第1話「出会い」
第1話
まだ、日が上がって間もない。しかし、暗い森の中、2人の人間が思い思いに走る。それしか、二人にはなにもない。走るしかないのだ。
「ちょっと、待って…!」
ルミーナは前で走っていたメイラに叫ぶ。体がおもい。気持ちも。息が切れる。苦しい。でも、本当に苦しいのは息なんかじゃない。本当は…。
メイラはすぐに後ろを振り向きルミーナの元へとかけつける。
「大丈夫か…?」
メイラは心配にルミーナに手を差し伸べた。
「あ、ありがと…」
ポタリ
ルミーナの目から温かいものが流れる。ルミーナはその流れるものを、腕で目をごしごしとふく。本当は、本当は、心が苦しい。
「ごめん…。私、もうどこに行ったら、」
その悲しげの少女に、生きる目的が分からなくなった少女に。その少女の頭にメイラはポンと手を置く。
「そうか。でもお前はここにいる。だからお前を必要としてくれるやつが、いる
はずだから…。こんなことしか俺は言えない。でも、」
「メイラ!」
バン!
メイラの言葉を遮りルミーナはメイラの胸の中へとびこむ。
「ちょ!?ル、ルミーナ!?」
メイラの頬が真っ赤に染まる。
「私を、必要として…!」
「!?」
意外な言葉が出てきてメイラは目を丸くする。ルミーナはメイラの腕を力いっぱいに握る。
「私、今回のことで思った。アルリアとユルエリアの差別。すごかった。同じ人
間で、今を生きている。同じなのに。あんなに差別される。私、この差別を変
えたい。だから旅する。しっかり、向き合ってなかった。知らなかった。だか
ら、まずこの世界を見たいの!だから、」
ルミーナはその握りしめる腕にもっと力が入る。自分の今の気持ちが外に、力に溢れでる。メイラの胸の中で思いを叫ぶ。
「私を、連れてって。メイラ。」
”なんて悲しい。なんでこんな時、俺は、黙って見ている。なんとか、彼女を救いたい。手を差し伸べたい。誰かが悲しいんでる姿は、姿なんて…。”
「ルミーナ。分かった。分かったから。だから、もう泣くな…。」
「…うん。」
その優しい声を聞きルミーナはホッとする。自分の苦しい心が、フッと、落ち着いた。が、落ち着いたからこそ、気づく。今の状態に我に帰る。今自分はメイラに抱きついたようなものだ。そう考えると頭の中まっ白になり、ルミーナの頬が真っ赤になる。
「へ、変態!」
ルミーナはそう叫ぶとメイラを両手で押した。メイラはドンと尻をつく。
「い、いてぇ…!」
メイラは尻をさすりながら呟く。ルミーナは頬を真っ赤に染めている。
”な、何やってたの私!?泣きながら抱きつくとか…!。”
「勝手に近づかないでよ!」
「いや、お前からだろ!」
2人の叫び声はその森の奥まで響いた。
2人は少し気まづいながらも、歩き、ようやく森を出た。そしてすぐに町が見えた。ルミーナから聞くと、そこは「アラン」という町だそうだ。ごく普通の町だ。村といっても、通じるくらいだろう。もう、疲れた。と、ルミーナが言うので、2人はそこで宿をとることにした。しかし…
「ちょっと、宿の部屋1つしかとれなかったって、どうゆうことよ!」
メイラの言葉に驚いてルミーナは声をあげる。宿屋に人はいた。他の人はその声に驚いてこちらを見つめる。メイラは、シーと、口元に人差し指をおき、周りの人に、すいませんとお辞儀する。
「はぁー。」
メイラは、ため息をつき、ルミーナを見つめる。
「今日は混んでいるから1つしか空いてないんだ!ベッドは2つあるっていってたし。お前、野宿ヤダだろ…?」
「もう、そうゆう問題じゃないっつーの…!」
ルミーナは頬をふくらませて、小さく呟いた。
「面倒だな…。」
メイラはポツリ呟く。
「ちょっとうるさい!」
ベッドに座っているメイラに向けてルミーナは叫ぶ。2人の仲は最悪だ。メイラは他人に興味なさそうに。ルミーナはなんでも知りたがる。これから一緒に旅をするのだというのに、口喧嘩ばっかりだ。二人とも若い思春期な子供だ。
「あのさ、ルミーナうるさい!」
「はぁ?あんたがグチグチ言うからでしょ!」
「はぁ?おまえから言ったくせに!連れてってと。そんなにグチグチ…!」「!」
メイラは今までのことを思い出し、喉が潰れたかのように声が出なくなった。
「すまん…」
静かな空気になる。2人ともその口を閉じたまま…。
「あのさ。」
ルミーナの唇が動く。
「メイラってどうして私を助けてくれたの?」
「え?」
急な問いに少し戸惑うが、メイラは静かに話しはじめた。
「俺は、そんなはじめてで見ず知らずなやつでも、助ける。嫌いだから助けない
とかじゃない。目の前で苦しんでいたら、助けるだろ?」
メイラの左目の瞳は勇気があり、意志のある目だった。きっと髪の毛で隠されている右目も、その瞳はあるだろう。
「そうか。」
その言葉を聞いてルミーナはホッとする。
「まぁ。俺はお前のこと、嫌いだけどな!」
メイラはニヤッと笑う。ルミーナはその言葉に怒りがこみあがる。
「も、もぅ!メイラ!!」
ルミーナが怒っているのを笑った。メイラは思う。こんなに、心の底から笑ったのは久しぶりだなと。
こいつは、ルミーナは、俺を変えてくれるのか…?
