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さっぱり意味がわからない

とりあえず。一階の橋下先生と男子学生に話を聞きに行く事にした。


本当は渡り廊下の女子学生二人にも話を聞きたかったらしいのだが。もうどこかに行ってしまった。


一階には橋下先生しかおらず男子学生は帰ったようだ。


流石に原田さんが先生に会うのはまずいので原田さんには生徒会室で留守番をしてもらった。


「おや古村君と家倉君じゃないか。どうしたんだい?」


橋下先生はメガネをかけた優しそうな先生で手には馬の被り物を持っていた。


わかりきってはいたが一応聞いてみた。


「あのー。先生、その馬の被り物はどうされたんですか?」


橋下先生は手に持った被り物を上げた。


「ああこれかい。さっきふと中庭に出たんだけど、気のてっぺんに刺さっていたんだ。馬の顔がじっと私を見ていたから。心臓が止まるかと思ったよ。一体誰がこんなイタズラをしたんだろうね?」


相当驚いたのだろう橋下先生にしては珍しく若干怒っている。


ははは、誰がそんな事したんでしょうねー。


隣を見ると清一が旧友に再開したような目で被り物を見ている。今にも自分のだと言い出しそうだ。


俺は先手を打つことにした。


「その被り物は生徒会で責任持って処分しますので任せてください」


「そうかい?じゃあよろしく頼むよ」


先生は被り物を俺に渡した。受け取った俺はすぐに清一に手渡して耳元でささやく。


「被るなよ」


俺がそう言うと。清一はウインクしてきた。同意の印だろう。


清一は手元の被り物をキラキラした目でずっと見ているばかりで話始めない。


仕方なく俺が肘で清一の脇腹をつつく。


すると思い出したかのように話し始めた。


「あっ、先生にお聞きしたいことがあるんですが。二階から降りてきた人はいなかったんですよね?」


「そうだよ、さっきも同じことを聞かれたね。何かあったのかい?」


その質問については誤魔化す。


「あと一つ聞きたいのですが、先生と話をしていた生徒は誰ですか?」


「ああ、二年の佐藤健介〈さとう けんすけ〉君だよ。授業の事で聞きたいことがあったらしくてね」


「そうですか、わかりました。おっと、あと一つ重要な事を聞きそびれていました。」


「なんだい?」


「ここにいる彼、古村君は近頃『闇金の正信』と言われています。何故だかわかりますか?」


こいつ、俺がそのあだ名で呼ばれている事を知っていたのか!


「いや、知らないな。僕は授業の時以外は職員室からほとんど出ないからね。古村君そんな風に呼ばれていたのかい?」


俺は苦笑いで返す。そのあと清一を睨みつける。


「ありがとうございます。聞きたいことはそれだけです。」


清一は笑顔でそう言うと。そそくさと階段を登って行った。


え?これだけ?


俺は橋下先生に礼を言うと清一を追いかけた。


三階の美術室には一人だけしか部員がいなかった。 残りの部員はもう帰ったらしい。


清一は先程と同じように俺が何故『闇金の正信』と呼ばれているのかわかるかと質問した。


どうやらこの部員も知らないらしい。七夕祭りが近づいて来ている今、作品のことで頭がいっぱいで学校内の噂なんかどうでもいいらしい。


清一はまた礼を言うと、今度は美術部員の名簿をもらい美術室を後にした。


ますます何がしたいのかわからないまま生徒会室に戻ってきた。


生徒会室に戻ると部屋のあまりの綺麗さに驚いた。


中で原田さんが掃除をしていたのだ。


ホコリの一つも落ちてなく。あまりの綺麗さに全て新品に取り替えたようだ。


「おかえりなさい坊ちゃん、古村さん。ただ待ってるのも暇なので掃除をさせてもらいました。古村さん迷惑だったでしょうか?」


俺はちぎれそうになるほど首を横に振った。


「とんでもない!わざわざありがとうございます!」


短時間でここまでやるとは、本当にこの人は何者なんだ?


俺と清一、原田さんは適当な椅子に座る。


「なあ、清一。いったい何がしたかったんだ?」


こいつの行動の意味が全くわからない。


俺は美術部員の名簿を見る。


全員で6人だ。部員としては少ない方だろう。


「明日、さっき話を聞いた美術部員以外の部員に君が『闇金の正信』と呼ばれている理由を知っているか聞いておいてくれないかい?おっと忘れるところだった。橋下先生と話をしていた佐藤健介氏にも同じように聞いておいてくれないか?」


なぜ、俺が自分の傷に塩を塗るような事をしなくてはいけないのだ、当然俺は理由を聞いた。


「まだ、確信があるわけではないから言いたくは無いんだよ。まあ、もしかしたら君を助けることができるかもしれないから。我慢して調べておいてくれたまえ」


そう言うと清一は俺に向かってウインクした。


腹が立つがウインクもさまになっている。


これで変人じゃなかったら女子にもてもてだったろうに。


「さて、今日はもう帰ろうか」


清一はそう言うと帰る準備を始めた。


だが、帰る間際になって何やら原田さんに耳打ちをしている。


原田さんは頷き了承してくれたようだ。


何を話したんだ?


「さっ帰ろうか」


俺を含めた三人は生徒会室を後にした。


清一は馬の被り物を大事そうにかかえている。


結局俺は何もわからずじまいだった。

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