第2話「アルリア」
第2話
「よっと。」
ルミーナは片足を一歩出し、ピョンッと、前へ進んだ。
「とうとう来たね。アルリア。」
ルミーナは2人に向けてニコッと笑いそう言った。
ここは、アルリア王国。この世界「セールディア」の国の1つだ。今、メイラ達はアルリアと、ユルエリアの境、「バジルビア」で旅券を買い、そして、アルリアへ着いた。
「アルリアは技術が進歩してる。すごいよ。」
アリマは囁いた。辺りを見渡し、このアルリアを、目を輝かせて見ている。今、メイラ達の目の前に広がっているのは町だ。「バジルビア」を出ると、そこには、「バジビア」という町が広がっていた。名前の由来はやはり、「バジルビア」からきているらしい。その町はユルエリアで行った町とは、少しばかり感じが違う。とても、機械というか、便利というか。確かに、アリマの言う通り技術は進歩している。アリマは自分の国とは違う国を見て、興奮しているのだろう。とても騒いでいる。そんなところを見ると、メイラはなぜか嬉しくなってしまう。
「だって、メイラ!あれ!」
アリマは指をさして同じ方向を向く。メイラもアリマが指をさした方へと顔を向ける。上だ。空を見上げると、そこには、空を飛んでいる物、機械があった。アルリア人はあの乗り物を必ずと言っていいほど知っているが、他国の王子様は知らないようで、目を輝かせていた。
「ねぇ!あれ何!?」
アリマはメイラに問いかける。メイラはハァーと、大きくため息をつき、話しを始める。
「あれは、「セルイール」っていう乗り物。馬車と同じだよ。目的地まで運んで
くれる。しかも馬車より早い。」
「すごいね!アルリアは!空を飛ぶ物があるなんて!」
アリマは目を輝かせながらメイラにその視線を向ける。
「あ、はぁ…?」
メイラは少し困ったように呟く。
アリマはキラキラとまだ目を輝かせてる。飽きないくらいに。
「この町で、いったん休憩ってのは?」
ルミーナはメイラに問いかける。メイラは
「多分それはやめた方がいいと思う。」
と、言う。
「どうして?」
「ここはユルエリアに一番近く、一番近づけるところだ。他に違うところがいい
だろう。」
メイラが囁く。そのまま話を続ける。
「ここから少し離れた町、「ルベル」という町がある。そこで、いったんこれか
らについて話そう。」
メイラはそう言うと、ルミーナとアリマはコクリ頷く。
「さて、」
メイラはベッドの上に腰を下ろす。ルミーナは木造のイスに座り、アリマは壁に寄り掛かって、立っている。ここは「ルベル」の宿だ。ルミーナに1部屋。メイラとアリマ2人で1部屋とった。そして、ルミーナとアリマの部屋に3人集まっている。
「俺達はユルエリアのやつらに、追われている。これから、どうするかというこ
とだが。」
メイラの言葉から話しは始まる。
「これから、ずっと、アルリアに居続けるってこと?」
ルミーナがメイラに問いかける。
「いや、それもダメだろう。これから、うーん。”俺は俺なりに旅の理由”があ
るし。」
「”理由”?」
アリマが不思議そうに呟くがメイラは何も答えなかった。というか、自分がなにを言ったのか、メイラは目を丸くしていた。まるで、つい口がすべってしまった。と、焦っているようだ。しかし、メイラはすぐ冷静になる。
「ま、深く考えてちゃダメか。」
メイラはバサッと立ちあがり、部屋から出ようとする。
「どこ行くの?」
ルミーナは囁く。
「散歩。」
メイラは答えると、部屋から出てしまう。
「ま、待って!」
アリマは叫んでメイラを追いかけた。ルミーナは、はぁーと、ため息をつく。
「まぁ、ここは男同士がいいのかな。」
ルミーナはニコッと笑いその部屋を出て、自分の部屋に向かった。
「メイラ!」
アリマはメイラを追いかけていた。
「ったく、ついてくるんじゃねぇーよ。」
なぜかメイラは気分が悪かった。何かしてしまったのかとアリマは心配になる。そのままアリマはメイラを追いかける。距離はそんな遠くない。町の外。しかし、どんどんメイラの姿が歪んでいく。
「はぁー。はぁ、あ、はぁー…。」
息使いが荒くなってきた。体力がもう無くなってきたのだろう。アリマは耐えきれなくなり、メイラを目の前にして足を止めてしまう。その足音が無くなったのに気付いたのか、メイラは後ろを振り向く。メイラはすぐにアリマのところへ駆けつける。
「大丈夫か?」
「う、うん。平気。」
アリマはそう言うが、アリマの顔は青くなっていて、汗をとてもかいている。そして、息使いがとても荒い。
「平気じゃないだろ!お前!」
メイラはアリマの背中をゆすってやる。
「静かに、ゆっくり呼吸をしろ。」
アリマの呼吸が整うと、町の外れの風通りの良い広場のようなところへ連れていく。そして、そこにあったベンチに座る。