「そういや、」
ルミーナの声で我に帰る。メイラはルミーナを見つめる。
「これからどうするの?」
「俺は、お前のおばから助けてくれと言われた。しかしお前は世界を見たいと言
った。でも助けてくれて言われたから、俺はお前のそばにいる。」
メイラは左耳に横髪をかける。
「俺は旅の目的がある。それは言えないけどさ。まぁ。まず自分の世界見ればい
いだろ?」
「て、ことは、」
「まず、アルリアに行くか。」
メイラが笑顔で言うと、ルミーナの顔がパッと明るくなった。
「アルリアか!うん!行く!」
「!」
その笑顔にメイラはなにかズキンッと動いた。メイラの頬は少し赤く染まっていた。
「あのさ、」
メイラは静かに囁いた。
「ん?どうした?」
ルミーナは首をかしげ問いかける。
「こんなの聞くの、少し、その、嫌な質問だと思うが、ルミーナはどうして、『ユルエリア』に居たんだ?」
「…。」
ルミーナの表情は思ったより冷静で、あまり驚いていなかった。まるで、そう質問されることを分かっていたように。
「ごめんね。物心ついた時には、もう、ユルエリアにいたんだ。」
そして、ルミーナは話を続ける。
「アナさんからきいたんだけどね。アナさんさ、あの人すごく優しいでしょ…?だ
から、脅されて、騙されちゃって、借金抱えて、借金はもう返したんだけど、
その、脅した奴すごく正確悪くて、ユルエリアに住まないと、私を殺すって言
ったらしいの。それで、私達は、ユルエリアに住むことになったんだって。そ
れで、それで…。」
ポタリ、ポタリと、ルミーナの目から何か温かいものが流れる。メイラは歯を食いしばり、ルミーナの両肩に手を置いた。
「ごめんな。ルミーナ。」
ポツリ、小さくメイラは呟いた。それでも、彼女の目からは、涙があふれ続けるままだった。
翌朝、メイラとルミーナはアルリアへ行くため、アルリアとユルエリアの境。「バジルビア」へ行く途中だった。境というのは、部外者が勝手に入らないように、確認する場所だ。この「アルリア王国」と「ユルエリア王国」。両国とも敵が入らないように、警備がとても警戒だ。こういった、敵意が強すぎるため、それを確かめ旅券を買い、そしてやっと他国へ行ける。しかしここから「バジルビア」には歩いて4時間はかかる道だった。
「おーい。ルミーナ。おせーぞ。」
「わ、分かったから!」
しかし、その息切れしているルミーナの姿を見て、メイラはその足を止める。そして近くの木に背をつけて座った。
「休憩。」
メイラは呟く。ルミーナは息を切らしながら歩きメイラの隣にポツンと座る。
「そういえばさ、しっかり自己紹介してなかったね。」
ルミーナはそう言うとメイラを見つめた。
「私はルミーナ・オルマトス。17歳。しってのとおりアルリア出身。」
「あぁ」
そうか、こいつアルリア人だ。そう心の中でメイラは呟く。
「で、メイラは?メイラのフルネーム。」
「お、俺か?」
メイラは少し戸惑うが、口を動かし始めた。
「お、俺はメイラ・アリマトネ。」
「へぇー。偶然もあるものね。」
「え?」
メイラはルミーナに首をかしげる。ルミーナはメイラを見て話を続ける。
「だって。この国の貴族と名字が一緒だからさ。」
「あ、あぁ。俺の先祖が貴族の端っくれだったから。」
「へー。」
メイラは、ニコッと笑う。
「ま、もう貴族じゃねーよ。母親から聞いた話だと、俺のひい祖父さんの時に貴族からは離れたって。でも、アリマトネって名乗ると色々都合がいーんだとよ。」
メイラはニヤッと、笑いそう囁く。
「ははぁ。あんたのひい祖父さん、ちょっと悪い人ね。笑」
「まぁーねー。笑」
でも、メイラは、心の中では、まるで渦がまくかのように、心苦しかった。でも、メイラがそんなことを考えている中、ルミーナは話を続ける。
「まぁ、メイラなんかよりきっとミラ様の方が100倍かっこいいと思うし!」
「な!結構傷つくな。」
「まぁさ!いいじゃん!」
ルミーナが言う、ミラ様。もちろん、メイラも知っている。ミラ、とは、アルリア王国の第一王子、ミラ・ロゼール・アリマトネ・アルリアのことだ。顔はもちろん見たこと無いが、名前くらいは知っている。ってか、誰でも知っている常識レベルの情報だ。
ルミーナはニコッと笑うと、下をうつむき少し暗い顔になる。
「でも、ミラ様、そして第2王子のミル様、第3王子メルラ様、全員行方不明。
死んだって言われているし。アルリア王国は今混乱している。」
ルミーナがそう言い告げるとメイラは前にある広い草、自然を見わたした。
「そうだな。この世界はアルリアとユルエリアの2つの国に分かれている。今は
いいが、いつ、アルリアとユルエリアが戦争するか…。ユルエリアの第一王子、
マリン・ルツ・ステーブ・ユルエリア。そいつはかなりの腕前。そして、アル
リアの王、リュクル・アリマトネ・フール・アルリアは、何を考えているの
か。」
そう呟いていたメイラ。すると横に座っていたルミーナが軽く叩いてきた。
「ちょっ!何するんだよ!
