I×list
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僕は、変に正義感を持った偽善者だ。
世の中の曲がったことが許せない……とまでは行かないが、身近な、目や耳の届く範囲のことは正したいと思っていた。
同時に、それの副産物のようなもので情報集めも好きだった。
あからさまな表現をすると、他人の会話に聞き耳を立てる癖が付いている。
身近にある間違いを正そうと活発に動いていた頃もあったが、現実に直面した時からそれは積極的な行動に結びつかなくなった。
人と関わることを、避けるようになった。
もう目立つことはすまいと心に決めても無意識に耳は周囲の言葉を拾い、脳はそれを整理して、何が起こってどうすればその間違いを正せるかということを考えてしまう。
だから、家の近くで起こった不審火の犯人を見つけて交番に怪文書よろしく匿名で証拠を送りつけたりするくらいのことはした。
それをする程度の正義感は、まだ持ち合わせてしまっていた。
それでいつものように周りの言葉を拾っていたらあることを知ってしまった。
僕はそれを、聞かなかったこと──知らなかったことにはできなかった。
だから、どうにかしてそれを──隠されているものを暴こうと試みた。
まずは情報を集めた。
どんな些細なことが繋がるかわからないから、詳細を知っていそうな人物と、交友関係を持つ生徒やその友人の言葉にも積極的に耳を傾けた。
そうして集まった情報を繋ぎ合わせ、複数の言葉を照らし合わせて辻褄合わせもした。
これで、僕が片鱗を耳にし、詳細を知ろうとした出来事の全容が明らかになった。
──さて、これからどうしようか。
明るみに出したところで誰も得をしない。
あえて言うならば、僕に達成感があるだけだ。
こうしてデータ上に全容を纏めてバックアップもとってみたはいいものの、この先はない。
明日からも、今までどおりに日々を過ごすだけだ。
とりあえず、今までに集めたこのメモはもう必要がないから、明日処分してしまおう。
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