チャプター66 再起
四本の鎖をつなげたシロは中央に陣取り、仲間が送った死力をコピーし続ける。彼にはずっと疑問に思っていたことがあった。
それは死力という概念の中に個体差があるのかどうかという単純なものだった。結論的には個体差はあった。それは桐彦の死力を感じたときにすぐさまわかっていた。だがそれは、自分の死力と桐彦の死力を比較し違うというもので、あくまでも感覚的なものでしかなかった。
シロは桐彦の死力をコピーする上で彼の力を極限まで解析しなければならなず、それが意味するのは死力を極限まで分解しなければならないということ。他者の死力を分解しようと自分の死力を使ってみても互いの死力が消滅するだけであるということは、桐彦との戦いでわかっていた。
その問題点は破壊の遺産が簡単に解消したのだった。もっとも簡便でコピーすることのできる形になった死力を神の遺産で増産していく、そして合成させる。
神の遺産によって合成された死力は死神たちに無限の力を感じさせ、今までの劣勢が嘘のように死神たちを奮起させる。
「この力はちょっと反則じゃないっすかね?シロさん」
「じゃあ、お前の死力作らねぇぞ」
「やだなぁシロさん、反則上等じゃないっすか。てか、さすがにこのぐらいのハンデはあってもいいっすよ」
桐彦は発生源が違う死力が問題なく機能すること確かめる。死力が問題ないことを確認したかのように指の骨を鳴らして意気込む。
「一つ、いいっすか?」
「なんだ?正々堂々勝負したいならいつでも言ってくれ、遠慮なく死力つくるのやめるから」
「そーじゃないっすよ、体は修復してくれるんすか?」
「ああ、傷ついたらすぐさま治す」
「それはありがたいっすね…いつもはできない無茶ができそうっす」
その言葉を発した瞬間に桐彦は悪魔の元に向かっていった。
「無茶する前に勝負をつけて!!」
その言葉を聴いた望月は思わず声を荒げると、彼女もまた暴食の悪魔に立ち向かう。
「シロさんも無理しちゃ駄目だからね」
「大丈夫、無理なことはしない」
このえはその言葉を聴いて安心したようで、ほっと胸を撫で下ろす。このえもまた自らの敵を殺しに旅立つ。
「無理なことはしないさ、後は壊すだけだからな…」
そう呟いたシロは怒りに震える傲慢の悪魔を破壊するべくその場を離れた。
死神たちが先ほどまで抱いていた絶望感は消えうせ、それぞれが対峙した悪魔に向かっていく。破壊の遺産はシロの思いに答えるように力強く発光する。どれほどの悪魔が立ちはだかろうが神の遺産の前には無力に等しいことをシロも悪魔も理解していた。傲慢の悪魔はふっと怒りという感情を押し殺し、傲慢の悪魔の力が霧のようにあたりを包み込む。その霧を晴らすようにシロは大鎌で振り払った。
一度なりをひそめたルシファーの怒りは頂点に達し、その矛先を目の前にたつ死神に向ける。
「待たせたな…ルシファー…」
「いつも、いつも、いつも、いつも!!神の遺産をもつ死神はぁあああ!!」
「もう終わりだ…傲慢の悪魔」
「悪魔に使えない神の遺産を使う死神はぁぁあああああ、殺すぅうううう!!!」
「さぁ…破壊しよう…全ての存在に”死”という平等を…」




