一人増えてる⁉︎
吉田が帰ったので俺と清一、原田さんが生徒会室前に取り残された。
そもそも原田さんは何故戻って来たんだ?
俺は清一に聞かれたからお金を盗まれた経緯を話してやった。
「なあ正信よ。一つ気になる事があるのだが、聞いていいかい?」
清一が言う。
「ああ、なんだ?」
「あの時散らばったお金の枚数は何枚だったかわかるかい?」
「そんなの数えてるはずがないだろ。30枚じゃないのか?」
「原田さん。あの時散らばったお金の枚数は30枚で間違いなかったですか?」
「はい、坊ちゃん。確かにあの時30枚が芝生の上に散らばりました」
どうして、原田さんは散らばった枚数を覚えているんだ。だがそれは言うまい。
どうせ聞いてもこの程度出来て当然です。とでも言うに決まってる。
「それのどこが気になったんだよ?」
「いや、まだこの段階では何もおかしくはない。ちなみに正信の分のお金はあの中に入っているのかい?」
「いや、入っていない。自分の分を入れる前に盗まれたからな」
「それならあの時お金が30枚あったのはおかしくはないかい。30枚という枚数は君の分を含めて30枚であって、本来ならあの時29枚じゃないといけなかったんじゃないか?」
俺は言われて気がついた。確かにあの時散らばった枚数が30枚というのはおかしい。
「それは、原田さんが見間違えたんじゃないか?」
「私はあの程度の事を見間違えたりはしません」
堂々と胸を張って言ってきた。
そこまで言うのなら本当なのだろう。
だとしたらおかしい。一枚増えている。
「一枚は遠藤本人のお金じゃないのか?」
「ああ、確かにその可能性も無いことはない。だが、そうじゃない可能性もあるという事だ」
「そうじゃなかったらつまりどういう事だ?」
「それは僕にもまだわからない」
清一は手を横に広げて首を降った。
三人は考え込んだ。すると突然清一が笑い始めた。
「はっはっは!まったくわからない。とりあえず一枚多い分が遠藤氏のものではないと仮定して話を進めていこう」
「まず、なぜ遠藤氏は一枚多く持っていたのか」
そう言うと清一は俺を指差した。
「いや、わからない」
「ああ、この段階ではまだわからない。次だ、これは計画された犯行なのか」
また聞いてくる。
「俺がタバコの煙をたまたま見て注意しに行った訳だから茶髪コンビの突発的な犯行なんじゃないか?」
「ふむ、そうだな。だがそもそもなぜその茶髪コンビは生徒会にバレるような場所でタバコを吸っていたんだい?」
「それは…。一年生はまだ入学して二ヶ月しかたっていないから。俺たちに気づかれると思わなかったんじゃないか?」
「それも考えられるね。吉田氏は自分の後ろを茶髪コンビが通り抜けて行ったと言ったが、君は茶髪コンビがトイレを出て右に行ったのを見たのかい?」
「いや、すごいスピードで逃げて行ったし意識もしていなかったからどっちに逃げたかまではわからないな」
「なるほどね。という事は吉田氏が嘘をついている可能性もあるという事だ」
「いや、だけど吉田さんは盗まれたとわかった後、すぐに俺がボディチェックしたんだぞ。その時にお金は持っていなかった」
「私も先ほど吉田さんを見ましたが確かに妙な膨らみも無く、何も持っていないようでしたよ」
なぜ、そんな所までこの人は見ているんだ。もしかしてそっちの気があるんじゃないか?
「という事は吉田さんが盗んだというのは考えにくいという訳だね」
「そう考えるのが妥当だろうな」
清一は顎に手を当ててしばらく考えこむ。
一体こいつは何をそんなに考えてるんだ?
一枚多いのは遠藤がもともと持っていたと考えれば全て辻褄が合うじゃないか。
「一階と三階にいた人達に僕が直接話を聞きに行こう」
清一が突然言い出した。
俺はこいつが何を考えてるのかさっぱりわからない。