チャプター5 死力の開放
「で…出来ない…」
そう呟きながら手を地面につけ落胆しているのはシロだった。今はレイとの訓練中であった。以前、レイが見せてくれた死力を体に纏わせるということを試みていた。時は数時間前、午前12時にさかのぼる。
「えーっと、じゃ訓練始めるよ?」
そういう零花は淡々と死力を開放するということについて説明する。
「まずイメージ的には心の中を空っぽにするのが最初だよ」
「わかったけどさ、心の中を空っぽにするって難しくない?」
「あくまでイメージ的にだから、完全に空っぽにならなくてもいいの」
「で、次は?」
「心の中を絶望で満たす、ようは過去の自分のつらい体験を完全に思い出すの」
「なんかやだなぁ…」
「あきらめなさい、死神として働くにはこの力を使えないと役立たず扱いだよ?シロさんの場合は何千年もこの世界に居続けなきゃいけないよ?」
笑って小ばかにしながら零花は何とか訓練に身が入るように仕向けてくるのがわかった。
そろそろ対人的な表情を作るのが大変になってきたシロは素直に従うことにした。
「わかったよ…じゃあ次は?」
「出す」
「それだけ?!!そこの部分、説明大事じゃない?」
「えー…っとなんとなくで出来るよ。強いて言うなら”ふざけんなっっ”って感じかな」
シロはこんな説明で納得は出来ないのは明白であった。だがツッコめばツッコむだけ疲れそうだったため、その場はスルーしてしまうことにした。
しかし、ツッコまなくても心の小声は出てしまった。
「わ…わかりづらい…」
そんなことを言えば、当然零花が黙ってはいなかった。
「死力開放は基本中の基本、できない死神なんていないんだから。ついでに言えばニュートラルの状況から開放するまでの時間が短ければ短いほど死神は強いといわれているの、ちんたらやってたら守護霊からやられちゃうんだから。速度は訓練しだいでどうにかなるけど開放できないのはかなり問題なの」
「って言ってもなぁ…」
ぶつくさ文句を言っていると地面から石を拾い、片手で空中に投げては取り、投げては取り…雰囲気的にもやるしかなかった。
シロはとりあえず落ち着いた。心の中を空っぽにするためにも雑念を取り払いたかったからである。次に絶望、これは最初に零花からあまりひどすぎるトラウマを相手にした場合、制御できないことが考えられるため3~4番目ぐらいのつらい体験を思い出すように指示を受けていた。シロが心の中に思い描いたのは孤児院にいたとき、暴力をふるっていた時期に孤児院の子供や、職員に”お前、消えろ”と言われたもろもろの記憶にした。
そして心の中でその光景を思い浮かべる。瞬間シロに何かが流れ込んでくる気がした。どす黒い何かとしか表現しようのないものであった。そのどす黒い何かは今の気持ちを侵食し、ひどく鬱的な感情に支配されてしまった。
すでにシロはどんなにひどい顔しているか鏡を見なくてもわかっていた。
もう限界だ、もういやだ、もういやだ、もういやだ、もういやだ、いやだ…
そう気持ちが完全に絶望に侵食されかけていたため、零花が言った言葉を信じ、心の中で呟くとともに、声に出して叫んだ。
「ふざけんなぁーー!!」
すると、シロの中から零花のとき見たく暗い光が光る。しかし、一瞬光っただけで纏うことまでは出来なかった。
唖然とする、シロと零花であった。
その場にはなんとも言いがたい空気だけが取り残され、妙な気恥ずかしさだけがシロに残っていた。
「失敗…しちゃったのかな」
と、ごまかしてみてもシロは恥ずかしかったのだろう。片手で頭をかいていた。
「まあ、最初は失敗しちゃってもしょうがないよ…」
フォローするほうもするほうで恥ずかしいみたいであった。
「ま、もう一回やってみるよ」
シロはそういうと何度も何度もやってみたが出来る気配がなく、もはや、やけくそであった。
