プロローグ
この世界には【亜人】というものがいる、人間を遺伝子組換えで作った新人類、しかし生命倫理と狙った通りの人間ができない技術面に押しつぶされて、成功品はったった3つしかできなかった。
成功品の一つは長寿、しかし120年20代をキープしたけど、最後は自殺してしまった
成功品の二つは怪力、しかし力に溺れて39年で殺された
成功品の三つは知識、これは亜人計画の終盤に出来たため観測を終える前に組織が崩壊してしまった。
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「そこのお兄さん、少しどけてくれないかな?」
俺は大学二年生の 、現在は大学の教室で寝ていたため清掃員に見事起こされた、基本授業は単位を取るためのもの、寝て、起きれば終わっていると言う何ともつまらないものであった。
外に出ると俺は早速書店に向かう、書店は古本屋の【ルックオフ】と言う場所で、バイトでためた金で本を買うのが趣味である、本の種類はなんでも良い、漫画だろうが小説だろうが専門書だろうが関係なく、そこに知識があれば何でも良かった、今回は少し目に入った【知識の龍】という小説を購入してみた、題名は勿論、綺麗な緑の背景に龍の尻尾が生えた少年の絵は僕の心を惹きつけた。
家に帰る、僕は一人暮らしで部屋にはTVと冷蔵庫がある程度で、あまり面白いものはない、買ってきた本をテーブルの上に置き、台所で料理を作る、昔友人に教えてもらった【そば飯】というのを作る、これが結構美味しいのだ、焼きそばの炒めしで、なんとも簡単で美味しい1品だ
「いただきまーす」
そう言うとそば飯を口に駆け込む、やはりこういう類の食べ物は出来立てに限る、彼女でもいればだらだらと飯を食べてイチャコラするのだろうが、独身貴族決め込んでる俺はクールにホットな飯を食べる。
食べ終わるとテーブルの上の本に手を付けた、そして本を表紙の角からがぶりと噛み付いた、俺は本を食べる、というか本が主食だ。
俺は亜人、知識の化物だ、亜人としての能力はそれ単品で手に入る知識量を食べることでそのまま得ることができ、そして普段の生活で必要なエネルギーは知識を消費することで生活するという能力であった、簡単に言うと【本を喰わなきゃ馬鹿になって死ぬ能力】、普通の食事でも知識は手に入るのだが、やはり本を食べたほうが明らかに経済的で手っ取り早い、俺にとって料理は趣味というか嗜好品だ。
「う~ん、この本は結構美味しいな、うん!」
俺にとって本には味がある、味覚とは違い、、そう、感覚的には食べ終わった後の『は~美味しかった』と言う感覚だけがダイレクトに伝わるのだ、知識は重複していても得ることができるがやはり今まで知らなかった知識を得るほうがこの感覚が良い、新聞なんかは結構安価でいいのだが、インク臭さが個人的に嫌いであまり摂取しない、
本を食べ終わると、少々喉が乾いて外に出る、コンビニは人類の宝だ、なんせ二四時間年中無休営業という素晴らしい営業スタイルだからだ。
外に出ると、頭上には綺麗な星空が見える、亜人とは確かにすごい、俺なんて教科書食べれば点数が取れるし、本を喰らいまくれば歩く図書館にだってなれるのであろう、しかし、しかしそれはあくまで理論上だ、普通の人間は俺を化物という、ズルいと妬んで、怖いと恐れて、憎いと睨む、そんな生活が嫌で、大学でも亜人のことは隠して生活している。
暗い道を暗い気分で歩いていると、目の前には髪をボサボサにした男が立っている
「よくも、、、、よくも!!」
《ザシュ!》
俺の懐には鉛色のナイフが刺さっている、腹部が焼けるように痛い、血が滴る、俺は膝から崩れ落ちた
「この!!!!!!!!!!」
《ザシュ!》
なんの抵抗もできずに刺されて、俺は歩道に横たわる、痛いし苦しい、そして一番苦しかったのは何故刺されたのかが分かってしまうことであった、膨大な知識、これは即座に刺された理由を導き出した、あまりにも残酷な理由だ、それは『彼が俺の行っている大学に落ちた浪人で、俺が亜人だと何処かで知って、怒りがこみ上げてきて刺殺した』、と言うところだ、、、