ルミーナに叫ぶメイラ。けっこういたーい。と、メイラは、呟く。
「もう。リュクル『様』でしょ!ったく、アルリア王国の立派な人なんだから
ね。」
ルミーナがそう言うとメイラは”はいはい”といい加減に返事をした。
「はぁー。ったく、メイラは。その「バジルビア」にいつになったらつくのよ。」
「まぁ。後2時間はかかるな。」
「に、2時間!?」
ルミーナは驚いて思いっきり叫ぶ。メイラは、はぁーと、ためいきをついた。
「じゃ、行くか。」
メイラはそう言って立ち上がる。
「さっさとしないと2時間で着かなくなるからな。」
そう言うとさっとメイラは前に進んでいってしまう。
「ちょっと…。疲れるし。」
ルミーナはメイラに追いつこうと、全力で走った。
もうずいぶん経った。きっと1時間は経っただろう。2人は森の中に入っていた。
「この森ぬければ、着くから。」
メイラは囁く。と、いっても、森の中は迷いやすいし、暗い。まだまだ一時間はかかる。
「はぁー。もう疲れる…。」
へろへろな状態で、歩いているルミーナ。メイラはうしろを向き機嫌悪く言う。
「うっせーよ!さっさと歩け。着かないぞ。」
「もうメイラってば…」「!」
ルミーナの言葉が途切れた。おかしい。嫌な予感がする。その途端。
ズシッ
誰かが動く音がする。メイラはすぐさま後ろを振り向いた。そこには、人が、男がいた。輝くエメラルドの瞳。その流れる赤い髪は肩まで綺麗にのびている。右の前髪は瞳と同じ色のピンでとめている。そして、するどい目つき。ルミーナの首元に短剣を向けていた。
「誰だ。お前。」
メイラは呟く。男はニヤッと笑い言った。
「俺の名は、アリマ。アリマ・ウルメディア。」
「!」
メイラとルミーナはその名を聞いて驚く。メイラは目を丸くして、口を動かした。
「お前は、アルリア王国の王子3人を襲ったことに絡んでいた暗殺団の1人。
いや。重要な人物かな?お前は暗殺団『メジビル』の副団長。アリマ・ウルメ
ディア!!!」
アリマはニヤッと笑いメイラを見つめる。
「その通りさ。俺はアルリア王国を襲った。そして王子3人を誘拐した。でも、
その後死んだかどうかは、わからない。俺は団長に3人の身柄をわたしたか
ら。他のことは知らない。」
アリマはルミーナの首元の短剣を近づける。
「やめろ!」
メイラは目を見開き叫ぶ。
「どうしてお前はここにいる!なにが目的だ!」
アリマはするどい目でメイラを睨みつける。
「目的。それは団長、カルメディア様のご命令だからだ。黒い髪の長髪。左耳に
パープルダイヤのピアスをつけている男を捕獲せよ。また、一緒に同行してい
るやつらも捕らえてのこと。俺についてきてもらう!」
メイラは歯を食いしばり、背中にある、剣を取り出した。
「俺は、そんな暗殺団なんかに用はない!俺は、メイラだ!」
「メイラ、か。」
二ヒッとアリマは笑った。するとルミーナ向けていた刃を離して、ルミーナを突き飛ばした。
「がっ!…ごほっ…。あっ、め、メイラ…!」
ルミーナは思い思いに彼の名を叫んだ。
「ルミーナ!少し待っていろ。すぐ終わらせる!」
すぐ、自分の世界へ入る。もう、あたりの風の音すら気づかない。ただ、目の前にいる暗殺団の一人の動きを、音を、息づかいを、感じるだけ。メイラはアリマを睨む。力をため、風のような速さでアリマに向かい撃つ。
「はぁああぁー!」
そのするどい刃をアリマに向ける。
「へぇー。いい腕だ。」
その刃を受け止めるアリマ。
「くそっ!」
剣と剣。2つの刃が重なり合い、響き、キーン!と、音が鳴る。
「メイラ。でも、その腕じゃ俺には勝てない!」
するどく早い動きで短剣を動かす。まるで、操っているかのように…。何個もメイラの体に傷が入る。
「メイラ!」
ルミーナは叫ぶ。メイラはニヤッと笑いアリマを見つめる。
「まだだぜ!」
ニヤッとメイラは笑い剣を振った。素早い速さ、風の刃が現れ、アリマの腹にめがけて突き刺さる。
「その技は…!流風群…!」
“流風群…!なんで、この技を…!”