が、最後まで結局死力の開放までいたらなかった。無言の空気があたりを漂う中、こちらに近づく二つの影が見えていた。
その影を見るやいなや、零花が手を振り助けを求めた。
近づいてきた影は零花の友人と見られる男と女であった。
「レイねーちゃん、何してんのこんなことで?」
そうたずねる男は背格好がシロとほぼ同じくらいで、茶髪にピアス、きわめつけにアロハシャツ、短パンで明らかにチャラかった。
「弟いたのか、レイ?」
「あ、そっかお互いまだ紹介も何もしてないもんね、この子は青葉桐彦、桐彦君がこっちに来たばっかりの頃、助けたらそう呼ぶようになったの。こっちの人は一之宮 白さん、新人さん」
そうそれぞれを紹介すると、お互いに軽い会釈と軽い挨拶を行った。
「はじめまして、一之宮 白です。まだ訓練中なんだけどよろしく」
「よろしくっす、自分は桐彦っす。この世界は21歳のときにきて、三年目に突入してます」
「あ、そうなんだ。俺は今年24歳になったとこ、年は同じだし、こっちでは先輩なんだし、敬語はいらないよ」
「わかったっす、っていってもこの喋り方がなれてるんでこのままでいくっす」
区切りがいいところで零花は女の子を紹介する。
「この子は望月みなも、桐彦と同じで来たばっかりの頃助けたらなつかれちゃった」
そう笑って紹介した女の子は身長はシロや桐彦の肩ぐらいまでしかなかったが、その身長と引き換えに胸元が相当成長した女の子であった。その胸元に目がいきそうになったため自制心を総動員して顔のほうへ視線を移動させた。そこには金髪のきれいなツインテールでまとめ上げた髪がゆらゆら揺れていた。
「はじめまして、望月です。好きによんでください」
「ああ、よろしくね、望月さん」
一通り自己紹介がすんだところで話を切り出したのは桐彦だった。
「で、二人はなにやってるんすか?」
零花はすかさず二人を呼んだ理由を話し始めた。
「それはね、シロさんの訓練してるんだけど死力の開放がまったく出来なくって…私だけじゃなく二人にもどんな感じに死力開放してるか教えてあげてほしくて」
「それならぜんぜん構わないっすよ、どうせ暇してたんで。いいだろ?みなもっち」
「かわまわない」
二人は快諾し、はじめに桐彦がおしえてくれることになった。
「じゃ、最初は俺がいきますよ~重要なのはタイミングっす。それをつかむには掛け声を使うのが一番!!」
「タイミングかぁ…」
「そうっす、ゴルフとかでもよくやるじゃないっすか?”メン!!タン!!ピーン!!”ってな感じで」
「それは麻雀だろ」
シロは冷静にツッコんだ。桐彦はちょっと恥ずかしそうに
「あれ?そうでしたっけ、ははは~」
桐彦は笑ってごまかした。ここでシロにはひとつの疑念がわいたが、あえてここでは声に出さなかった。せっかく教えてもらっているのだからそんな確証のないことで桐彦を傷つけてしまってはとシロは考えていた。
「ま、とにかくそのタイミングをつかむのにとっておきの掛け声、教えるっすよ!!」
真剣な桐彦の顔に感化されその場の雰囲気はシリアスになっていた。シロもその桐彦の顔に感化され、しっかりと学ぶ気になっていた
「それは何だ…教えてくれ!!」
「それは…」
その場に沈黙が漂う。数秒間の沈黙の後、それは突然、桐彦の声によって破られた。
「ボンッッ!!キュッッ!!ボンッッ!!」
また沈黙の数秒間の後、桐彦は熱く語り始めた。
「ちょうどいい例があそこにいるじゃないっすか。みなもっちの体を見てくださいよ。まずはじめの”ボン”これはみなもっちの胸に当たりますね、死力開放する上では心を絶望でみたすとこっす。そしてキュッ、これはみなもっちの腰周りっす、これがなければ最初にきた”ボンッッ”の効果がほぼなくなっちゃいます。”ボンッボンッボンッ”なんてただのだるまっすから。死力開放でいうとこの、一瞬の間っす。最後に”ボン”これは言わずもがな、みなもっちのおしり!!前回のキュッがあるからこそ、ここでボンッッとくると、度肝抜かれること、この上ないっす。死力開放で言うとちょうど外へ放出するところっす」
