第3話「端の貴族」
ちょっと血の表現あるので、お嫌いな方は控えた方がいいかも知れません。
第3話
「さて、爆発の原因を探さないとな。また何かあると町人達が混乱する。」
メイラが言うとそうだね。と、ルミーナは答えた。
「ルミーナ、人の気配があったのは本当か?」
メイラはルミーナに問いかける。
「うん。間違いないよ。そんな強い気配じゃないから数人だと思う。もしかしたら1人っていう可能性もあるくらい。魔物の数は分からないけど、多分いるよ。」
「そうか。よし。くまなく探索だな。」
メイラは囁くと2人は頷いた。その時だった。
「!」
アリマが急に目を丸くした。そしてアリマは後ろを振り向いて腰にある短剣に手を持っていった。
「どうしたアリマ」
メイラが問う。
「誰か来る。」
アリマがそう言うとメイラもルミーナも警戒心を持つ。カタッ、カタッと、足音の音がする。足音の音てきに人数は1人だろう。3人、戦闘姿勢になり、構える。
影からその姿が現れた。両手に剣を持っていた。青い瞳。青い髪は上の方に一本に縛られている。その長い髪の毛は黄色い布でとめられていた。足や手の肌の露出度が少し高い服だ。体のラインは美しく大人びて見えるが自分達と同じくらいの年だろう。身長は160後半といったところだろう。その女はメイラ達を見るとなぜか肩の力をぬいた。
「はぁー。良かった。人間だ。」
「「「は?」」」
メイラ達は首をかしげる。その女はごめんごめんと言って両手の剣をしまった。
「ごめんなさい。さっきまで魔物と戦っていたから。また魔物かと思って、でも良かったわ。人だった。」
その女はメイラ達に問いかけた。
「それにしても、あなたたち、何しにここに?」
「それを言ったらあんたもどうしてここに。」
メイラは構えを止めて言うと、女は冷静に答えた。
「私はここが爆発したから調査。命令よ。」
「命令…。あなた、貴族の方?」
冗談ぽくルミーナは言ってみる。しかし意外な言葉が返ってきた。
「まぁね。」
「「「!?」」」
メイラ達はいっせいに驚いて女を見つめる。
「私はリリア・ルーラ。貴族といっても端。6代目の王の兄弟のひ孫。端の貴族。特に特別扱いとかないけどね。」
女、リリアはポケットから小さいバッチを取り出す。銅色のダイヤがついていた。
「嘘はついてないな。」
メイラは間近でそのバッチを見つめる。
アルリア王国に貴族はその階によってバッチの色が違う。簡単に言うと、端の貴族、上の貴族を簡単に分からせるため。一番上の貴族は金のバッチ。真ん中は銀のバッチ。一番下の端の端貴族は銅のバッチ、といった、分け方だった。リリアは自分で端だと言ったとうり、一番下の銅のバッチ、だと言うことだ。
「本物だな。これ。」
メイラがそう言うとアリマはリリアに問いかける。
「それで、あなたは何か情報を入手できたのですか?」
「それが全く。ところで、あなた達は?」
バッチをしまいながらリリアはメイラ達に問いかける。
「俺はメイラ・アリマトネだ。俺も、一応端の貴族だ。」
メイラが、少しぎこちなく言っているのに、誰も気づかなかった。リリアはメイラに少し興味を持った。そして次にルミーナが自己紹介をする。
「私はルミーナ・オルマトス。」
「お、俺は、アリマ。」
リリアはよろしく!と答えてニコッと笑う。
「まぁ、今は協力した方がいいな。」
メイラはそう言うが、
「あぁ、ご、ごめんなさい。」
意外すぎる言葉が出て、3人とも驚いた。てっきりいい返事が返ってくると思ったからだ。メイラは戸惑ってしまう。
「ど、どうしたんだよ。一緒に爆発のことさぐらないのか…?」
メイラはポツリ囁くがリリアは残念そうに呟いた。
「ごめんなさい。私もあなた達とさぐりたい。でも、普通の人たちに助けられることは法則で禁止なの…。王族に見つかったら大変だし。」
リリアはそう言い捨てると後ろを振り向く。
「じゃ、また会えたらいいわね!」
そう言うとリリアは走りだしてしまった。メイラがおい!と、止めようとしたが、そのままリリアは走り続けてしまった。
