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王子様の代わりに呪いを受けたので、好きなように生きてみます(※王子様のせいでできない)  作者: 赤林檎


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10.ボナを逃がす気はない

「私が国王である!」

 ジョット殿下が片手に持った剣をふり上げ、宣言した。


「国王陛下、おめでとうございます!」

 その場にいた者たちが、全員ひざまずいた。


「私は国王の名において、このボナ・フェルスを我が妻、我が王妃とする! 私を守るために自ら『美女灰』を浴びたことは、知恵と勇気と慈愛の成せること! この国の王妃として、ボナ・フェルスよりも相応しき者など、他にはいない!」

 ジョット殿下は剣を捨て、私を抱き寄せると、熱烈な口づけをしてくださった。


 大神官様が、ベアトリーチェ殿下のかぶっていた冠を片手に駆け寄ってきた。

 ジョット殿下は大神官様の手から冠を受け取ると、私の頭にかぶせた。

 大神官様は、とても怯えているように見えるのだが……。


「国王陛下、ご結婚おめでとうございます!」

 大神官様の言葉を、他の者たちが必死の形相で唱和する。


「あ……、あの……?」

 私は冷や汗がこめかみを伝い落ちるのを感じた。

 この急展開はなんなのだ……。


「ボナ、私と口づけを交わして呪いが解けたということは、私のことを好いてくれているのだろう? 私もだ。私もボナがずっと好きだったよ」

「ずっと……、とは……、あの……、呪い……、呪いは……」

「呪い! あの腹立たしい呪い! 男どもが急にボナに注目し始めて、鬱陶しいことこの上なかったな」


「その……、私は……『怒れる猛牛』でして……」

「そうだな。つぶらな瞳が、とても愛らしい……。だが、ボナの本質を表現しきれているとは言い難い」

「私の……本質ですか……?」

「お互い好きあっているからといって、省いて良いことと悪いことがあったな」

 ジョット殿下は良い笑顔で、その場にひざまずいた。


「あ、あの……?」

 なにが省かれたというのだ……?


「ボナ……」

 ジョット殿下が切なそうに私を見上げた。


「なんでしょうか?」

 なんだ? 今度はなにが始まったのだ?


「そなたは、世界で一番美しい。『美女灰』などなくともだ」

「なにをおっしゃるのです!? ありえません!」

 そんなわけあるか! こんな屈強な女のどこが美しいのだ!? 赤毛は男より短く、肌は褐色、肩幅は広いし、胸は平ら。腕や脚など丸太のようではないか。


「私はボナの今の見た目も好きだし、誇り高いところも好きだ。ボナの高潔なる魂は、世界で一番美しい」

 ジョット殿下は呆然としている私の手をとり、そっと指先に口づけた。

 こんな見た目の私を? ジョット殿下が好き?


「なんのために……」

 なにかしら目的があるのだろう。


「なんのため、とは……?」

「誰の首をご所望でしょうか? 相手が誰でも討ち果たしてきましょう」

「敵の首などいらないよ! なんでそうなる!? 私たちは、どこで間違えたのだ? ボナの意志を尊重して、ベアトリーチェのところに行かせたのが間違いだったのか!? ボナを援護するつもりで『裏切り者!』と叫んだからか!? 私の気持ちは伝わっていなかったのか!?」

「それはどういう……?」

 もはやベアトリーチェ殿下など瀕死か、もう死んでいるかで、私が討ちに行くまでもないではないか。


「私は色恋でボナを操るような、そんなクズではない! 私はどうしたらボナに信じてもらえるのだ!? 私の思いが伝わるよう、ボナの家の庭に、深紅の薔薇も植えただろう!?」

 ジョット殿下が悲鳴のような声を上げた。

 たしかにジョット殿下はクズではない。

 だが、家に植わっている赤い薔薇にそんな意味があるなど、わかるわけないだろう……。


「ジョット殿下、申し訳ありません。私は自分に自信がないばかりに、ジョット殿下をクズだと思おうとしてしまっていたようです」

「ボナが『この国の美醜の基準』という観点から、私の言葉を信じられなかったということは理解している」

「寛大なお言葉、感謝いたします」

 寛大なのかどうかわからないが、他にどう言えばいいかわからない。


「私の美の基準だと、ボナは美しいのだ。わかってくれるかい? ボナの高潔なる魂は、誰よりも美しい」

「はい」

 正直なところ、私には自分の魂が美しいと言われても、信じられなかった。


「本当は信じていないだろう。いいよ。仕方がない」

 ジョット殿下はゆっくり立ち上がった。

 顔は笑っているが、目が笑っていない。怖い。


「私はこの国の王だ。ボナを逃がす気はない。気長にやるよ」

 私はなんと返事をしたらいいのか、まったくわからなかった。


 ジョット殿下は、床に落ちていた白鳥のペンダントを拾った。白鳥はどうやら踏み潰されることもなかったようで、どこも壊れていない。

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