「まだ終わっちゃいないぜ。アリマ。」
余裕そうな表情を見せるメイラ。アリマは驚く。しかし、すぐさまするどい目つきに戻る。
「それほどの力が。」
ポタリ
アリマの腹部から赤い液体が流れ出る。少しの傷だ。動くくらいには平気な傷なはずなのに。しかし、アリマは、力が入らない。その様子にメイラとルミーナは驚きが生まれる。
「ったく、少し油断しすぎた、かっ。」
アリマは腰につけていたオレンジ色の布をすぐさま取り、腹に巻く。
“くそっ!俺としたことが、守るってきめたはずなのに…!”
メイラは、剣を持っている両手に力を入れる。
”今だ!”
メイラはそう思いアリマに剣を振るった。その時だった。
「!」
メイラの剣を止める者がいた。青い髪は肩近くまでのびていた。アリマと同じ緑の瞳。身長は180そこそこだ。メガネをかけていたが、美しい顔のバランスはすぐ分かった。
「アリマ様!そろそろお時間が!」
「ウルディ!?」
その男、ウルディはアリマに向けて叫んだ。心配そうに、そして焦っているかのように…。
「だ、大丈夫だ!だから、少し静かにしろ!」
「で、ですが!」
アリマはウルディを睨む。ビクッとウルディの体が動く。
「さぁ。メイラ。まだだ!」
アリマはその短剣をすばやく動かす。
「くそっ!お前!」
メイラは風をきるように剣を振るう。アリマはなんとか避け、メイラめがけて走り、短剣を振るった。
「ったく、救いようの、ないやつめ…!」
メイラは叫ぶ。アリマは歯をくいしばり短剣を構えた。
「いくぞ!」
しかし、その時だった。
「!」
アリマの胸に激痛が襲う。バクバクと心臓が動く。意識が遠くなり、視界がぼやける。
“く、そっ!!”
アリマは急に力がぬけたかのように、地面に膝をついた。呼吸があらくなり、息が苦しかった。
「!?」
メイラは目を見開いた。自分は倒れ込むような傷はつけていない。しかし、目の前の青年は、苦しそうに息をしている。それに、ルミーナも驚いていた。
「お、俺は、おまえたちを…。」
バタリッ
その青年は静かに地に頭をつけ、倒れた。次の瞬間、ウルディの首元に冷たい感触が現れる。
「教えろ。アリマについて。」
メイラはそう言い捨てた。ウルディはメイラを睨む。
「今から質問することに全て答えろ。」
ウルディは何も反応しなかった。が、メイラは、話を続ける。
「まず、アリマはどうして倒れた。気を失うほどの傷を俺はつけていない。」
「なぜ、気になる?」
「目の前で倒れといて、気になんない訳がない。」
メイラは、きっぱり言った。ウルディは多少驚いたが、そのままだった。
「私からも、お願い。」
ルミーナも囁いた。ウルディはメイラを睨む。そして、口を動かした。
「俺から言えることは、何もない。ただ、」
「ただ?」
その言葉に疑問をもち、メイラはウルディに問いかけた。
「俺はアリマ様から何も言うなと、口止めされている。だから、何も言えない!」
そう言った瞬間、ウルディはメイラの左腕をつかんだ。
「うっ!」
あまりに痛かったため、メイラの口から声がもれる。ウルディはその一瞬をすきにして、アリマの元へ走る。
「待て!」
メイラが叫んだころにはもう遅かった。ウルディとアリマは光とともに、一瞬で消えてった。
「くそっ!あいつ、魔法使えるのか。」
メイラは舌打ちする。
「転送魔法。一瞬で、行きたいところに転送、移動できる、日常魔法。」
「日常魔法?」
メイラはルミーナに首をかしげ、問いかけた。
「え、知らないの!?魔法のこと!」
「あぁ。」
その冷静な顔のメイラにルミーナはビックリする。本当に知らないのだと。メイラは技術もあり、体力もある。なんでも知っているかと思ったが、魔法については知らなかったのだと。意外だなとルミーナは思うがそれは、口には出さない。ルミーナはメイラを見つめて話しを始めた。
「魔法っていうのは、魂を?んー。なんというか、意識を集中して相手をよく観
察して、思いをこめ攻撃する。それが魔法。このくらい知っているよね。」
「いや。全く。」
「嘘!?」
ルミーナは目を丸くする。
「そんなことも知らないの!?ったく、学校とかで、習わなかったの?」
「知らないものは、知らない。」
メイラはあっさり答える。ルミーナは、はぁーと、ため息をつく。そして、話しを続ける。
「で、魔法には3つの種類に分けられている。まず1つ目、『攻撃魔法』(こう
げきまほう)。その名の通り攻撃に使う魔法。2つ目、『身守魔法』(しんし
ゅまほう)。身を守る魔法。3つ目、『日常魔法』(にちじょうまほう)。転
送魔法や、日常的な魔法。この3つに分かれる。」
「ふーん。」
「ちょ!こんなに説明させておいて!」
ルミーナはメイラに叫ぶ。
