とある兵士の戯言
淀んだ空気。赤く染まってゆく水平線。黒煙をあげている艦隊。
大砲の音が遠くの方でひっきりなしに響いている。
ここはどこなのだろう?
「おい、貴様!そこで何をしている!さっさと行って来い!」
仲間たちが次々と飛び出していく。
「ここにきて死にたくないだと!?おのれ…非国民め!行かぬなら私がここで始末してやろうか!」
…なんでみんな爆発しちまうんだよ
仲間が死ぬ。そして敵も沢山死ぬ。
人が死ぬ。みんな死ぬ。
「はは…ふはははははは」
「何がおかしいんだ!!」
あはは…痛い…血が噴き出してら
「…私が行かなかったら、あいつら…どうするだろう」
「我々をより多く殺すだろうな!残っている家族だって殺すだろうよ!」
「同じ人なのにな。何で殺し合ってるんだろう…はははははははは」
…痛い。なんだか眠いな。
「私は決めましたよ。私は行きません」
「行きませんだぁ!?もう行けないの間違いだろう!!」
ふん。行けなくしたのはお前ではないか。
「私が行って爆発すれば、私と、多くの敵兵が死にます。ですが私が行かなければ、私と、多くの敵兵は死なないかもしれません」
「生き残った敵兵は、我々をより多く殺すだろう!貴様は馬鹿か!」
「馬鹿は貴方であります。何故敵兵が我々を殺すと決めつけているのですか。殺さないかもしれないじゃないですか」
「戦争とは殺し殺され、そしてどちらかが勝ち、どちらかが負ける。そういうものだ」
そうか…それもそうだな…。
嗚呼…馬鹿は私か……。
――数分後。波は消え、辺りの海は静まり返った…。