「行っちゃったね…。」
ルミーナはリリアが走った方を見つめて呟く。
「てっきり、リリアと一緒に捜索できると思ったんだけど…。」
アリマもぎこちなかった。きっと、アリマもリリアと一緒に捜索できると思ったんだろう。実を言うと、メイラも同じ事を思っていた。リリアと一緒に、4人で爆発について探索できることを期待していた。しかし、意外だ。そう、メイラは思う。でも…。
(”でも、やっぱり、今も、変わってないか…”)
メイラはポツリ心の中で呟く。
「と、とにかく、私達は私達で、頑張ろう!さぁ!行こ!」
ルミーナは明るく振りまいて笑顔で囁いた。しかし、
「行けないぞ。すぐには。」
メイラは辺りを見渡す。ルミーナは、え?と、首をかしげる。
「囲まれた…!」
アリマは小さく叫ぶと腰から短剣を2本出した。ルミーナの視線がメイラに変わった時には、メイラの左手に剣が握られていた。ルミーナを目つきを変え、集中する。深く、深く、深呼吸をし、短剣を取り出した。
「魔物だ。行くぞ!」
「「うん!」」
メイラのその言葉で、ルミーナとアリマは動く。アリマは目の前にいる、犬型の魔物に短剣を振るう。赤黒い魔物の血がはじけ飛ぶ。人間とは違う魔物の血の臭い。ルミーナはこの臭いが大っ嫌いだ。しかし今は戦いに集中しなければならない。目の前にいる、鳥型の魔物に向けて。集中しなければ…。足をひっぱらないように。そして、”最大の力を出さないように…”
「はぁー!」
ルミーナは短剣を交差してその刃を魔物に向けた。グサッという音が響く。血がはじけ飛び、その鳥型の魔物はバサリッと、地に倒れ込んだ。
「死ね!」
メイラは叫びながら剣を振るう。いっぱつで魔物は死に、地に倒れ込む。
「聖翔風!」
一瞬でその刃は魔物の腹に突き刺さる。メイラの頬にペチャっと、赤黒い液体がつくが、メイラは一切目つきを変えない。その地に落ちる魔物の血を、その目で、見つめているだけ…。静かに。そう。見つめているだけ。見ているだけ。俺は、いつだって。見ているだけで、何も、救えやしない…。
〜
「***」
誰か俺を呼んでる…?でも、なんて言っているか分からない…。これは、昔の記憶。目の前に、黒髪の男の子が2人。写っている。2人は笑っている。しかし、どんどんその2人の頬に赤い液体がつく。どんどん傷ついて、静かに倒れ込む。分かっている。助けなきゃ。俺は動きたい。救いたいんだ。でも、俺も今、後ろから刺されてて、動けないん…だ…。ごめんね。
あぁ。どうして、この場でこの記憶が出てくるんだ…。なんでこの記憶は、俺の中から、離れない…。もう、忘れてしまいたい、記憶なのに…。
〜
「メイラ!」
「!」
聞きなれてあの優しい彼女の声で、我に帰る。メイラはハッとなって、右にいたルミーナを見つめる。
「あ、ご、ごめん。少し考え事してた。…すまん。」
そうメイラは言うと、剣を背中の場所へとしまう。そして辺りを見わたす。魔物の死体がそこには広がる。そして、魔物の血の独特な臭い。真っ赤に染まる目の前の背景。そう。”あの頃の記憶”が、よみがえる。
「行こう。ぐずぐずしている時間はない。」
メイラはそう言い捨てると、その長い髪を揺らして、後ろへ振り向き歩きはじめる。ルミーナはメイラについていく。ただ、アリマはそこに足を止めたまま。
「…。メイラ…?」
少し違和感があったが、アリマはそのままメイラについて行った。何か分からない。君がかかえていること。でも、これだけは分かる。悲しいのだと。
「ってか、何も手がかりがない。」
メイラは歩くのを止めずに、そう囁いた。確かに、あの爆発以外、何も変わったことは起きてない。せいぜい魔物と戦ったことくらいだろう。
「もう、終わったのかな…。」
ルミーナは少し心配そうに言った。
「リリアのこと、気になる…?」
「…。うん。」
すなおにアリマの問いかけに言葉が出た。せっかく女の子同士。一緒に戦えると思った。でも、あの子は自分と身分が違うのだ。そう自分に言い聞かせる。でも、やっぱり、一緒に…。
そうルミーナが思っている時だ。
ドンッ!!!
