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第8話 セバン・ルイズに叱られている

セバン先生は、私がアマリリスちゃんに危害を加えないことと、何やら理由があるのだと察してくれ、禁術書を読むことにそこまで怒らなくなってきた。最近は、「これとかオススメ」とオススメの禁術書を渡してきてくれるまでになっている。

透明化魔法を使うのは体力を使うからと、先生しか入ることのできない別室を用意し、そこで読ませてくれるセバン先生。そんな彼に優しいなと思ったのは最初だけ。何故なら。

「ハッ、アゼリア氏こんな単純な魔法陣も描けないとかマジ?沢山ある魔力量で脳筋な戦い方ばかりしてたから手先の繊細さが失われたんじゃない?」

「うるさうるさ!セバン先生こそ、そのゴミみたいな魔力量どうにかしたら?引きこもってばっかだからそんなゴミみたいな魔力量なんだよこの陰キャが」

「あー!言った!言っちゃいけないこと言ったこの人!もうこの部屋貸し出さないから!アゼリア氏が禁術書を読んでること、今度の集会で大発表しちゃうから!」

「……絶対言えないでしょセバン先生。目立つの嫌いだし」

「……流石アゼリア氏。僕のこと、よく理解してるね。ほめて差し上げよう」

「あざーーーす!」

「心の籠ってない感謝ウケる」

彼とこんな軽口を叩く関係になったのは、息抜きに見ていたアニメである『わんわんカーニバル』略して『わんカニ』がきっかけだ。私がそのアニメにハマり、偶然にもそのアニメ原作の漫画をこっそり購買で買っているセバン先生に会った途端、ヲタ友というセバン先生との新しい関係性が出来上がった。

この世界で知り合っている人間は陽キャが多く、ヲタ友という文化も少ないから、セバン先生とのこの関わりはとても貴重でありがたい。ヲタ特有のこの口調もとっても居心地がいいし、めちゃくちゃ楽しい。

あと、セバン先生普通に知識が豊富なので、禁術書を読むのにとても助かっている。分からない単語を、分からない私を馬鹿にしながらも教えてくれるので、ムカつくがありがたい。ムカつくが。

「……セバン先生がおすすめしてくれたこの禁術書、面白いですね。特にこの毒判定の魔法。めちゃくちゃ使えそうです」

「…………毒の中身は分からない発展途上な雑な魔法だけどね。君、無駄に毒を摂取するドMだけど、その体力をこの魔法を使うのに使えば、毒摂取しなくてもよくなんじゃない?ま、君は毒飲みそうだけど」

「流石セバン先生!最近毒の耐性つけるのにハマってて……でも、ロニア用にこの魔法身につけるもの良いかもなぁ。よぉし!頑張るか!」

「……ロニア氏にバレたら怒られるよ?」

「…………バレないようにする方法、一緒に考えてくれません?」

「……えー…………3回に1回はアゼリア氏が自分が飲まないように、毒判定魔法を使って毒を避けるならいいけど」

「よぉし!その交換条件、乗った!」

「……オケ、んじゃ、作戦会議だね」





セバン先生との毒がある食事は配膳前に処分する作戦のお陰で、1週間はバレずに済んだが、結果ロニアにバレて怒られてしまった。そしてロニアは優秀なので、私の毒判定魔法をあっという間にマスターし、これにより、私は毒を飲むことができなくなってしまった。うう、全毒耐性という、厨二病憧れの能力、身につけたかったのに。

「もう!先生の作戦が雑だから!!」

「……ドーモスミマセンデシタ」

「心籠ってないーー」

そう「いいけどさー」と項垂れる私と、呆れたような顔で笑うセバン先生。机に項垂れながら、できもしないロニアへの説得方法を私が考えていると、セバン先生が「ハイ」と、書類の束を渡してきた。私が「何これ」と書類をめくり始めると、セバン先生が言ってくる。

「毒判定の魔法、進化させた。このやり方覚えれば、毒の成分と人体へどんな影響あるかまで、判定できるよ。」

その言葉に私は「すごーーい!」と思わず書類を掲げた。

「流石ブレインのセバン先生!これ作るの時間かかったでしょー!?」

「アザース……ま、僕程度なら余裕ですわ。なんせ、引きこもりの陰キャなもので。時間はたっぷりあるからね」

「引きこもり最高!!陰キャ天才!!」

「ヒヒッ、ドーモ」 

はしゃぐ私と、それを頬杖しながら見守るセバン先生。心なしか少し疲れているように見えたのは、気のせいだろうか。取り敢えず、栄養ドリンクを差し入れた。彼は「ドーモ」とそれを受け取りながら言う。

「これで判定して、もう耐性のついている無駄な毒は飲まないようにしな?変に体力奪われるの面倒くさいでしょ?」

「うわー、それ助かるわー。流石セバン先生、私のこと分かってるー!」

「…………うん、まあね」

……やっぱりセバン先生元気ないな。やっぱり、この魔法作るためにめちゃくちゃ睡眠時間減らしたのでは?オタクは夢中になるとすぐに睡眠削るからなぁ。そう思い私はセバン先生の表情を見るために顔を近づける。私が近づいたのに驚いたのか、セバン先生は目を丸くして、そして、ふっと目を細めた。

「アゼリア氏、どうした?」

「……いや……セバン先生、疲れてるように見えて」

「フゥン?心配してくれるんだ。アゼリア氏、優しいね」

「そりゃまあ……セバン先生は、大事な大事な、ヲタ友だし」

そう私が言うと、セバン先生は一瞬固まった後、また、ふっと笑った。

「……ヲタ友……ね……ねぇ、アゼリア氏?そんな大事な大事なヲタ友から、1つお願いがあるんだけどいい?」

「……?いいけど」

そう私が答えると、セバン先生は穏やかな表情を変えないまま、言い聞かせるように言う。

「判定で、危険な……生死に関わる毒だと分かったら、飲むのをやめるか僕の所に持ってきて?ま、君は飲みたがるだろうから僕の所に持ってくることが大半だとは思うけど。……僕の所で、ちゃんと安全確保したら飲ませてあげるから……絶対一人では飲まないでね?」

その口調は、まるで子供をたしなめる大人のようで。私が「先生みたい」というと彼は「先生ですけど」と口を尖らせ、そして、ゆっくりと私の頭を撫でた。

「……僕も、君は大事な…………存在だからさ」

「…………ふふ、照れんね」

そう言いながらも、彼の優しい声と、頭を撫でる手の大きさは、すごく心地よくて、もっと撫でてほしいな、大事って言ってほしいな、なんて思ってしまった。

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