第7話 「恐怖」
また始めてみました。色々初めの話から編集しつつ、次話を投稿していきたいなと思います。
第7話
「誰だ...。お前。どうして、俺の名を知っている...!」
アリマは、心の中の感情を抑えながら、彼に問いかけるように叫ぶ。
「ははっ。そーいう顔、だぁーいすき。」
茶色の髪をもつ青年は笑う。飽きないくらいに笑い、そして、笑う。目の前の”独りぼっち”の王子を見つめて。
”なぁー、あんたはわかってるんだろ。アリマ・ウルメディア。あんたが一番、自分自身のことを。わかってるはずだ。”
「俺は、ルーザ。下の名は無い。」
ルーザと名乗る青年はニヤリと笑う。そして、ゆっくりとアリマに近づく。一歩。また、一歩。
ガサッ ガサッ
アリマの中で何かが刻まれる。一秒一秒、悲しみが、自分の中の何かが、おかしくなっていきそうだった。
「ねぇー。」
「!」
アリマがハッと顔をあげるとルーザの顔が目の前にあった。ルーザはやはり笑う。何か考えてるような。余裕のあるような。
”俺を、全て知っているような。”
「まだ、言ってないんでしょ。お前の本当のこと。お前がとっても、弱いということ。お前はまだ、ここにいてはいけない。それを言いに来ただけだ。」
ルーザは、ニヤリとまた笑う。そして、アリマから、ゆっくり離れる。
何が起こっているのか、何を言われてるのか。アリマは、まだ理解できない。いや、理解なんてとっくにできてる。ただ、理解したくないのだ。認めたくない。自分で自分自分自身を否定したくないと欲が出てくる。
「じゃぁーねー。アリマ王子ー。」
一瞬にして消えた。その言葉だけ残し、移動魔法を使ったのだ。
バサッ
「はぁーはぁー。」
一瞬にして力が抜けた。アリマは、膝を地面につける。今は体に力が入らない。ただただ、恐怖だけが、込み上げてくる。震えが止まらない。これは安心してなのか。いや、これからの怖さだけだ。
”なんで、あいつは、何を知っている。俺の、何を、何を…。”
輝く月はいったいどこにいったのだろうか。どこの雲に隠れているかさえ分からない。
バタッ
宿に戻った。扉をゆっくり閉める。彼を起こさないように。先程と同じベッドにしっかりと膨らみがあった。メイラは深い眠りにしっかりついているようだ。
アリマは、それを確認して隣のベッドに横になる。なにも今はどーでもいい。ただ、この感情を、恐怖を、だれか、止めてくれないか。
「メイラ。」
その言葉は、メイラには、届かない。
「さぁーて。これからどうするの?メイラ。」
翌日、宿から出て、広場で四人、今後どうするかを話していた。青い空が広がっていた。ルミーナはメイラに問いかける。
「さぁー。どうすりゃいーんだか。ルミーナは、どうなんだ?
見たいとこ。あるか?」
「そうか。うーん。特に。世界を見たいって言ったけど、自分で何をすればい
いか、正直分かんないんだよね。」
二人が話している、最中。リリアは気づく。アリマの異変を。いつもとは明らかに違う。表現が暗い。
「アリマ…?」
「!」
アリマはいきなり名前を呼ばれ体をビクッとさせる。その二人を見て、メイラとルミーナをアリマを見つめる。
「今日どうしたの?」
リリアがアリマの顔を見つめ呟く。アリマは、大丈夫大丈夫と、手を横に振る。
「アリマ、どーした?何か言いたいことでも?」
メイラがアリマに近づき訪ねる?アリマは、メイラと顔を合わせないように下をずっと見ている。その行動にメイラは、アリマの肩をガシッと、力強く握る。
「下向いてたらわかんねぇー‼何がが気に入らないんだ!?なんか、あったん
だろ?言ってみろよ‼」
メイラは、少々怒り交じ、アリマに叫んだ。ちょっとメイラ。と、ルミーナは、メイラに告げるが、メイラは、聞く耳すらもたない。
「…いくせに。」
アリマがボソッと呟く。
「は?なんだよ!?」
そのメイラの言葉の直後、
ガシッ
左手で、肩にのっているメイラの手を思いっきりはらった。
「だから、何も知らないくせに…!!!」
そう叫んでアリマは走ってしまった。どこかわからない。無我夢中で走っていった。
”なんだよ。なんだよ。俺は…。何をやっているんだ。”
そんな思いを秘め、アリマはひたすら走った。
「…。アリ…マ。」
赤い髪の彼の後ろ姿をただ黙って見ることしかできなかった。ルミーナもリリアも何が起きたのか分からなかった。メイラも、何が起きたのかと、ただ立っていることしか。できなかった。
空は青い空を隠し、曇り空、灰色の空となっていた。