「「「!?」」」
いきなり大きな音がして、地面がガクッと揺れた。この工場も、もう少しで天井が壊れただろう。メイラは先ほどの音がした方へ視線を向ける。
「向こうで音がした!行くぞ!」
メイラはそう2人に叫ぶと走りだした。ルミーナとアリマも2人、コクリと頷き、メイラについて行った。かなり遠い。アリマは一番後ろで走る。女の子より体力無いなんて、自分が恥ずかしい。そう思う。しかし、アリマは驚いた。ついて行けていると。メイラの体力であれば、もっと早く走っても大丈夫なはずだ。
「め、メイラ!」
「ん?どうした。アリマ!」
前で走っているメイラにアリマは叫んだ。
「いいの!?もっと早く行かなくて!」
「…。」
「…?メイラ?」
急に言葉が途切れて不思議に思う。少し経つとメイラの声が聞こえた。
「おまえ、このくらいだったら、ついていけるだろ!」
「!」
なんだ。俺を、気遣っていたのか…。どうして、俺を気遣う。どうして心配している。俺の父上だって、”こんなことはしなかったのに…。”
「メイラ!」
「なんだ?」
「ありがと!」
「気にするな。」
メイラは一瞬笑みをこぼした。アリマはもう、かかえこまないだろうか。一人で救おうとしないだろうか…?俺達を、信用してくれているのだろうか…?アリマの心は、何か苦しい。
「あ、あそこ!」
ルミーナが何か見つけて指をさした。どんどんそれに近づいて行く。それが何かと認識できた時、3人は驚く。そこには人がいた。頬には血がベタリとついている。その黒い髪の毛は上にひとまとまりで縛られている。上の少し右に縛られていて、その縛るものは赤く、そこについている飾りも、赤いルビーの宝石だ。白と黒、そして赤を貴重とした服。ショートパンツより少しながめの上の服の丈。黒いタイツ。女の子に見える。身長は150前半だろう。その女の子はこちらを見てニヤッと笑う。
ゴクリッ
と、メイラは汗をかき、息をのむ。
「おや、人だ。俺を倒しにきたか。」
「「「!!!」」」
3人は驚く。どう見ても女の子だったのに、声を聞くと男だ。メイラの頭の中で整理される。こいつは男子。そして、きっとこいつが、爆発の犯人。
「おまえなんだ。この工場爆破してなんの目的がある。」
「おや、もう俺が犯人ばれた?ま、当然か。」
その男の子はニヤッと笑う。癖なのか。もうその行動は2回目だ。
「でもね。こっちには人質ってやつがいるんだよね。」
男の子は一歩一歩、歩き始めた。そして、壁。もう壊れかけている壁のうしろにまわり、そして、連れてきた。
「「「!」」」
3人は目を丸くした。
「り、リリア…!?」
始めに声に出したのはルミーナだった。リリアは後ろに手をまわして、手首を何かで縛られているようだった。リリアは傷だらけだった。ところどころ傷が入り、血が流れている。もう戦った後に見えた。歯をくいしばってこちらを見つめた。
「メイラ!ルミーナ!アリマ!こいつ、強い!逃げて!」
なんとかなんとかで、リリアは声をはった。ルミーナは目を丸くしていた。戸惑っていた。迷っていた。ここで戦っても、勝てない。きっと。メイラはすごくつよい。アリマも強い。でも、勝てない。そんな気がしてたまらなかった。
「め、メイラ…。ど、どうしよう。」
おどおどと、恐る恐る、ルミーナはメイラに問いかける。
「大丈夫。ルミーナ。焦るな。深呼吸しろ。大丈夫。絶対リリアを取り戻す。」
そう言ったメイラもかなり緊張していた。汗をかいていた。きっと強いのだろう。この子は。こんな小さいのに、なぜか、こんなにも幼く見えない。まるで、何かの呪いでその小さいままにされている者なのか…。こいつの目は10年そこら生きた人間の目じゃない。もう何十年もの知恵をもった目だ。
「リリアを、こちらに、返してくれ。」
メイラは慎重に男の子に問いかける。
「ヤダね。君らには死んで、」「!!」
俺は目を疑った。こんなところにあったなんて…!なんで、こいつが持っている。どうして…。こいつは何者だ…!?
