風呂屋に二人で
本日貸し切り
そう書かれた風呂屋の前
試験官のリーネさんはおれの手を引いて風呂屋へと突入する。
「か、貸し切りって書いてありますよ?!」
「うん。他の人に邪魔されたくないでしょ♪」
どうやらリーネさんが貸し切ったらしい
そのまま脱衣所まで直行し、服を脱いでいく。
おぉ‥…
躊躇なく露になるリーネさんの裸体。
女性的な所はしっかり強調され、腰回りはしっかりくびれていて凄く見とれてしまう。
すると、おれの視線に気がついたのかリーネさんは微笑み
「大丈夫!!いつかおっきくなるよ!」
ぽよんと胸が弾んだ。
俺はなんだか恥ずかしくなり浴場へと逃げ出した。
「お、おぉ‥…」
目の前に広がる懐かしき風景
作りはほぼ銭湯で
壁には青い山‥…富士山が描かれていた。
「ほらー、まずは体を流すよ。」
そういって案内されたのはこれまた銭湯ぽい小さい腰掛けと蛇口のついた列
貸し切りなので中央に二人で座った。
「まずは流しっこね!」
そういってタオル片手に楽しそうなリーネさん。
まずは俺が洗ってもらうことに‥…
変な事されたら魔法で消し飛ばす準備はしてたんだけど‥…
「はいっ、お湯かけるよー」
ざばぁーと頭から泡を落とすため湯をかぶり何事もなく健全に終わってしまった。
あ、あれぇ?
そして自分が洗う番
人を洗った事等ないので
おぼつかない手つきでゆっくりと身体中を使って洗い‥…
「うん。ありがとー」
お湯をかけ泡を全て流し終えた。
‥…
‥…‥…
あれぇ?
何かされると俺が無駄に騒いでたみたいじゃないか?!
納得がいかず体も洗い終わったので
お風呂の方へと走っていったのだが‥…
「走ると転ぶ‥…あっ」
「うわっ?!」
案の定、俺は足を滑らせお湯へと顔からダイブしてしまった。
や、やべ
脚が着かない
掴めるものがない
これ、溺れ‥…
「もう、危ないじゃない。」
「うぁ‥…」
咄嗟のところでリーネさんに湯の中から抱き上げられて事なきを得た。
「す、すみません‥…」
「ひやひやしたんだからね?」
一旦上がる?と聞かれたが断り
俺はお湯に改めて浸かることにした。
隣にリーネさんが座り一息つく。
「ふぁぁぁ‥…」
「ふぅっ‥…」
二人して湯を堪能したあと
話を始めることにした
「あの、秘密教えてください。」
「あ、そうだったねぇ‥…えっと、試験官の持ってる魔法を感知する魔石は基本、目の前で発動された魔法にのみ反応するんだ。だから試験が始まる前から身体強化の魔法をかけておく分にはばれないんだよ。」
「え?それがうらわざ?」
「そうだよぉー。でも基本、普通の子は魔力が足りずに失敗するけど‥…あの方ご執心の君なら楽勝なんじゃない?」
「あの方‥…って‥っ?!」
俺は咄嗟にリーネさんから距離を取る。
「およ?どうしたの?」
「‥…リーネさんは私の敵?」
魔力を込めて、リーネさんを睨み付ける。
勇者なの?
鑑定の時には出なかったのは俺より格段に強いからかも知れない。
すぐさまシロ達を呼び戻せるように召喚の準備をしてるのだが‥…
「あ、結界張ってるから召喚とかできないよ?」
リーネさんの言う通りいくら呼び掛けても返事がない。
これは‥…ピンチ?
ゆっくりとリーネさんは俺に近づいてくる。
俺は魔法を発動させたはずなのだが‥…
「なっ、なんで‥…」
「うん。魔法も使っちゃダメだよ?」
どういうわけか、魔法は構築されることなく
魔力が霧散していく
俺は後ずさりすることも出来ずリーネさんに体を捕まれ、
ーーぎゅーっ。
「はぇ?!」
「んーやっぱ可愛いぃ。あ、敵じゃないよ?」
抱き締められ、頬ですりすりされる。
そしてうっとりした表情のまま敵じゃないなんて言われても‥…あ、そういうことか。
「もしかして、魔王側の‥…」
「ん。そうだよぉー。てか、魔王側じゃなくて魔王様だよ?」
「え?」
ぱちんと指をならすとリーネさんの背から蝙蝠の羽が現れた。
「自己紹介しようか?色欲の魔王、リーネさんだよ!」
バサァッと蝙蝠の羽が広げられ
腰の辺りから黒い尻尾がゆらゆら揺れていた。
これはもしや‥…サキュバス?
俺はその姿に見とれることしか出来なかった。
明日はお休み予定です。