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このままでは退学だ

吉田は一棟と二棟を結ぶ渡り廊下にいた。女子生徒二人に話を聞いている所だった。


俺たちは吉田が話し終わるのを後ろの方で待つことにした。


すると女子生徒が後ろにいた俺たちに気がついたのか、化け物でも見る様な顔でこっちを見て来る。


さっきトイレでの怒鳴り声を聞かれたのだ仕方ない。


と、思っていたがどうも視線の先が俺じゃない。


女子生徒の視線に気がついたのか吉田が後ろを振り返る。その顔が驚きの表情に変わる。


俺は視線が隣にそそがれている事に気づく。


隣を見るとパーティグッズなどで使う馬の被り物をかぶっている長身の男が立っていた。


俺は被り物をひっぺがすと窓を開けて放り投げた。


話を聴き終わった吉田が戻ってきた。女子生徒達は帰った様だ。


俺は中庭で起きた出来事を吉田に話した。


馬のくだりを信じてもらえるか自信がなかったが、さっきの被り物を見たせいか案外すんなり受け入れたようだ。


犯人はわかったのだが、逃走してしまった。正直もう聞く意味も無いのだが一応聞いておこう。


「それで、さっきの女子生徒は何といっていたんでしょうか?」


聞いたのは俺ではない隣の馬野郎だ。


なんでこいつが聞くんだ。


吉田も清一が聞いてきた事に対して少し戸惑ったが話し始めた。


「うん、どうやら渡り廊下を通った人はいないみたい。階段を調べて見たんだけど一階の階段近くに橋下先生と男子学生が話していたんだ。二人に聞いてみたらここも誰も通ってないらしい」


橋下先生とは社会科の男の先生だ。


「次に三階を調べてみたら、美術部がいたんだ。美術部に聞いてみたらこっちにも誰も来てないらしい」


生徒会室近くの階段を上がると美術室がある。


どうやら、吉田がいた廊下以外は誰も通っていないらしい。


まあ犯人はわかったんだ、今更聞く必要もなかったのだが。


「まあ今更聞く必要もなかったんですけどね」


この馬男。俺の心が読めるのか。


吉田が聞く。


「それで、遠藤君はどうするんだい?学校のお金を盗んだとなったら最低でも退学、下手をすれば警察沙汰なんじゃない?」


その通りだ。生徒会室にあるお金は学校のお金扱いになる。そのお金を盗んだとあっては退学はまぬがれないだろう。それが、あって俺は遠藤に先生には言わないと言ったのだ。


あの時お金は取り返していたのでそこまで非情にはなれなかった。


だが、今あいつは金を持って逃げ出した。その事は風紀委員に言わないといけないだろうし、風紀委員に言えば先生に伝わるのは時間の問題だろう。


助けたいわけではないが捕まえないとあいつは退学になってしまう。


俺の表情も自然と険しくなる。


そんな俺の気持ちを察したのか吉田が。


「気持ちはわかるよ。でもいずれは先生にも知られてしまう。いつ言っても同じなら今のうちに先生に言っておいた方がいいんじゃない?」


確かにそうだ、どのみちバレる事になる。今言うに越したことはないのだ。


「明日まで待てないのかい?」


清一が聞いてきた。


「明日の授業が終わった後集めたお金で何を買うかの会議をする予定だ。もし会議が早く終わったら。そのまま買い物に行く予定なんだが、そうなったらアウトだな。どのみち明後日には絶対買いに行く。だから引き伸ばせてもリミットは明後日までだ」


「会議を無理に引き延ばすのも難しいだろうしね。明日と明後日の間に遠藤氏が学校に来る事を願うしかないようだね」


清一の言う通りだ。遠藤の為にわざわざ三万円を貸してくれるような人もいないだろうし。


吉田が残念そうな顔で言う。


「遠藤君が学校に来てくれるといいんだけどね。二人とも今日はもう帰ろう。今僕達に出来ることはないよ」


俺は同意した。


「そうですね。今日の所はもう帰りましょう。俺は生徒会室の戸締りをして帰ります」


「僕は正信と共に帰ろうと思います」


「わかった。じゃあ二人とも気をつけて帰るんだよ」


吉田は振り返り階段に向かって歩きだした。すると吉田が、


「うわっ!」と声を上げた。


正面から筋肉質の男が歩いて来たのだ。


原田さんだ。


馬を届けて戻って来るのが速すぎやしないか?


「やあ、原田さん。もう、馬を届けてくれたんだね。どうもありがとう!」


「いやいや、坊ちゃんの指示ですから。これくらい当然の事です」


どんな手品を使えばこんなに速く届けて戻って来る事が出来るんだ!


吉田はこの筋肉質の男が清一の知り合いだとわかり安心した表情をしている。


「それじゃあ僕はこれで」


吉田は帰って行った。

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