「ま、とにかく、色々な魔法がある。魔法って、誰でも使えるのか?」
メイラはルミーナに問いかける。ルミーナはニコッと笑ってメイラに話す。
「使えるっちゃ使える。でも、そう簡単には使えないんだな。魔法はとても集中
しないといけない。普通の人じゃあまり使えないね。現在でも、まだ魔法を使
えるのは100人もいないって、言われているしね。だって、この世界、「セ
ールディア」の人口は3億人。そのうち、剣や弓や魔法などの技術を持ってい
る者は1000万人その中の100人以下だよ!魔法使えるの。すごいな。
あの、ウルディってやつ。」
ルミーナは俯く。それほどあいつはすごかった。あのウルディという奴。メイラはそのルミーナを見つめる。前から見ると彼女の体が全て見える。身長も、その長いまつげも、残念な上半身の体つき、痩せた体質、とても足が長く、それから、それから…。メイラは思う。どうしてこんなに、ルミーナのことを思うのだろうか。
「メイラ?」
その優しい声がメイラに響き、ハッとメイラは我に帰る。
「あ、な、何でもない。」
それより、あのアリマ。どうゆうことだ。そして、あいつは…。
メイラは心の中で、ボソッと呟いた。
「アリマ、お前は何におびえている…。」
「うっ…。」
アリマはその重たいまぶたを開ける。ここはどこだろう。疑問に思う。しかし、きっちり目を開ければ場所が確認できた。ここは森。「ルーザの森」。メイラたちもこの森にいる。メイラ・アリマトネを確保することを命令にきたんだ。今までの事を全て理解した。それからアリマはゆっくり体を起こした。
「大丈夫ですか?」
アリマの耳に安心する、優しい声が聞こえた。アリマは右を振り向く。そこには心配そうにこちらを見ている、ウルディがいた。
「アリマ様。」
「あ、あぁ。大丈夫です。」
いきなり口調が変わる。あの戦闘とまるっきり違う。
「すいません…。さきほどの戦いでのご無礼な態度。すいません。」
アリマはウルディにとても礼儀正しい言葉使いをとる。アリマの頬はほんの少し、赤くなっていた。恥ずかしいのだろうか。少し照れくさそうにする。
「ったく。」
ウルディはアリマの手をとりアリマの右手と左手を重ねあわした。そして、
バンッ
「痛っ!?」
アリマはその意外な行動に声をあげてしまう。ウルディはそのアリマの手を思いっきり叩いたのだ。とてもいい音が「イーザの森」に響く。
「い、痛いです。」
アリマは少し弱きに言った。しかし、それに気にせずウルディはアリマの手に触れてまま、囁いた。
「なんでも、あなたは背負う。それがあなたのいけないところ。アリマ。」
ウルディの口調も変わっていた。まるで、アリマの先ほどの口調と、ウルディの先ほどの口調が入れ替わったかの用に…。
「でも、あなたは優しい。アリマ。君はメイラ・アリマトネを、救おうとしてい
るね。」
「!?。どうしてそれを…!」
アリマは目を丸くする。ウルディはアハハッ、と、笑い、話しを続ける。
「そりゃ、長い付き合いだ。君のこと、分かるよ。君は優しいから。誰でも救お
うとする。自分が死ぬかもしれないのに、それでも救おうとする。」
「ウルディ…。」
「死んじゃダメだよ。アリマ。アリマ・ルツ・ステーブ・ユルエリア。君はこの国『ユルエリア』の、第二王子だ。」
「きゅ、急に言われても…。」
アリマは少し戸惑う。
「でも、こんなまぬけな奴が王子だなんて、ユルエリアは残念だな。」
「…。そ、そうだね。」
「!」
ウルディはからかって言っただけで、「やめろよ」とか、そんな返事が返ってくると思ったが、アリマはとても自分を責める。信じ込んでしまった。アリマは悔しそうに歯を食いしばる。
「悪かった。ちょっと、やりすぎた。」
ウルディはそう言うとアリマの手から離し、アリマの頭に右手をポンっとおく。
「とにかく、無理すんな。俺は、アリマを信じている。だって、はとこだもん。」
「ウルディ。」
その言葉に安心して、アリマは笑みを見せる。そして、ゆっくり立ち上がった。
「ウルディ。2人を救いに行きます。」
「着いて行くよ。アリマ様。」
「もう。普通は俺が「様」をつけるのに。」
「王族の位置的にはアリマの方が偉いよ。」
「だから、いいです。普通に接してください。」
「じゃあ。お言葉に甘えて。行こう。アリマ。」
「あぁ。ウルディ。」
アリマは優しい瞳で囁いた。絶対に2人を救う。そう心にアリマは誓った。
「メイラ、これからどうする?」
ルミーナはメイラに問いかける。
「決まっている。アリマを、止める。そして真実だけを聞く。聞きたい。」
メイラはそう言うと、うかない表情をうかべる。
「そうこなくっちゃね。私を、手伝う。」
ルミーナはやる気満々で、言った。メイラは、
「覚悟はいいか?」
