両親には感謝してもしきれないね。何があっても完璧な嘘さえあれば大抵の事は乗り切れるんだから。



また地味な雰囲気の、スカウト詐欺なんかに遭えばすんなり騙されてしまいそうな女が向こうから歩いてくる。真っ黒でボサボサな長い髪を二つに結わえ、前髪は目が隠れるくらいまである。しかも服装なんて無地のパーカーとジーンズ。…此奴、搾り取れる程の金なんて持ってんのか?

まあ、良い。騙されてる間の女の顔を見るのも俺の楽しみの1つだし、ちょっとくらい少なくても。



「ねえ!今、ヒマ?…ああ。ごめんね、君が可愛かったからつい声を掛けちゃった。良ければ一緒にお茶でもしたいなって思ってさ…どうかな?」



こんな風に人を騙す時には表情も重要だ。下手に作ったような笑顔なんかで接したら嘘だとすぐにバレてしまう。自然に、柔らかく、本当にそう思っていると思わせるくらいの微笑みが大事。



「す、すみません…暇じゃないんです。急ぎの用事があって…」



やっぱり初めは断られる。ここまでは想定内。

ここからが本番、俺のテクが炸裂いたしますよ。



「そうだよね、急に知らない男から話し掛けられたらそりゃ逃げたくもなるよ。でも…俺のさっきの言葉は本心なんだ。君に一目惚れしてしまったと言っても過言じゃない…それは事実。本当に君と、少しでも良いから話がしてみたいんだ。ほんの少しで良い。だから……お願い。君が心配しているような事はしない!約束するよ。純粋に君が好きだから…」



内容の9割は自分でも背筋がゾワッとする程の気持ち悪い冗談。それでもカモを取り逃がすわけにはいかないから、明らかに心の底から思っている事だと分からせるように表情も寂しそうな感じにして、必死さが伝わるように女の手を取って話す。俺自身、顔は悪くないし…過去に何度かファッション雑誌に取り上げられた経験もある。こんなに演技力もあるし、今からでも俳優になれるんじゃないかとも思う。

こうして必死に伝えた結果、殆どの女はコロッと騙されてホイホイ付いてくる。此奴も絶対そうなる。






「本当に急いでるんです!お願いですから離して!相手が欲しいなら他の人をあたってください!!」




____あれ。


もしかして俺、本気で断られてる?今。



「え、えっと…ごめん。引き止めちゃって。…あーじゃあさ、せめて連絡先だけでも」


「さようなら!」





可笑しい。本当に去って行く。

こんな事今迄一度も無かったのに。



…地味女のくせに俺の誘いを断るだなんて上等じゃねえか。







俺は、こっそりその女の後ろを付いて行く事にした。こんなストーカーみたいな事を自分がする日が来るとは思っても見なかったが、このままではあまりにも怒りが沸き上がって収まらない。


あの女を捕まえて……目に物見せてやる。







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