目が痛かった。自分の目が物理的にと言うわけではなく、女性陣の軽蔑を秘めた目がである。シロと桐彦に向けられた女性陣の目が突き刺さってくるかのように鋭く、シロは困っていた。ことの犯人、桐彦はまったくそんなことを気にする様子がなく、ボンッ、キュッ、ボンッについて語りまくっていた。ここでシロはつい先ほど、抱いた疑念が確信に変わったところで
「桐彦、ごめん。先に謝っておく。お前バカだろ」
シロは微笑みながらそう伝えた。
「バカってなんすか、バカって。ボンッ、キュッ、ボンッは至高であり・・・」
ボンッ、キュッ、ボンッの話を終えようとしない桐彦をみてシロは心の中で
(やっぱりバカだった。残念な子だな~)
そうしみじみ感じていると、そろそろスレンダー体系の零花から石が投げられそうだったためシロは急いで桐彦を止める必要があった。
「とりあえず、桐彦!!その掛け声で死力開放してみるよ、一緒にあわせてやってくれると助かるんだけど…」
「わかったっす。じゃやりますか」
とりあえず顔面に石が飛んでくることは避けられた。なによりも、こんな掛け声を一人でやるのがシロは恐ろしく恥ずかしかった。シロと桐彦は心を落ち着かせ声を合わせて死力開放に挑んだ。
「ボンッッ!!キュッッ!!ボンッッ!!」
桐彦は当然ながら開放することが出来ていた。赤黒い炎のように桐彦の体を包み込んでいた。一方シロはというと最後のボンッの掛け声でその光はポンッと一瞬光っただけだった。恥ずかしさを押し殺し、この掛け声でやってみたはいいが出来る気配がなく素直に桐彦から教えてもらった方法を頭から消去した。
「じゃ、次。私」
そういって手を上げ前に出てきたのは望月である。気のせいだろうか、彼女の目が痛い、そして一定範囲内に近づいてこない。
「望月さん、俺のこと避けてる?」
「変態にはこれぐらいの扱いで十分」
シロはただただショックだった。隣にいたバカが女体について熱く語っただけで周りにいた人間も変態扱いされるなんて…しかもほぼ初対面。
(桐彦のばかやろー、めちゃくちゃやりづらくなったじゃないか)
シロが心の中でそう叫ぶと同時に望月は桐彦を指差した。
「まあ、いい。どうせあっちの変態はレイ姉が処分してくれる」
冷ややかな表情が望月の顔に映し出されることでシロは寒気を感じざる終えなかった。
「顔もさることながら…言葉の内容がこえーよ…」
「じゃ、さっさとはじめる。大事なのはイメージよ」
「今度はイメージね、具体的にはどうするんだ?」
「目を閉じて。私が死力開放する時のイメージを言っていくから、その状況をイメージしてみて」
「わかった」
そういうとシロは目を閉じた。
「まず、ケーキを食べようと思って電車で10駅先の店まで買いに行く、その店には本当においしいケーキが並んでいるの。食べたいケーキを慎重に選んで買って、あと10駅も離れているからしっかりドライアイスを入れてもらってね。長い電車道をそれはそれは楽しみにして家に帰るの。家に着いたらテーブルの上にケーキをおいて紅茶を入れる」
シロはうすうす気づいていた、しかし言葉を出すことは避けていた。それは先の理由と同じだ。せっかく教えてくれるのだから確証のないことで相手を傷つけることはしてはいけないことが気がしたためである。そんなシロを知ってか知らずか望月は話を続ける。
「アールグレイの紅茶の香りが部屋中に満ち溢れて、それはもういい香りで。いざケーキを食べようと箱をあけるとデロデロに崩れたケーキがそこにはあるの…なんでって思ってると入ってるはずのドライアイスが入ってなかったの…」
ついに我慢できなくなったシロは声を荒げた。
「こんなことで絶望できるかーーーー!!」