そう囁く。
「うん。」
メイラはハァーと、深く深呼吸をする。静かに、ルミーナに
「姿勢を、」
と、語りかけた。ルミーナは緊張しながらも、腰を落とし、まわりに目をやる。
「そうだ。きっと、また来る。いつか分からない。でも、絶対来る。」
メイラは目を閉じる。まわりの音に耳を傾ける。風の音。木の音。息遣いの音も。全てを。
”俺の中に、全てを、奪うように。全てを。落ち着け。落ち着くんだ。全てを感
じろ。今、この場所の全てを。”
ガサッ
「ルミーナ!右上の木に!」
メイラは今感じ取ったものを信じ、ルミーナに叫んだ。一瞬でルミーナはそちらに短剣を投げた。人だ。木から、人が落ちてきた。それは、左腕に短剣が刺さって、血を流している、アリマの姿があった。アリマはふらつきながらも、地に足をつける。横にはウルディもいた。
「待ちくたびれたぜ。」
メイラはニヤッと笑う。アリマを、睨みつけて。
「それは、待たせたな。」
アリマはそう言うと、左腕から短剣を抜いた。グサッという音が響き、もっとそこから赤い液が流れる。
「うっ!」
アリマは痛みが激しく声が漏れてしまう。
「情けない…。」
アリマは誰にも聞こえないように、ポツリ、呟く。
そう、自分がとても、情けなくて、こんな傷で声をあげてしまう。本当に情けない。
「お前らの身柄を、カルメディア様に渡す!」
でも、なんとか自分の気持ちをおさえ、任務を続ける。そう。俺は本当に情けない。情けないから…。
「こっちも行くぜ!ルミーナ!」
「!?」
メイラが叫んだ。しかし、その言葉が違和感だった。
“ルミーナ?なんだ。これは。この気持ちは。どこかで、聞いたことのある、その
名前…。ルミーナ…?なんだ。この、心の穴が埋められない感じの、この感覚…。”
アリマは心の中で呟く。しかし、すぐにそのするどい目つきに変わる。
「2対2、か…。行くぜ!」
アリマはニヤッと笑う。メイラはそれに返すようにニヤッとやり返した。
「ウルディさん…。いつも巻き込んですいません。」
「何、弱きになってるの。アリマ。」
小さい声で言葉をかわす。
「じゃ、行きますか!」
ウルディはそう叫ぶとルミーナに襲いかかる。
「!」
ルミーナは驚いて、目を丸くする。そのするどい剣先が飛んでくる。
「こ、こいつ、ヤバッ!?」
ルミーナはなんとか短剣で受け止め、跳ね返す。ウルディはバランスよく、ピタッと地に足をつける。
「女なくせに、力はあるようですね。そんな痩せた残念な体で。」
「はっ!?。残念じゃありませーん!や、痩せてるは嬉しいけど…。ま、負けない
から。えっと、う、ウルデ!」
「ウルディですが、まぁ、気にしないよ!」
ウルディはその剣を振るった。
「君には負けないよ。ルミーナ。」
「そっちは、しっかり、覚えてるんだぁ〜。」
“ったく、やっぱり、こいつ…。強い”
アリマはそう思いながらも、短剣をメイラに投げる。心臓はねらわないように。だって…。
そう思った時には、メイラの剣先が目の前にあった。
「あ、あぶない。」
声が出てしまうアリマ。アリマは右足をバランス悪く地につける。
「なんだよ、あんなんで弱音吐く?」
メイラは上から目線でアリマに囁いた。アリマは歯をくいしばる。
「で、やっぱり、弱くなっている。」
メイラはそう囁くと、剣を振るう。あせりながらもアリマはかわした。しかし、その右頬から、赤い液体が流れる。
「終わりだ!」
メイラは叫びアリマに襲いかかる。アリマはなんとか隙を見つけて、メイラの服を掴んだ。そして、その服を引っ張り、メイラを地にねかした。
「メイラ!」
ルミーナは目を丸くして叫んだ。しかし、長くは視線を動かせない。よそ見をしたら、殺される。ルミーナは救いに行けない。ルミーナは悔しく、歯をくいしばった。
「ったく!」
メイラはアリマの右手を左手でつかみ、自分の上から離した。そして、逆にアリマを地にねかした。背が地面につく。アリマが目を開けた時には、すでに遅かった。アリマの右首元に、メイラの剣があったからだ。冷たい感触がする。アリマの首には、汗が流れている。
「アリマ!」
ウルディは叫ぶ。しかし、ウルディの横に短剣が飛んでくる。
「じゃまさせない!」
「くそっ…!」
ウルディは歯をくいしばる。
「で、色々と聞かせてもらおうか。」
メイラは上からアリマに問いかける。アリマは目を丸くして、驚いた様子だったが、深く深呼吸をして、口を動かした。
「ウルディ。負けだ。」
「!」
そう言った瞬間ウルディの動きが止まった。下を俯き、しばらく経ってから、剣を、腰におさめた。いつ動くか分からない。ウルディに十分にルミーナは警戒していた。
「で、質問に答えてもらおうか。」
「…」
