道化師は悟った (6月10日)
6月10日
俺は次の日。朝の朝礼が終わるとすぐに三年生の教室がある一棟三階に向かった。
遠藤が学校に来ているか確認するためだ。
ちょうど遠藤を探している途中、大和さんを見かけたので学校に来ているか訪ねてみた。
「ああ、遠藤ならインフルエンザで一週間休みらしいぞ。まあこの季節にインフルエンザなんか聞いたこともないから仮病だろうな」
ニヤニヤしながら言う。
なんだと!
一週間休みということはリミットに完全に間に合わないじゃねえか。
どうしてこのタイミングで仮病で休むんだ。少し考えれば退学になる危険性があることぐらいわかるだろ。
どんだけ馬鹿なんだ!
俺は眉間に皺を寄せる。
そんな俺の表情を見て大和さんが心配そうな顔で声をかけた。
「どうしたんだ深刻な顔して。遠藤がどうかしたのか?」
俺は大和さんなら大丈夫だろうと思い。昨日の出来事の全てを話した。
大和さんはしばらく手を顎に当てて考えていたが、しばらくするとニヤッと笑って呟いた。
「なるほどね、家倉の奴はこう考えたわけか」
「え?」
俺は聞き返した。
すると、大和さんは俺の肩にポンと手を置いて言った。
「家倉の予想が当たっていたら全て丸く収まるかもしれん。まあとりあえずはあいつの指示通りに動いてみろ」
そう笑顔で言うと大和さんは歩いてどこかに行ってしまった。
大和さんは何がわかったんだろう。
俺は当事者なのに置いて行かれた気がした。