そう声を荒げた時、死力開放が一瞬だけポンッと光ったがそれだけだった。
「だめだった…」
そう冷静に語る望月にシロはイライラを隠せなかった。
「だめってなんだよ、だめって。そんなちょっとショックだった程度の絶望で死力開放できたら苦労しないっての!!」
「いまのは、絶望するに値しない絶望で死力開放するなんて無理だーっていう絶望で死力開放するっていうのを狙ってみた」
「わかりにくいわっっ」
その後も何度か試したが結局シロは死力を纏うことは出来ず、この方法も記憶の中から消去した。
そして今に至る。
「今日はもうこの辺にして、帰ろうか」
そう提案する零花は、もはや万策尽きたかのような表情であった。その提案にはシロを含むほか二人も賛同し今日は解散することにした。零花とシロは訓練やら現世での買い物やらでいろいろ疲れていたため一日休みをとってから死力開放の訓練をすることにした。望月と桐彦は明日、明後日と仕事があるということでまた後日ゆっくり話をするという約束をして4人はその場を解散した。
宿舎に戻ったシロはひとまずシャワーを浴び、食堂で夕飯を食べていた。食べ終わった後、自分の部屋に戻ろうとしたとき、大門が前から歩いてくるのがわかった、しかし大門といや人一般と話す気分でもなかったため軽く会釈をしてその場から去ろうとしたが大門につかまった。
「一之宮、どうだ?訓練のほうは順調か?」
そう聞かれたシロは今日の訓練をあらかた説明した。すると大門はすこし考えた後、シロにアドバイスをしてきた。
「一之宮、もしかしたら死力開放の感覚がその三人とは違うんじゃないか?一度俺が言ったとおりにやってみろ」
「わかりました」
正直、シロはうんざりしていた今日の訓練はからかわれているとしか思えてならなかったからである。しかし、その感情は押し殺し、目を閉じ、素直に上司に従うことにした。大門はシロに語りかける。
「まずお前の中にある感情を一つ一つ取り除いていけ、心を空にできるのが一番だ」
そういわれたシロは余計な感情、雑念を取り払う。あらかたそれが出来た頃合を見計らって大門は再びシロに語りかける。
「そうしてお前は過去の絶望をひとつひとつ思い出す。コップに水をゆっくりと入れていくイメージでだ」
そうするとシロの中にはどす黒い何かが充満してきたレイとやったときのように鬱的な感情が心を満たしていた。本来であればここから開放するという作業に入るはずだったが大門はこれまでの三人とは違うことをイメージさせた。
「その絶望を水と思え、そしてその水はお前の心からあふれそうであふれない。表面張力でぎりぎり耐えている。しかしお前の心の容量も無限ではない、水はゆっくりと滴となりコップを伝わり落ちる。それでもあふれ出る水は止まらない滴はどんどんと大きくなりやがては心全体からあふれ出る」
言われたとおりにシロがイメージすると今までの感覚とはまた違った感覚がシロを襲っていた。不思議な感覚を体験しながら言われるがままのイメージを続けていると、大門が”もういいぞ、目を開けろ”というので、シロは内心また失敗したのだろうかと不安になっていた。だが目を開けると自分の心の中のどす黒い何かは自分の外に光となって放出していた。
「できた…のか」
「ああ、できている」
その言葉を聴いたシロは不思議な感覚を味わうと同時に死力を開放することが出来た喜びを素直に味わっていた。
「大門さん、ありがとうございます。でも何でこんな簡単に…」
「お前の場合、絶望を怒りなどで表すことをしてこなかったんじゃないかと思ってな、過去に本気で我を忘れて怒ったことなんてないだろう?他の三人は話を聞く限り、怒りを引き金に一気に放出するタイプだから感覚を教わっても出来なかったんだ」
「た、確かに」