「アリマ大丈夫か?」
「う、うん。ありがとう。」
ニコッとアリマはメイラに笑顔を見せる。メイラはその笑顔になぜか不思議と落ち着いた。とても、心から休めるような。
「そういや、」
メイラが口を動かす。
「おまえ、体弱いのか?」
「え?」
アリマは首をかしげる。
「だって、あの戦いの時、すぐ倒れちまったし、大丈夫だったかなって。」
アリマは心配してくれているメイラを見て嬉しくなった。こんなにも、自分を心配してくれる人がいるのだと。
「普通の人より少し体力少ないけど、しっかり戦える。だから心配しなくても俺
は大丈夫。心配してくれてありがとう。メイラ。」
「べ、別に、そ、そんなんじゃ!」
メイラの頬が真っ赤に染まる。アハハッとアリマは笑う。
「ったく、」
メイラはそう呟くと、心から落ち着いてニコッと笑みを見せる。
「さて、アリマ行くか。」
「う、うん。」
メイラが立つ。その時、
「め、メイラ!」
アリマが自分の名を呼ぶのにメイラはアリマを見つめる。
「ん?」
メイラは何だ?と、問いかけるように首をかしげる。
「こ、これから、メイラは、お、俺のこと、遠ざけてしまう?嫌いになる?」
意外な言葉にメイラは驚くが冷静に答える。
「俺は、仲間は裏切らない。」
「!」
強い瞳が心に突き刺さる。
「うん!」
今はすごく嬉しい。きっと、今自分はとても笑顔になっているだろう。そうアリマは思った。
「宿に戻ろうぜ。」
メイラは言うと、ゆっくり歩きだした。自分を気遣ってくれているのか。そう思う
と申し訳ないと思うが、嬉しかった。アリマは歩きだす。しかし、
ドンッ
いきなり誰かとぶつかってしまう。
「す、すいません!」「!」
アリマは驚いた。先ほどぶつかった人を見て。子供だった。13、14くらいの年の男の子。薄い一枚の服。ぼろぼろとして、長袖。そして、首に
「鎖…!?」
アリマは言葉が漏れてしまう。その男の子は目を見開きすぐさま逃げてしまう。
「…。実験体…!?」
アリマは目を丸くする。ここにも、現在も実験体が存在するのだと。
「どうした。アリマ。」
後ろからついて来ないのに気付きメイラはアリマに問いかける。
「…。実験体が、いるんだね。」
「!」
アリマの言葉にメイラは言葉を失ってしまう。心から、憎しみが広がっていった。
マリオネット。実験体のことだ。この世界ではさまざまな人体実験が行われていた。平気で子供を使い実験をする。その実験台にされているものを、マリオネットと呼んだ。また、奴隷など言う者もいた。マリオネットは首に鎖をつけている。実験から解放されればその鎖はとれるが、鎖をつけられているということは。今現在、実験台にあの子はさせられているということだった。
「実験体、か…。」
ポツリ、アリマはそう呟いた。そして、あの頃の記憶が戻ってきたかのように、胸騒ぎがした。
「おまえ、先風呂入れば?」
メイラはアリマに問いかける。
「そう?じゃ、先入るね。」
アリマは言うと、その場で上にはおっていた服を脱いだ。それだけ脱いで、後は風呂場で着替えるのだろう。アリマは下に薄い半そでの黒い服を着ていた。その半そでから白い腕が見える。身長はメイラより高いが、体重はさほど変わりないと思う。いや、メイラの方が重いかもしれない。細い腕で本当にしっかり食べているのか、心配になるくらいだ。そのままアリマは風呂場へと行った。
「はぁー。」
メイラは深くため息すると、ベッドに腰を下ろした。窓から、綺麗なオレンジ色の夕焼けが見える。きっと明日は晴れるだろう。そう思う。
「俺の旅は、ひとまずおわづけだな。いや、もう、終わったかな…?」
アハハッと、メイラは笑う。どこか淋しくて、悔しくて、何かもの足りなくて、心の穴が埋められないような、この気持ち。
「そりゃ、あれだとな。気持ちはうせるわ。」
メイラはポツリ呟いた。
「メイラぁ〜。風呂出たよ。」
そう言っても返事は無かった。何でだろうと思うと、ベッドで寝ているメイラの姿があった。布団もかけずに、足をつけて、座っていたのから寝たかのように。
「はぁー。」
アリマはため息をつく。まだ6時だよと思いながらも。しかし今は春だ。外は少し暗くなっているメイラを持ち上げてしっかりベッドへ移動させる。思ったより軽いな、と、思いながら布団をかける。その綺麗な顔だち。長いまつげ。
「綺麗だね。メイラは。」
アリマはそう呟くとゆっくり隣のベッドへ移動し、眠りについた。
朝、窓から暖かい日差しが差し込む。太陽が眩しくて、光輝いている。
「う、うん…。」