男の子は自分から見たメイラの”右を見て”驚いた。男の子はいつもの癖でニヤッと笑みをこぼす。
「いいだろ。今回は。もっとおもしろい事を見つけられたからね。」
男の子はリリアを突き飛ばし、一瞬で消えた。魔法だろうか?でも、それとはまた違うような…。
「リリア!」
ルミーナは一番にリリアの元へ駆けつける。腰をおろし、リリアの顔を覗き込む体制になる。そしてリリアの手を縛っているひもを解く。
「大丈夫?」
「う、うん。ありがとう。」
リリアはそう言うとゆっくりと立ち上がった。そして目の前の2人の青年を見つめる。
「メイラ、アリマ、ありがとう。助かった。」
そして横にいるルミーナへ視線を変える。
「ルミーナも、ありがとう。心配してくれて…。」
リリアはニコッと笑う。そして少し間があき、メイラが口を開く。
「おまえ、大丈夫だったか?色々…。」
「大丈夫。ただ手、縛られてただけ。」
リリアはそう言うと、右手のこぶしに力を入れた。
「私は1人じゃ無力だった…!私、やっぱり駄目なんだ!貴族なんて、合わないんだ。」
「そ、そんなことないよ!リリア、一旦落ち着いて、」
ルミーナは慌ててその言葉を否定する。
「落ち着いてられない!」
リリアはその言葉を遮り、叫んだ。ルミーナを睨み叫ぶ。
「私はあんたとは違う!貴族とか言われるくせに、なんの権力もない!中途半端な人間なの!そんな人間が普通にしていて、認めてもらえる訳ない!じゃあ、どうしたらいいか。それは、結果を出すこと。それだけ。そのために私は、頑張った。私は自分の思っていること、叶えたいことのため頑張った!なのに…。」
ポタリと、もう汚れているこの床に、涙が落ちる。
「なのに、助けられてしまった。私は1人じゃ無理なんだ!私、私、貴族なんて、合わないんだ!」
「バカ!」
「!?」
意外な言葉に一同驚く。ルミーナはリリアを強い目で見つめる。一歩一歩とリリアに近づいていく。リリアの目の前に立ちその温かい手を、自分の手で包む。
「別に貴族だから、上に上がらないとか、誰も決めてない。」
「!」
リリアはその言葉に目を丸くする。なんで、そんな目を動かさないで、ずっと、その強い瞳で見つめて、私に言えるの?こんなこと、どうして、戸惑わないで言えるの?あなたは、何を経験してきたの…?
「無理に頑張らなくてもいい。私はリリアなりに頑張ればいいと思う。リリアはリリアのスピードで、ゆっくり、何回も失敗してもいいじゃん!何回も失敗して、最後にはきっと、そこに、求めようとしているところにきっとたどり着くから。大丈夫。」
ルミーナはその握っている手にギュッと、力を入れた。
「もう、1人じゃないじゃん。リリアは。」
「…。ルミーナ。」
リリアはポツリ呟くと、ニコッと笑い、ルミーナを包み込んだ。ルミーナの背中に手をまわし、ギュッと力を入れた。
「ありがとう。ルミーナ。」
「うん!」
ルミーナは自分に抱きついている子が、ほんの一瞬、自分より年下に見えた。本当はリリアの方が年上だと思う。なのに、どうしてだろう。こんなにも、幼く見えるのは。
ルミーナはニコッと笑うと、リリアの背中に手をまわし、ゆっくり力を入れ抱きしめた。
「俺達はいらなかったみたいだな。」
「あぁ。」
メイラの問いかけに、笑みでアリマは答えた。
「あいつはウザいけど、人を落ち着かせることはすごい能力だと思う。あいつのいいところだ。そうゆうところが、いいんだよな。」
ニコッと笑みで少し頬を赤く染め、メイラは囁いた。
“あれ…?メイラ顔、少し赤い…。もしかして、メイラ、ルミーナのこと…。”
アリマはそう心で思ったが、口には出さなかった。ただ、じっと、メイラを見つめていただけ。
また一つ、運命は加わる。
「なんだよ。まだ用があるのか?」
少年の声が響く。
「べっつにー!」
そして、もう一人の少年の声が聞こえる。その少年は、黒い髪揺らし、赤い瞳でそう言ったのだ。そして二ヤリ、笑う。
「おもしろいねぇー。世界は。」
黒髪の少年はそう言い捨てる。もう一人の少年は二ヤリ、笑みがこぼれた。
本当に遅くてすいません。卒業式やら大変なんです…。
読んでくださりありがとうございます。感謝いっぱいです。
誤字脱字ありましたらすいません。