「くそ、、、俺だってなりたくて亜人になったわけじゃねえのによ、、、ひでえ話だよな、は、ははは」
特にこの世に未練があったというわけではなかったが、非常に悔しかった、生まれ持った力に殺されるなんて何たる理不尽だ、あまりに不公平だ、そういう気持ちで一杯になったと思ったら、そのまま意識は夜の空に吸い込まれるように消えていった。
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綺麗な川が見える、白い玉がそこらじゅうを舞い、地面には彼岸花が咲き乱れる、俺の知識ではここはあれだ、三途の川ってやつだ、本当にあるとは思わなかった。
「うわ~、綺麗だな」
あまりの光景に思わず言葉を漏らす、右や左を見れば何処までも彼岸花が列をなして咲いていて、正面の三途の川は霧ではっきりは見えないが何処までも続いている、人魂のような物は船に乗るとその何処までも続く川に消えていった
「やあ、お兄さん乗って行くか?」
鎌を背負った赤い髪のお姉さんは俺の方に来て、船に乗せてくれた、巨乳だ、もう一度言う巨乳だ、服装は少し着崩した和服だ。船は小さいもので、そして不思議と漕がずとも霧の中を進んでいった
「お兄さん、あっちじゃどうだった?、随分若そうだけど楽しかった?」
「いえいえ、全然ダメダメでしたよ、結局俺なんかは後悔だらけで」
船頭は俺に生きている間の事を色々訪ねてきた、俺は亜人のこと、親のこと、友人のこと、バイトのこと、色々な事を話した。
「そろそろ閻魔様の元へ付くよ」
「そうですか、最後に話を聞いてくれる相手以外て、本当に嬉しかったです、ありがとう」
船頭が船を止めた、まだ陸地は見えないというのに何故であろうか、そして船頭は申し訳無さそうに俺に話しかけてきた
「なあ、お兄さん人間じゃないだろ?、だからさ、閻魔様のいる冥界がお兄さんを拒否しているみたいなんだ、どうしたものかね、これじゃ何処にも行けやしない」
「その辺に捨てちゃってください」
死んでまでも亜人であることに苦しめられる、本当に酷いものだ、亜人は閻魔にすら会えないというのだ、こんなひどい目にあうなら、、、生まれてこなければよかった、俺は確かにそう思った。
「そうそう、お兄さん、この川に落ちると現世に戻るんだよ、ただ、どの世界に行くかは分からない、お兄さんのいた世界に行けるとは限らない、どうだい?少し楽しそうとは思わないか?」
「楽しそう、、まあ、そうかもしれませんね」
俺の心中を察したのか、船頭は俺に面白い話をしてきた、まあこの下でずっと溺れているよりは気が楽になった、もし、、もし行けるのであれば、この能力を生かして、活かして、行かせる世界に行きたいものだ
「お兄さん、次は杭を残さずに死ねよ、そしたらまた土産話を聞かせてくれ、あとこれはお土産だ、死神印のお守り、お前の望む世界に運が良ければ連れて行ってくれるさ」
「有難うございます、もしまた会えたのであれば、その時はお願いします」
《ダプン!!》
体は沈む、冷たい水に浸かると、惹かれるように下まで沈む、もし願いが叶うのであれば、もし俺望みが成就するのであれば、、、俺は最後に食べた本の龍の少年のように美しく、ジャンヌ・ダルクのように勇敢で、アーサー・ペンドラゴンのように仲間に囲まれて生きてみたい、そう願う、上を見上げるともう何も見えない、意識はどんどん遠のいていく、そして最後は完全に意識が無くなった。
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目が覚めると、そこには綺麗な空が見える、そして女の子が箒にまたがって火の玉を放ちながら、大声で叫んで高速移動をしてい
「なんだあれ!?、まて、意味不明だぞ!?どういうことだ!?、女の子が、箒にまたがって、火の玉を放つ!?、まったく状況がわからねえ、俺の知識じゃ意味不明だ!」