メイラがそう言うと、アリマは右手に持っていた短剣を遠くに投げた。
「で、何を俺に問う。」
アリマは囁く。
「おまえらは、何が目的だ。」
「それだけ…?」
「それだけだ。」
アリマはあきれた表情でメイラに向かって話す。
「だから、カルメディア様に命令で、」
「だから、おまえらの目的は何だと聞いている。」
「!」
アリマは驚いて目を丸くする。あぁ。これは本当に負けだなと。
「じゃ、次は俺に質問させろ。」
「なんだよ。」
メイラはそう言うと、次に意外な言葉が聞こえた。
「おまえらは、「ユルエリア人」か?」
と。
「ハッ?」
メイラはおもわず声が出てしまった。どうしてこの場でこの質問なんだと。今、自分は殺されようとしているのに。どうして。メイラは訳分からなくなっていた。
「ど、どうして今そんなことを。」
「それ次第によって、返事の返しが違う。」
アリマがあまりにも真剣な顔で囁いている。メイラも無視できず、口を動かす。
「両方、アルリア人だ。」
そのメイラの言葉にルミーナは少し驚いた。メイラもアルリア人だったんだと。しかしそれは言葉にしない。
「そうか。」
アリマはハァーと、ため息をつき、話を続けた。
「早く、ここから(ユルエリア王国)逃げろ。」
「!?」
意外な言葉だった。どうしてこんな言葉を言っているのだ。そうメイラは思った。おまえ何言っているんだ。メイラは目を丸くする。少し遠くにいたルミーナも驚いていた。
「どうゆう意味だ。俺達を惑わせて殺すつもりか!?」
メイラは勢いよくその剣をアリマの首元にもっと近づける。しかし、ピクリとも、アリマは動かなかった。
「ど、どうして、逃げようとしない。」
「殺すなら、殺してもいい。でも、早く、アルリアに戻るんだ。少なくとも、そ
っちの方が、安全だ。」
メイラはその途端、アリマの首元から剣を離していた。
「どうして、お前、そんなこと、言うんだ。逃げろって、どうゆう意味で。」
メイラは頭がこんがらがっていた。アリマがどうしてこんなこと言っているのだと。アリマは遠くに落ちている、自分の短剣を拾い、腰にしまった。
「カルメディア様は、恐ろしい人だ。きっと、お前達を、殺す。だから、逃げてほしい。この国、(ユルエリア)から逃げるんだ。」
「急になんだ。」
メイラはアリマを睨んだ。ゴクリと、アリマは息をのむ。
「さっきは、殺そうとして、今度は助けたいと。そんなの信じる訳ないだろ。」
「…。そうだね。そうなんだよ。でも、信じてほしい。どうか、信じてくれ。」
アリマは強い瞳で、メイラを見つめる。それに、メイラは少しの違和感がした。どうして、こんなにも、冷静でいられるんだと。その強い視線。メイラはだんだんアリマの事を知りたくなった。こいつはどんな奴なんだと、そう、そして…。
「で、どうして、他国の奴を救いたい?」
メイラはアリマに問いかける。
「今から言うことは俺の本心だ。」
アリマは、ハァーと、深呼吸を一回、ゆっくりとする。そして、
「俺は、助けたい。」
一言そう言った。
「!」
メイラは目を丸くする。ただ、助けたいから。それだけなのか?
そうメイラは思うがアリマは話を続ける。
「俺は、人間を救いたい。アルリア人も、ユルエリア人も。差別なく、救い
たい。」
「アリマ?」
どんどんアリマの顔が青くなっていくのに、メイラは違和感になる。
「俺は、誰でも、救い、た、」
そこで、言葉は途切れ、アリマの体はゆっくり揺れた。「アリマ!?」と、メイラが叫ぶ途端、アリマは倒れた。
そう思った。しかし、アリマの体を支える者がいた。
「う、ウルディ…。」
ポツリ
アリマは呟いた。アリマの背中をウルディは支えていた。アリマは、一人で立とうと、バランスを整えた。
「無茶しすぎだ。アリマ。」
ウルディはそう言うと、メイラを見つめた。ルミーナはメイラの斜め後ろへと、立った。
「ウルディ…。」
アリマはもう一回彼の名を呼ぶ。ウルディはアリマに笑みを見せると、メイラ達を見つめた。
「アリマはお前達を殺そうとしていない。だから、ここから立ち去れ。」
「訳、分からないこと。お前達は、一体、何なんだ…!」
メイラは彼達に問いかける。どうゆうことなのだと。はっきり、知りたかった。アリマと、いう者の本当の姿を。今逃げろと救おうとしているアリマ。命令に従っている暗殺団のアリマ。どちらが本当のアリマか。知りたい。俺とルミーナには、知る権利があるはずだ。
「アリマ。お前は、何者だ?」
メイラはポツリ、アリマに問いかける。ゆっくりと、アリマは口を動かす。そして、言った。
「俺の名は、アリマ・ルツ・ステーブ・ユルエリア。この国の第二王子だ。」
と。
