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最悪な午前中

俺は大和さんに言われた通り清一が言った事に従った。


まず、同級生の佐藤に話を聞いた。


自分で聞きたくない質問だが仕方が無い。


「なあ佐藤。俺最近『闇金の正信』て、あだ名で言われてるんだけどどうしてか知ってるか?」


俺は佐藤とはあまり話したことがない。


勉強熱心で暗いというイメージを持っているからだ。


「いや、知らなかったよ。僕は勉強で忙しいからね。それより古村君はそんなあだ名で呼ばれていたのかい。」


佐藤が吹き出しながら言う。


若干傷つく。


誤魔化そうと思ったがかなり、しつこく聞いてきたので仕方なく理由を答えた。


どうやらツボに入ったらしくゲラゲラと笑い始めた。


「なるほどね、その光景を見たらそのあだ名がついてしまうかもしれないね」


佐藤よ、お前と会話するのはこれで最初で最後だろう。


俺はゲラゲラと笑う佐藤の姿を見て心に傷を負った。


その後午前中の授業の合間などを使って。残りの美術部員に当たった。


皆、昨日の美術部員と同様で作品作りで頭がいっぱいなので噂は全く知らないらしい。


美術部員も佐藤と同じく俺が『闇金の正信』と呼ばれていると言うと、ゲラゲラと笑いはしなかったが、笑うのを我慢しているようだ。


赤くなった顔を見ればわかる。


この反応も地味に傷つくんだけど。


皆の反応で傷ついた俺は亡霊のような顔で清一と昼休み中庭のテーブルで昼食を共にした。


「どうしたんだい。屍のような顔をして」


屍まで言うか!


「まあいろいろあってな」


俺はため息をつく。


もういちいち説明するのも面倒だ。


「お前に言われた通り佐藤と美術部員に話は聞いておいたぞ。皆知らなかったようだ」


「そうかそれは都合がいい。僕も渡り廊下にいた女子生徒に話を聞いておいたんだ。どうやら彼女達も知らなかったみたいだ。彼女らは花道部で同じく今は忙しいらしい。意外に君の噂は広まっていないんだね」


確かにそれは思った。


今忙しい文化部には広まりにくかったのだろう。


「よく女子生徒の名前がわかったな」


「ああ、実は僕があの時被っていた馬の被り物に小型のカメラを仕込んでいたんだ。それに写っていた映像を見て探し出したのさ」


こいつはいつから盗撮を趣味にしたんだ。


「なんで馬にカメラを取り付けてたんだよ」


「以前パラグライダーをやった時、飛んでいる映像を残したかったから原田さんに頼んで取り付けてもらっていたのさ」


パラグライダー中にあれを被ってるのか!


そんな姿を誰かに見られたらインターネットに乗せられるんじゃないか?


そんな俺の心配をよそに清一はニコニコしている。


「それよりどうして俺のあだ名を知っているか調べなきゃいけなかったんだよ」


「ふふふ、それはまだ秘密だよ」


やはり教えない。こうなったら自然に言い出すのを待つしかないか。


「それよりお前昼飯はどうするんだ。食べないのか?」


俺は食堂で注文した唐揚げ定食をテーブルの上に置いているが、清一は弁当も何も持ってきていない。


「いや、ちゃんと食べるさ」


そう言うと清一は手を二回パンパンと叩いた。


食堂は三棟の一階。中庭に面した場所にある。その食堂からかなりガタイのいい食堂のおばちゃんが、高級料理店などでよく見かける半円形のふたのついた皿を持って来る。


まさか…


食堂のおばちゃんが清一の横にやってきた。いや、皆さんの予想通り食堂のおばちゃんの服装をした原田さんだ。


原田さんは皿とナイフ、フォークを清一側のテーブルに置いた。


原田さんは皿のふたを開ける。


「坊ちゃん。本日の前菜はフォアグラ•ドゥ•カナール•オ•トリュフでございます。メインはオマール………」


俺は雑音を消し、唐揚げ定食を食べはじめた。


おばちゃん。唐揚げ定食今日も美味しいよ。





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