俺はその場に座って状況整理をしようと考えこむ、俺の記憶にあるのは、、、えーと
①コンビニ行こうと思って刺殺される
②巨乳の死神とデートをする
③冥界に行けずに池に落ちる
④異世界に行く
と、ここまで状況を整理してようやく状況を把握した、ここは俺のいた世界とは全く異なる未知の世界だ、そうでなければあんなおかしな光景はそうそうお目にはかかれない、
「===!=============!!!」
後ろから金髪の男が箒にまたがって飛んできた、なにか叫んでいるが何を言っているか分からない、まあ異世界なんだ、わかるはずはないのだが
《ガン!!!!!!!!!!!!!!!!》
俺は箒の少年にぶつかった、俺は一瞬だが死ぬかと思い、箒の少年はその辺に転がり落ちた、そして少年は俺の方へ歩いてきて胸ぐらを掴む、全く状況が分からない
「====!!===、======!!」
「そ、、ソーリ」
全く何って言ってるか分からない、ただ表情から怒っていることはよくわかった、あと身なりはとんがり帽子にローブ、魔法使いといったところであろう、これぐらいなら今の知識でも把握可能だ
少しすると最初に見えた少女が降りてくる、こちらも金髪でとんがり帽子にローブ、
「====!====」
「==!====、=====。」
少女は少年をなだめているようだ、容姿が似ているところを見ると兄弟であろうか、そして二人して飛んでいた、、、魔法を連射、ということは兄弟喧嘩、、いや小競り合いの最中であったと把握した、しかしこれはあくまで仮説、これを前提に解釈をしても、それは間違えである可能性も考慮して行動しなければならない。
少女がこちらへ歩いてくる、目は青く、肌は白い、西洋の人間によく似ている。
「===?===」
「私、喋れません!」
会話にはならなくても、これで俺がせめて異郷の地のものであるということは分かったであろう、そうすれば言葉以外のコミュニケーションが成り立つ、、はずだ。
俺の思惑は見事的中、少女は俺に身振り手振りでコミュニケーションを取ろうとし始めた、俺は飲み物がほしいと言うジェスチャーとお腹が減っているというジェスチャーを取った、と言っても俺は一切空腹じゃないし飲み物も欲していない、飲み物に関しては少しトラウマだ、しかしこうすれば街まで案内してくれると踏んでの行動だ、なんせ少女も少年もそう見ても食料も水分も持ち合わせていないからだ
少女は手招きをしてきた、俺はコクリとうなずいて少女に付いていく、風景は何とものどかで、イメージ的には北海道の田舎、という感じかな?、周囲にはスライムだったりゴブリンがいる、しかし襲ってこないためか完全に無視して進んでいった。
しばらく歩くと街が見えてきた、街には沢山の魔法使いらしき人たちがいる、街の大きさはさほど大きくはないが、露店などが幾つかあり、活気はある、少女はここで待っていろと両手でストップサインを出して少し俺の元を離れた。
その間周りを見渡す、街は木造の建物が何軒も立ち並び、祭りの屋台のような感じで露店が出ている、そんな中、俺の足元に足元に何やらゴミが落ちている、それはチラシだ、この世界のチラシ、文字のようなものがびっしりと書いてある。
「、、、これを、、食べるか?、、いや、それは人間としてどうなのだろうか、、しかし」
俺は心のなかで葛藤した、文字媒体の情報はかなりの知識量だ、これを食べればこの世界の言語の知識が手に入る、しかし人として落ちてるチラシを食べるのはいかがなものであろうかという気持ちもある。
「ええええええい、もう食べてしまえ!!」
俺は土だらけのチラシを口に入れて飲み込んだ、泥の味と質の悪い知識、最悪の味である、そして目の前を見ると
「、、、なにヲ、やているんですか?、そな、落ちてるゴミたべなくていいのに」
そこには養豚所の豚を見るよな目で俺を見る少女がいた。
片言だが少し言葉がわかるようになった、そして俺は異世界に来て初日で、、、ゴミを食った