言われてみればそうであった。シロは怒りという感情はわからないといってもいいぐらい怒りに対して鈍感であった。イライラはしているけれど本当に許されないことであるかなどは誰にも判断できないとシロが思っていたからかもしれない。シロは物事を一辺倒に見ることができないのである。どうしても自分とは正反対の立場となる人の意見を考え、そしてその意見が自分の意見と比較して正しいか判断しようとしてしまう癖があった。大抵の場合、シロは争うことが面倒で相手に譲ってしまうのであった。
「言ってしまえば、根暗なんだ、お前は。表面上どんなに愛想をよくしていても裏ではまったく違うことを考えていたりな」
その言葉にドキッとしたシロは大門の言葉をごまかすかのように今日の思い出を話し始めた。今日出会った桐彦や望月のことを思い出しながら。
「いやーでも、助かりましたよ。桐彦には”ボンッキュッボンッなんすよ、ボンッキュッボンッ”なんて恥ずかしいこと言わされたりもしたんで」
「一之宮も大変だな、まあがんばれよ。早く開放されるためにも」
「そうですね、がんばり…」
会話を続けていたらいきなりシロの纏っていた死力が揺らめき始めた。なにが起こったのかわからなかったが異常な出来事であることだけはわかった。すると突然大門だけが何かに気がついたみたいに声を張り上げ、シロに問いただした。
「おい!!一之宮、訓練したときの感覚で死力操作したのか!?」
「死力を操作することはまだやってないですって!!」
瞬間、シロの死力は巨大にそして急激に広がっていく。あふれ出していく死力を止める術を知らないシロは慌てふためくだけで何も出来なかった。大門は確信していた、死力の操作を習っていないのなら基本的には頭でイメージしたとおりに死力は反応してしまう。
「いいか、一之宮落ち着け。死力はイメージしたとおりに動く!!お前はボンッキュッボンッって言ってたなイメージしたのか?!!」
シロは返答できなかった。望月の体をイメージしながらいってしまっていたことは、シロ自体意識していなかったが大門に問い詰められ、強く意識してしまった。あふれ出した死力は拡大を続けていたがいきなり圧縮し始めた。シロの周りを埋め尽くすほどの死力はベールのように何十にもシロの体を覆っていた。
「まずいっっ!!」
そう言葉を発したのは大門であった。しかし、間に合わなかった。シロの死力は圧縮をやめ、最初に膨れ上がった死力の倍ほどの量を放出し始めたのだ。宿舎の壁が崩壊し始めるのが見えた大門はこれ以上は建物が持たなくなる可能性があっため大門はシロを気絶させるために動いた。その光景をシロは捉えていなかった、いや捉えることはできなかった。
シロが一度、まばたきをした、大門はいつの間にか死力を開放していた。そしてもう一度まばたきをすると、正面にいたはずの大門は姿を消していた。どこにいったと考える時間もなく首に衝撃がはしる。痛みが脳に届くまでにシロは意識をなくしていた。それと同時に死力の開放が収まっていた。ため息をつく、大門であった。
「はあ…これほどとは…天津が手元に置きたがるだけはあるな…普通は壊れることはないはずなんだが…」
そう独り言を呟いて周りを見渡すとシロの周辺にある壁、床、天井は今にも崩れ落ちそうなほどぼろぼろになっていた。
「修理代はこいつに請求しておくか」
再び独り言を呟いた後はシロを自室まで送り届け、天津に連絡した大門であった。
自室で目覚めたシロは何時かを知るためにスマートフォンを開き時間を見る。時間は午前0時をまわるところだった。画面を見ていると天津からメールが届いているようだったので確認すると
(一之宮君、今回のことは大目に見るけど今度宿舎壊したらもっと請求するからね)
そう文面に書いてあり、ここでシロは一連の流れをハッと思い出す。そしていやな予感がしたため借神の履歴を確認するとそこには+300年の文字が書いてあり、ひどく憂鬱になったシロはそのままベッドに横になり眠ることにした。