柊大地 大地に立つ
む…朝か?…ミスティルは身体を起こしまだ意識が覚醒しないまま周りを見る。
ここはどこだ?厚みのある布に横たわっていたようだ、自分の身体には数枚の布を身に被せてあり、隣を見ると男が居た
どうやら寝室のようだ…デカい本棚は壁際にあり、机の上には書類が乱雑にあった。その書類が気になり頭を掻きながら立ち上がり机に向かう…この机やたらデカいな…私の背丈と椅子が同じ高さだ、身長は175前後はあったはずだし
そして椅子をよじ登ろうと手を伸ばしたとき気が付く、いや思い出した
ここは私の家じゃない!と言うか私死んだだろ!改めて周りを見る。愛用の杖も見当たらずセレラの気配も無い、そして古臭い木造の匂いも…まるで未来に来た感覚だ
ふぅと溜め息の様に深呼吸をして冷静を取り戻す…まず私の状態だ。
様々な家具が大きく見えるのは私が小さいからだろう、目が覚める前に転生魔法を使って死んだのだから、と言う事は転生魔法は成功した訳か…いや今は転生魔法については後だ
小さいと言う事は私は子供…もしくは子供並の背丈だ
、そして寝ている男は親だろう、母親が見えないのは何故だ?…後で聞けばいいか
さて最大の問題だが…手を前に突き出し上から下へとスライドする、するとミスティルの前に透明なガラス板が現れた
そこに映し出されたのは子供…5歳から6歳ぐらいか?黒髪の短髪だ。顔は…ふむイケメンと言うより可愛らしい顔立ちだ、将来は可愛らしい少年になるだろうな。そしてガラス板は、数秒後には消えてしまう…猛烈な疲労感に襲われ眠気にも襲われる。
魔力─魔法に必要なエネルギー─が少なすぎる。先ほど使った魔法は初歩中の初歩の魔法だ。光の魔法なのだが、光を反射するという簡単な魔法で、魔力の消費も少ない。と言うかゼロに近いのに魔力が減りすぎた為、疲労感と眠気に襲われた
ゆゆしき事態だ…魔力が少ないと様々な事に問題がでる、研究所の作成や労働源の作成など魔法無しでは大変だ…魔術で補えるが色々リスクがデカい
考えている内に眠気に負けて布の上にダイブしたそしてそのまま眠りへと…
誰かに揺らされる感覚に気づく、まだ体がダルいが目を覚まして揺らした原因を見る
男…いや父親が原因だった。私が目を覚ました事に気づき「そろそろ幼稚園だろ?もう少しで小学生になるんだからしっかりしないとな。」優しく諭すように話す
小学生?幼稚園??なんだそれは?…前世の記憶は役に立ちそうに無いな…ともかく幼稚園とやらに行こうか
「解ったよ…お父様」寝室があるのだから他にも部屋はあるはず。複数の部屋を持っているなら金持ちと見るべきだろう
お父様と言う言葉に顔を強ばらせて「大地お父様はやめてくれ寒気がしたぞ、お父さんだ」アニメの見せすぎか?…最後何か言ったようだが良く聞き取れなかった…ともかくだ、父親だと言うのは確定したな「それじゃ着替えてな、飯の準備しておくからよ。」と寝室から出て行く…着替えというのは?見渡し着るような服と言うのが解らない…ならば聞くしかあるまいとミスティルも父親の後に続く
寝室から出て気づいたが、二階に居たようだ階段が左に見えた。父親が隣の部屋から現れ、子供が着る服を持っていた。父親は何か黒い棒状の物を顎に当てて、その棒状は物からウィィンと音が聞こえてくる。そして「ほら大地」と服を投げ渡して来た
その服を見て…これは幼稚園児が着る服だと知っていた。そう見た瞬間思い出した感覚に近い…これはおかしい、私は幼稚園について全く知らない無知なはずなのに…いや考えるのは後だ、心に留めておこう
大地は服を受け取り「それじゃ着替えてくるね、お父さん」と笑顔で寝室に戻る
とりあえずその服を着る…これはヤバいぞ羞恥心にかられるぞ、幼稚園児が着る服だ、ファッションより機能─安全性や見つけやすい色など─を重視しているため、ダサいそれならば我慢できようだが
大人なのに幼稚園の服を着る、と言うのはかなりの覚悟が必要だ。私とて恥ずかしい…仕方があるまい何も解らないのだから
ともかく着替え終えて父親の元へ…今後の事は、まず周りに溶け込めてからだ。リビングに入ると様々な物と出会う、小さなテーブル、光るガラス板、奇妙な箱など
父親はパンを食べながら光るガラス板…人が映り喋っているガラス板だ…を見ながらも大きな灰色の紙…情報誌なのか?…を見ている。忙しい父親だな