うすうすは予想していた名だった。アリマという名前。しかし、本当かどうか分からなかったから、何も言わなかった。しかし、本当にこいつが、第二王子だったとは、そうして言葉にして言われると、驚きがました。
「やっぱり、お前は、王族だったか。」
メイラはポツリ、呟く。
「あ、あなた。ほ、本当にアリマ様。あの。」
ルミーナは驚いている。そうだろう。この国、いや、この世界の王族を、一般の町人達は見たことないだろう。メイラは遠いところから見たことはあった。しかし、顔までは見えなかった。だから、今回初めてしっかり、目の前で見た。嘘は絶対についていないと、メイラもルミーナも分かった。なぜなら、彼は赤い髪に、緑の瞳を持っているのだから…。
このユルエリアの王族は、赤い髪に緑の瞳。これに変わりは絶対になかった。貴族の者はそのどちらかというケースが多い。しかし、貴族の中でも、どちらも持っていない者もいる。まぁ、今のところ、そうゆうケースはめったになかった。アルリアの王族は黒い髪に青い瞳。しかし、町人にも、黒髪はいるし青い瞳のやつもいる。それを両方というケースも珍しいことでもない。だから、比べるのに大変なのだ。なので、アルリアの王族は何かしら間違えないようにされているのだが、それはアルリアの王族しか知らない。それに対してユルエリアは、緑の瞳はいるが、王族か貴族以外に赤い髪をした者はいない。だから、アリマが王族だと言って、嘘ではないことが、すぐに分かる。
「そして、」
アリマは話を続ける。
「カルメディアの名前は、カルメディア・ルツ・ステーブ・ユルエリア。俺の、父上だ。」
「!?」
それには驚きを隠せなかった。メイラも、ルミーナの目を丸くしている。自分の父。そう言っている。メイラは落ち着いて深呼吸をした。そして、静かに囁いた。
「おまえが言っていること、俺は嘘じゃないと、思っている。正直、事実だと、
思っている。そのうえで聞きたい。どうして、ユルエリアの王族が、敵国のア
ルリアの町人を、助ける。」
アリマはそのまっすぐな緑の瞳をメイラに向けて、ゆっくり、話始めた。
「違う国の人間だから、助けないのか?」
「!?」
メイラは驚いた。そして、ホッと、したのだ。心から。なんだ、おまえも同じなんだ、と。
「差別があるから、助ける助けないじゃない。目の前にその人がいるのだから、
傷つこうとしているのだったら、助けるよ。俺は。」
(そうしないと、俺は、俺を、許さない…。)
「人として、人間として、俺は、救う。」
「だったら、」
アリマの言葉を遮り、メイラは話を始める。
「その言葉、そっくりそのまま返す。」
「!?」
アリマは目を丸くする。何を言っているのだ、と。しかし、メイラはそのまま続ける。
「『人として、人間として、俺は、救う』だったら、俺も、お前を救う。アリ
マ。」
「えっ…。」
メイラはアリマを見つめる。
「気に入ったってことだよ。」
「は、それは、どうゆう。」
アリマは何もわからず、頭の中こんがらがっている。全く状況が読み取れない。
「おまえも、カルメディアのところにいたら、危険だろ。だったら、ここから
(ユルエリア)から、離れた方がいいんじゃないか?」
「め、メイラ…。」
「俺達は今、アルリアに行く途中なんだ。だから、お前も、」
「で、でも、」
アリマが、戸惑いを見せる。
「行きな。」
突然声が聞こえる。ウルディだ。後ろを振り向きアリマはウルディを見つめる。
「アリマ、こいつらと、行け。嫌だって言っても無駄だぞ。」
「ウルディ…。」
アリマは下を俯きニコッと笑うと、ゆっくり、顔をあげた。
「俺は、黒髪の男と一緒に同行しくい止める。そう、父上に報告してくれない
か?ウルディ。」
「分かったよ。アリマ。」
「元気で。」
「あぁ。」
そうウルディは言い捨てると、光とともに、消えってった。転送魔法で消えたウルディを見送り、アリマはメイラ達を見つめる。メイラはニコッと笑みを見せる。その隣のルミーナも、笑顔を見せてくれた。
(さて、これから、どうなるのかな。)
アリマは笑顔で、そう心から思った。新しいこの2人と、何を話そうか。そのことに、アリマはわくわくが、いっぱいだった。こんな楽しみと感じたことは、何年ぶりだろうか…。
「残りは5つ。」
暗い部屋。一人の男の声が響く。
「悲しむ者、苦しむ者、淋しむ者、欲しがる者、強がる者。そして。」
その男はニヤッと笑う。
「憎む者。」
その男は後ろを振り向く。それには、なにもまだ分からない。男はそれに向かって言うのだ。
「まだ、待っててね。」
と。
第2話です。遅れてますね。すいません。2週間に1回ペースで頑張っていきたいです。これからもよろしくお願いします。
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