さてやるか!
俺は清一と一緒に家への帰り道を歩いていた。
「遠藤氏や茶髪コンビの処分はどうなるんだい?」
清一が聞いてきた。
「金を盗んで無いにしてもあいつらにはひったくりの件がある。とりあえず今日の出来事と一緒に明日杏子に話さなきゃいけないだろうな。その後どうなるかは正直わからない」
個人的な思いは今すぐにでも遠藤達をぶん殴ってやりたいのだが、立場上そんな事は出来ない。
なんとも歯がゆい思いである。
「それよりお前さっきから何食べてんだ?」
清一はポケットに手を突っ込んでは口に持って行きを繰り返している。
「ああ、これかい?グミだよ。正信も食べるかい?」
袋にも入ってないむき身のグミが何でポケットから出て来るんだよ!
お前のポケットは四次元ポケットか!
俺は当然断った。
「なあ正信。実は不思議な事があったんだ」
清一は四次元ポケットから出てくるグミを食べながら言った。
「なんだ?」
「僕は吉田氏と対決する前から、自分の考えに決定的な証拠が無いことはわかっていたんだ」
清一は吉田にそこをつかれて一度は負けそうになった。
「決定的な証拠となるのはやはり遠藤氏だ。だが彼がどこにいるのかはわからなかったんだよ」
「でも、お前は原田さんにゲームセンター七夕に行くよう指示したんだろ?」
「ああその通りだ。だが、遠藤氏がゲームセンター七夕にいると突き止めたのは僕の力じゃない。タレコミが入って来たんだ」
「はあ?一体誰がそんな事するんだ?」
「わからない、その人は突然僕のスマートフォンに電話をかけてきて、遠藤氏がゲームセンター七夕でしょっちゅう仲間といるのを色んな人が目撃した。と教えてくれたんだ」
「誰なんだそれは?」
「僕も聞いたんだよ。あなたは誰ですかって。すると電話の相手は『そうだな〜。皆からはよく道化師てあだ名で呼ばれるな〜』て言ったんだ。一体誰だったんだろうね」
おいおいそれってもしかして…
あの人は俺が事件の内容を説明しただけで吉田が犯人じゃないかと目星をつけていたのか。
そして、お金を探しているうちに机の中に書いてあった文章を読んだ。
あの文章を見れば6時以降も生徒会室を使用する事がわかる。
さらに、清一が考えている事を先読みし、決定的な証拠が足りないことがわかった。だから、清一に電話でヒントを与えたんだ。
なんて人だ。こんな近くに化け物が潜んでいたとは。
俺はあの人のあまりの頭のキレに背筋がゾッとした。
しばらく歩いていると俺は自然と溝に目をやっていた。
横を見ると清一も同じく歩きながらずっと溝を見ている。
俺は声をかけた。
「なあ、原田さんはまだ遠藤達を捕まえたままなのか?」
「ああそうかもしれないね、もう必要ないから逃がすよう原田さんに言うのを忘れていたよ」
「いや、むしろ好都合なんじゃないか?」
俺はニヤリとして言った。
すると、言いたいことを理解したのか清一もニヤリと笑う。
「ああ、好都合だ」
そう言うと清一は原田さんに電話をかけた。茶髪コンビがどこでひったくりをしたか聞くためだ。
さて、見つかるまでは晩飯抜きだな。
俺たちはスコップを取りに学校へと引き返し始めた。
終わり。