ミスティルは、父親と対面して座る…地面に座るのか?しかし椅子など使えないだろうし多分合っている…父親は、ミスティルに気づいたか目もやらず「大地、今日はパンだ…昼飯はいつものコンビニ弁当だから…すまないな昼飯作ってやれず」とビニール袋に入った弁当を渡す
なんだこれ?袋と言っていたがこんな袋あるのか?スベスベしててなんかやだ、後7?なにか意味があるのか?「その…大丈夫だよ、お父さん仕事頑張ってね」と満面の笑みを浮かべると父親は「解ってくれたか。いつもならゴネるのにな、一つ大人になったな」と立ち上がり大地の頭を撫でる
…いつもならゴネる?と言うことは私がこの身体に入る前には人格があったようだ、なら前の人格はどこに行った?…くそ色々有りすぎて考えが追いつかない。
身支度─黒いスーツ─を整えて、父親と共に家を出る、初めて外を見たが…なるほどこれは異世界だ。住宅街に並ぶ一つが私の家、そこから見えるのは大きな塔を一つと貴族並のデカい家など
私自身は、異世界に行くこと事態初めてではない。例えば、大陸全てが炎に包まれ、その世界に生きるものは全て炎の耐性があったしな、しかし…何故気づかなかった!それほど冷静を失っていたのか?気づける点はいくつもあった。服、常識の違い、物など
だが状況が解ったぞ、私はどこかの異世界に入ってある少年になった、そしてこの世界には魔力の概念…存在を否定している。要は魔法の意味は知ってるけど、現実にあるわけ無いだろだ。魔力が少ないのはそれが理由、魔力がこの世界に存在していなければ、魔法は使えなかったはずだし
だが魔法とは異なる力が必ずあるはず、あのガラス板のような物がな、魔法を使用しない世界は、本の知識でしか知らないから楽しみだ。ガラス板のなど調べられる…ふふ
最後に転生魔法は6割方成功だ。調整無しでこの成果は上々だろう、前世の世界に戻るつもりは無いが…当面はこの世界を調べる事にしよう
父親と共に歩いて広場に着いた…広場で良いのか?子供の遊具が置かれている場所…父親から聞いた話では、公園と言う場所だ。公園の前には、数人の親子がいた。父親は子供の母親に二、三話しかけ仕事に向かったようだ。その母親は私に近寄り「お父さんは、会社に行っちゃたから一緒にバス待とうね。」とりあえず頷く…バスとは何だろう?胸がワクワクするな
欠伸をしながら魔力の問題について考える、と言っても解決方法は複数思いついている、今の問題は眠気と疲労感だ。今朝使った魔法がまだ回復しない…眠いぞ
壁に寄りかかり眠気を振り払おうと目を閉じると「だいちねむいのか?」その声の主を見ると少女だった…そう言えば、私は大地と言う名だったな
「何少し疲れただけだ。」少女を観察する…ショートカットの髪型で、活発的な印象をもつ将来は可愛いいと言うより凛々しい女性になるだろう
その隣には男の子がいる。そっちも観察したが髪型は短めにしており、目つきが鋭い将来は怖い印象を受けるだろう
少女は「つかれた?びょうき?かぜ?だいじょうぶか?」心配しているようだ「まおは、だいちがすきなのか?しんぱいしすぎだぞ」男の子がちゃかすように少女に言う…まおか
まおは「ちがう!しんぱいするのはとうぜんだ、おさななじみだからな!」と胸を張りながら言い放つ。はぁと溜め息出しながら遠くから黄色の物体が近づいてくる
あれがバスと言う物か?あの棒より大きな音を出している。私達の前に止まると保育士が降りて来て「おはようございます、お母さんお子様をお預かりします」母親は、頭を下げ「よろしくお願いします、真緒、新一、大地お迎えが来たよ~」これは興味深い
ミス…大地はそんな言葉よりバスが気になって仕方がない、どういう構造なんだ?魔力無しのようだが…分解したいがそんな事出来ないな…他にも手で叩き空同音などで。できる限り調べる。
それに気づいた保育士は「大地くん危ないでしょ!」と大地を抱えてバスに入れた、大地は「それはすまないが、このバスの構造が知りた…(これは、子供の考え方では無いな)…どうやって動くのだ?」
「えっと…よ妖精さんが引っ張ってくれてるのよ」適当に大地を座らせてバスは出発した…妖精?魔術が一般的に広まっているのか?…違うな、多分子供では理解できないから適当に言ったのだろう。妖精なら私が気づかない訳がない、ともかく眠気がまだ引かないな
大地は目を瞑り眠った…