トラブルは風紀委員相談科まで
俺は小説仕立てに書かれた報告書を読み終えた。
隣りの同級生で生徒会書記の相羽桜〈あいば さくら〉が、どうよ。といった顔で俺を見ている。
俺は次の日一連の出来事を杏子に報告した。
杏子は俺に今回の出来事の報告書を書くよう指示を出したのだが、隣りで話を聞いていた相羽が何故か自分が書くと言い出したのだ。
そして、出来上がったのが小説仕立ての報告書だ。
「どうよ古村君、なかなか話し通り忠実に書けてるでしょー」
相羽はショートカットの、髪を揺らしながら言う。
「特に、読者に話しかける所なんか奇抜でいいと思わない?」
相羽は小説を書くのに最近はまっているらしく俺の話を聞いて、これは小説に出来ると思い自分が報告書を書くと言い出したのだ。
「確かによく書けていると思うが、原稿用紙の報告書なんか聞いた事もないんだが」
こんなもの杏子に見せたら間違いなく書き直すよう言われるだろう。
「細かい事は気にしない気にしない!さ、杏子に出しに行こう!」
相羽は意気揚々と杏子に小説報告書を出しに行った。慌てて俺も着いて行く。
杏子は七夕祭りの準備の進み具合を把握するため文化部の部室を回っている。
ちょうど音楽室から出て来た杏子を見かけた相羽は呼び止め杏子に報告書を見せた。
俺は反応を伺った。
杏子がニッコリ笑って俺たちを見る。
「もちろん、やり直し」
それはそうだ、相羽はうなだれる。
「でも、割と面白く書けてるみたいだからこれも一緒に残しておいて構わないわよ。でもちゃんとした報告書は別に書くように」
杏子は俺を見ながら言った。
相羽は褒めらたのが嬉しかったのか、うなだれていた頭を上げ笑顔に戻っている。
結局俺が書くのか。
俺と相羽は振り返り、生徒会室に向かって歩き出した。
正信と相羽が生徒会室に向かっている途中。音楽室から大和が出て来た。
「な、俺が言った通りなんとかなっただろ?」
杏子は大和に向かって言う。
「あの日、吉田さんが犯人だって大和さんは知っていたんですか?」
大和はニヤッと笑う。
「まあそんな事はどうでもいいだろ」
杏子は心の中でこの人は知っていたんだな、と確信した。
全く、この人の頭のキレには驚かされてばかりだ。『ジョーカー』というあだ名がピッタリだ。
ボサボサの髪をした男を見ながら思う。
「さて、これならあいつら二人にお前が考えていたことを任せてもいいんじゃないか?」
杏子が考えていたのは、生徒に相談されたトラブルを生徒会が解決の手助けをするシステムだ。
生徒会は先生ではないし普通の生徒でもないちょうど中間の立場だ。
だから、上にも下にも顔が効く。
生徒会なら生徒も先生に言えないような事を相談しやすいだろう。
「風紀委員相談科ねぇ」
大和が、言う。
「最初のメンバーは正信と家倉君の二人にしようと思います。一般生徒をメンバーに入れていた方が生徒も相談に来やすいでしょうし」
「家倉が一般生徒ね」
大和が笑う。
「まあそこは置いておきましょう」
杏子は苦い顔になる。
この時自分の後ろで面倒な役を押し付けられようとしていることに。廊下を歩いている正信は全く気がついていなかった。
本格的に暑い夏がもうじきやってくる。
終わり。
人生で初めて小説を書きました。
中々難しいですね(^^;;
言葉がおかしい所や納得がいかない所もあったでしょうが、そこはどうか暖かい目で見て下さい( ̄∇ ̄*)ゞ
次の作品をどうするかは現在考え中です。
最後になりますが、「消えた30人の野口さんを追え!」を最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました!
(この後書きを書いた時は続編がありませんでしたが、現在はこの物語の続編に当たる「殺人花が出て行った⁉︎」を執筆しました。この作品を気に入った方はぜひそちらの方も読んで見て下さい)




