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変人貴族の推理

「吉田さん、どうして…」


俺は言葉を失った。


「古村くんと家倉くんじゃないか。どうしてここにいるんだい?」


吉田は自然な口調で聞いてくる。


すると清一が椅子に座ったまま言う。


「僕たちはあなたがここにやってくるのを待っていたんですよ」


吉田は何を言っているのかわからないと言った素振りで言った。


「僕はたまたまあの文を見つけたからここに来たんだよ」


あの文?なんの事だ?俺は清一に尋ねた。


「私は事の真相を知っている。バラされたくなければ今日の夕方6時に生徒会室まで来い。という内容ですね」


「そう、その文をたまたま見つけたから僕はここに来たんだ」


吉田が言った。


すると清一は大きく笑う。


「吉田氏。あの文をたまたま見つけたというのは少し無理がありませんか?」


吉田はかすかに険しい顔をする。


どういう事だ?


「正信。君にはまだ僕の考えを話していないから今この場で説明しよう」


そう言うと清一は立ち上がり吉田の方を向いたまま両手をポケットに突っ込んで話し始めた。


「まず、吉田氏はあらかじめ指定の時間に生徒会室前のトイレでタバコを吸うように茶髪コンビを仕向けたんだ。その指定の時間とは?」


そう言うと清一は俺の方を向き俺を指差した。


「6時?」


「そう、恐らく吉田氏は茶髪コンビに6時にタバコを生徒会室前のトイレで吸うように指示を出していたんだ」


吉田はさっきと同じようにかすかに険しい表情をしたまま清一を黙って見ている。


「次に吉田氏は6時少し前ごろにお金を届けに来る。この時重要なのは自分の体でトイレの窓から出て来るタバコの煙を隠す事だ。だから吉田氏は生徒会室の扉の前に立ち、君がすすめた椅子にも座らなかったんだ」


なるほど、だからあの時疲れていたのに椅子に座らなかったのか。


「そして、君に千円を渡した後封筒に札束が入っているのを確認して生徒会室の扉の前から離れたんだ。その後煙を見た君がトイレに行くのを確認したのち生徒会室に入り札束を封筒から抜きとった」


俺は疑問に思った事を口にした。


「ちょっと待ってくれ。俺が札束を金庫の中に入れてから行くとは思わなかったのか?それに、戻って来た時に身体検査をしたが札束は出て来なかったぞ」


「恐らく吉田氏は夕方は封筒を外に出したまま金庫に鍵をかけるという君の癖を他の風紀委員を通じて知っていたんだよ。あの時いちいち8個もあるナンバー式の鍵を開けて、封筒を入れてまた締め直すなんて事をしていたらタバコを吸っている人に逃げられてしまうかもしれないからね。ましていつから吸い始めたのかもわかってないんだ今すぐ逃げると考えてもおかしくない」


その通りだ、現に俺はあの時そう思いお金を金庫には入れなかった。


「次に身体検査の件だが、実は君は根本的に間違っていたんだ」


「どういう事だ?」


清一はニヤッと笑う。


「お金は盗まれたんじゃない。正確に言うと生徒会室横の教室にある机の引き出しに入れただけだったんだ。それならすぐに出来るから君がトイレから戻って来た時に何もやってない素振りをするのは簡単だ」


あの時お金は隣の部屋の机の中に入っていたのか。


どうりで身体検査をしても出てこないわけだ。


「君は空の封筒を見て盗まれたと勘違いした、それはなぜか思い返してみなよ。吉田氏はそれより前の会話で君に『盗まれないように気をつけて』と言った。それによって封筒の中身が無くなる=盗まれた。と思いやすくされていたんだ」


なるほど。あの会話も作戦の一つだったのか。


「盗まれたと思った君は吉田氏に不審な人物を見なかったか尋ねる。すると君は茶髪コンビが中庭に行ったと聞かされる。中庭に行った君は次の用意されたゲストと出会う」


「遠藤か」


「そう、遠藤氏も吉田氏から事前に呼び出しを受けていたのだろう。理由はそうだな、指定されたお金の残りを渡すから6時に中庭に来てくれ。て所かな?」


吉田の表情に変化はない。


「君にお金を渡す少し前。千円札30枚を事前に遠藤氏に渡していたんだ。吉田氏は三万円以上の金額を持って来るよう遠藤氏から脅されていたんだろう。残りのお金は中庭で渡すと約束していた。だが、やって来たのは」


「俺だったわけか」


「そう、当然遠藤氏にどこでお金を手に入れたか聞いても言うわけがない。だってもともと吉田氏を脅して手に入れたお金だから生徒会の君に言えるわけがない」


俺は納得した。


「それにより遠藤が生徒会室からお金を盗ったと俺が思う事で吉田さんの目的が達成されたわけだ」


「だけど、予想外の展開になった。君が案外優しい人間だったんだ」


清一は俺に笑顔で言った。


「吉田氏は正信がこの事をすぐ先生に報告すると思ったんだけど、君はすぐには言わなかった。それどころか言うべきか悩んでいた」


あの女王生徒会長のもとに集まった生徒会ならすぐに報告すると吉田は思ったのだろう。


「さらに、明後日までに遠藤氏が学校に来て三万円を返せば。先生に報告まではしないという風な話の流れになっている」


「だが、あの時吉田氏も冷静だった。ようは明後日までに遠藤氏を学校に来させなければいい」


「俺たちと別れたあと、吉田さんは遠藤に携帯で連絡したわけだな」


「その通り。今生徒会からマークされているからほとぼりが覚めるまで学校に来ない方がいい。そんな感じの事を言ったのだろう。遠藤氏はまさか、学校のお金を盗んだ泥棒にされているとは思ってなかっただろうがね」


話し終わると清一は吉田の方に振り返った。


「これが僕の考えたあの日の流れです。当たっているでしょうか?」


清一がそう言うと吉田はうっすらと笑みを浮かべた。

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