メイラはふと、目を覚ます。メイラは体を起こす。左を見ると赤い髪の青年が眠りについている。静かに、吐息をしているのか分からないくらいだ。メイラはアリマの姿を見てニコッと笑う。とても落ち着いたように眠っている。
「メイラ。」
急にルミーナが口を開ける。宿のカウンター。3人は集まった。そこでルミーナは言う。
「ここらへんに私の家があるの。そこでいったん落ち着いた方がいいと思うん
だ。特に旅の理由もないしさ…。でも、ユルエリアからは逃げないといけない
し。私の家、森の中だから。それに何か役にたつ物あるかもだしね。…どう
かな?」
「おまえがそんなまともなこと言うんだな(笑)」
「メイラ!」
ルミーナは怒りに満ちて叫ぶ。メイラは悪い悪いと、呟く。
「よし。そうしよう。じゃ、行こ」「!」
ガタッ
何か一瞬ゆれた。大きく地面がゆれた。
「何だ!」
メイラは叫ぶ。何があったんだとメイラ達は外へ出る。町人達は遠くのどこかを見ていた。何があったのかメイラ達にはさっぱりだった。
「何があった!」
メイラは宿の近くにいた20代くらいの茶髪の女性に訪ねた。
「あ、あの、建物が爆発したようです。」
「爆発!?」
アリマは驚いて叫んでしまう。そのまま女性は話を続ける。
「はい。あの、つぶれた工場が爆発したようで、」
「つぶれた工場?」
アリマは不思議そうに呟く。
「『ハーライド工場』か。」
ルミーナはポツリ呟く。
「確かそこの工場、電気とか作ってた工場だよね。今はつぶれてもう外見は汚く
なってるけど。窓の鏡割れてたり、ドアは壊れている。中は知らないけど、き
っとなんかあったんだろうね。あそこは関係者以外立ち入り禁止だもん。」
「なるほどな。」
メイラはその工場の方を見つめる。
「行くぞ。ルミーナ。アリマ。様子を見に行くぞ!」
メイラはそう言うとすぐ走って行ってしまう。
「ちょっ、メイラ!」
ルミーナは呆れながらもメイラに着いて行く。アリマも少し早いなと思うが、アリマは深呼吸を一回深くし、おもいっきり走った。
「確かに爆発してるな。」
メイラはそのつぶれた工場を見つめて囁いた。確かに煙が出ている。ぼろぼろの建物。メイラはその建物の中に入ろうとする。その時、
「ちょ!メイラ!待って!」
(あ、2人忘れてた…!)
ルミーナの声で我に帰った。メイラは後ろを振り向きルミーナのところへ駆けつける。
「すまん。ルミーナ。」
「もう。メイラ。」
ルミーナはポツリ囁く。
「?。アリマ、は…」「!」
昨日のことを思い出しメイラはすぐ元来た道に走った。
「メイラ!」
「ルミーナはそこで待ってろ!」
メイラはそう叫ぶとルミーナは、呆れたようにため息をついた。そして、目つきが変わった。ルミーナはつぶれた工場を見つめて、意識を集中した。そしてゆっくり目を閉じた。
「何か、感じるね。人の気配。」
ルミーナはそう呟くとゆっくり目を開けた。
「ったく、俺のバカ…!」
メイラは思い思い走る。アリマが倒れていないかと心配だった。走っていると、赤い髪の青年が見えてきた。その青年はゆっくりだが走っている。青い顔。汗だくになりつつも目的地まで走っていた。
「アリマ!」
メイラはアリマを見つめて叫ぶ。アリマはメイラの姿を安心してその場に倒れ込む。メイラはすぐにアリマに駆けつける。
「ごめんな。無我夢中になってた。」
メイラはアリマに囁いた。
「だ、大丈夫だよ。そんな心配しなくても。」
アリマは自分で呼吸を整える。少し時間がかかったがアリマが落ち着くとメイラは右手を出した。
「立てるか?」
メイラはアリマにさしのべた。アリマはニコッと笑う。
「うん。ありがとう。そして気遣いありがとね。右手。」
(あ、ばれていたか。)
アリマの言葉にメイラは理解できた。わざわざアリマの利き手の方に変えたのを、ありがとうと言っているのだろう。そうメイラは思う。
「さて、ルミーナが待ってる。行くぞ!」
「うん!」
アリマが返事をするとメイラは走る。さっきよりもゆっくりと。
「ルミーナ!」
目の前にいる仲間にメイラは手を振って声をかける。ルミーナもそれに答えるかのようにメイラ達に手を振り返す。メイラはルミーナの元に駆けつけた。
「メイラ、遅い。」
「悪りぃー。」
メイラは囁くと工場を見わたす。
「すごいぼろぼろだな。」
「少しだけど、人の気配を感じた。人間がいる。」
ルミーナが呟くとメイラは工場を睨んだ。
「もしくは魔物か…。」
メイラが「ハーライド工場」に入っていくと、それに続き、ルミーナとアリマも中へ入っていった。
私のお友達さんが前回作を見てくれたようで。ありがとう。
次は第3話です。読んでくださった方、ありがとうございました。
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