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ヒロイモノ

こんばんわ(☆∀☆)

『こちら陽気なたんぽぽ荘~大家と店子の家賃戦争~』の生き抜きにかきましたでございます。

楽しんでいただけましたらうれしいですなぁ。

氷宴の精霊たちが、艶めかしく躍動すると自己主張と言うべき、想いを包んだ寒風が街をすっぽり包み、黒水晶のような透き通った凍えそうな夜。


お空の神様に呼び出されて、天高く背伸びして、そびえ立つ煙突からモクモクと駆け上る煙は天使に誘われて召されるように上空に吸い込まれる、現代の技術が結集された、象徴的な陸軍工廠が立ち並ぶ山岳工場地帯。


そんな街のはずれ……


世の中の汚れが放置される、ゴミ集積所のたもとの濁った川面は淀みながらも、凛と研ぎ澄まされた面持ちをうかがっている。


氷宴の精霊の冷たい吐息を感じ、ひらひらと青白く月夜に映えた、淡雪が舞い散る空を見上げることができる街はずれの大きな川。


その川をどっぷりとまたいだ、歳老いた星霜を酷く物語る寂寥感溢れる架け橋は冬の寒さを耐えしのんでいるように思える。


その橋のたもとには――


家を失い――雨露を凌ぐため、難民や孤児が生気なく生きている……そう、社会保障のない世界に希望を失い闇に飲まれかかった人間がたむろする、生けし墓場と言うべきだろう。


むろん、生けたものだけではない、羅生門のように川の畔には極度の飢餓に耐えきれず転がる死肉蝕んで伝染病に感染したり、汚染された川の水を飲んで中毒死した死体がころがっている。


 異臭ただようこの地域に寄り付かないブルジョアは蔑みの念をこめて『死神の宿り樹』と総称している。

鼻腔を破壊する悪臭に男をげんなりしていた。


「……酷いもんだ」ふぅと――男は深い溜息をついた、同情するつもりはないが見渡すかぎりの悲惨な惨状を言葉にしてしまう。


 瞳を眇めて周囲を一瞥すると――淀みなく見据えた黒い瞳は一人の少女を捕えた。


 仄かに雪がつもった煤けたアプリコットの髪……それは薄汚く、弱弱しく、壁にもたれかかったうらぶれた少女。


 なり恰好からは恐らく、流民の戦災孤児だろう。


 冬場には似つかわしくない朱色だったであろう引き裂かれた服、煤汚れた相好、幾度となく、生きる為に劣情にかられた兵士や野盗の淫行の餌食になったのだろう……孤立した孤独を含んだ瞳が惨状を物語っている。


 細く力のない肢体はあかぎれ、小刻みに震えた身体は、生きることに煩悶している。


 まともな食事もしていないのだろう、少女の意識はぼんやり、そして、うっすらとしか反応をしめさない。


 薄ぼけた眼差しで……少し言葉を紡いだ。


「おじさん……食べ物くれる人……私の身体……もう、壊れてるんだって……私、もう売りものじゃないよ……」


 淡雪のように消え入りそうな声……哀願ただよう眼差しは焦点があっていない。


「抱いてもいいよ……」


 何処か遠い眼差し……声にもならないかすれた声がこぼれた。傷だらけの小さな身体は力なく降り積もる雪に覆い尽くされていく。


 男はゆっくりと屈み、少女のやせ細った頬に優しく手をそえた――少し短考した憐れみを帯びた瞳を少女に向けて。


「限りのない愛を私に注いでくれますか?」


 男は力なくやせ細った少女の手を両手包むように優しく、そして力込めて握った。


 かぼそい柔らかな手……肌の温もりを失った手。


 仄かに雪がかったアプリコットの髪が軽く頷いた。


「交渉は成立、君には余りあるほどの幸せをまずは少しだけ運んできなきゃな」


 男の口元が仄かに緩んだ。


 宝石を扱うように愛おしく、うらぶれた少女の身体を抱きかかえた。


 少女の瞳は安心した子犬のような光彩が見える。


「お時間です、旦那様」


 男を促すよう鷹揚でしわがれた声が男の聴覚を刺激する。


 愛おしく抱きかかえたアプリコットの髪の少女を微笑みかけると男性は踵を返す。


 眼下には初老の執事らしき人物が片膝をつき、恭しく頭を下げている。


「この場所は心まで荒む、麗しの我が家に、ゴッホ、帰るぞ」


 満足した面持ちを浮かべる男にゴッホは苦笑する。


「連れて帰るのですか?」


 これ以上の面倒事は――などを含んだ訝しむようなゴッホの声に男性は悠然と厳かに頷いた。


「家族は多いほうが楽しいではないか」


 男はそう呟く――苦笑したゴッホは「貴方らしい」と心で呟いた。


 男性の腕の中で小刻みに戦慄く少女の瞳に映ったものは、何故か彼よりもその先の見ている眼差しだった。


 そう過去を回想している瞳だ、それを隠すように浮かべた微笑みは全く卑屈さもなく赤ちゃんのように無邪気な柔和さが宿っていた。


 少女はゆっくりと揺られるように頷き、安堵した相好で静かに瞼を閉じた。


幻想のハーモニーを奏でる白銀の月明かり――彼はこの世のものにあらざる雰囲気を醸し出す。

差し伸べた彼の手の温もりが張り詰めた少女の心も温めた。


「私とともに・・・」


 やがて、力なく……少女は息を引き取るように深く眠っていく。


 少女の煤汚れた顔をそっと抱き寄せ、彼は満足した瞳で宵闇を仰いだ。


 ガーンガーン・・・時を知らせる鐘がこの瞬間を彩っていた。


いかがでしたか?

コメディ要素が全くないだってーっ(☆∀☆)

なのでなんとなく思いついたことを徒然なるままにづづってみました。

不定期ですがよろしくお願いします(☆∀☆)

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