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ロニア・ダラーに睨まれている

ロニア・ダラーは悪役令嬢であるアマリリスちゃんのの義弟だ。乙女ゲームの世界線での彼は、売婦の下に生まれスラム街で生活していたが、奴隷商会に捕まり、商品として売られてしまう。そんな彼を買い取ったのが、アマリリス・ダラーだ。ダラー家は男の子が生まれなかった為、男児を欲していた為、弟としてロニアを受け入れた。そんな彼に彼女はたくさんの嫌がらせをした。食事には毒を入れ、服は汚し、彼に襲われたと虚言する。全ては綺麗な顔のロニアを弱らせ、自分のものにするための作戦らしい。しかしロニアは元はスラム街で生活していた苦労人だ。彼女の作戦通りにはならなかったし、なんなら彼女を嫌悪し、自身の優秀さをダラー家にアピールし、ダラー家を繁栄させるであろう跡継ぎとして期待されるまでになっていた。

そんなシナリオだったはずなんだけど……。

「ロニア、食事ぐらい1人でたべるわよ……」

「いいえ、姉様の食事に毒でも仕込まれていたら大変です。私が毒見してから召し上がるようにしてください。……はい、これは大丈夫ですよ」

そう差し出されるスプーンに乗ったスープに、アマリリスちゃんは少し躊躇った後、諦めたように口に含んだ。

うーん!眼福!!美女と美男子の戯れはなんとまあ目の保養になるのだが、私の目標である攻略対象(ロニア、セバン、ダーク)に接触するという目的は達成されなさそうだ。諦めてきっとボッチで仕事しているであろうセバン先生の所に行ってみようかなと思っていたそんな時、ロニアとアマリリスちゃんの前に、彼が現れた。

「ダーク殿下!どうしてこんな所に?」

そう疑問を投げかけるアマリリスちゃんに、ダークは優しく笑いかけた。

「君と話があってね。今、大丈夫?」

丁度アマリリスちゃんの食事は終えそうだ。残っているのは今ロニアの毒見が済んだデザートぐらい。

「……姉様、行ってきてください。最近ダイエットって言ってましたし、デザートは私が食べておきますから。」

「もう!殿下の前でバラさないでよ!!……分かったわ。お願いね」

そうプンッ!と怒りつつ、殿下にちょこちょこついていくアマリリスちゃん。……可愛い。そんな可愛い彼女に見惚れてて、気がつくのが遅くなってしまった。残りのデザートをそっと捨てて、自分の食事も食べずに食堂から離れていく、ロニアの存在に。

彼の足は速く、私の鍛え抜かれた追跡魔法が無ければ絶対に見失っていた。こんなにも人目を避けて彼はどこに行くのだろうか。

ついてきた先は男子寮のロニアの部屋。私の鍛え抜かれた透明化魔法がなければ入り口で門番さんに追い返されていただろう。……私は一体何をしているのだろうか。こんな所までついてきてしまった。もう後戻りはできない。ここでバレたら学校で大変な噂になってしまい私の居場所がなくなってしまう。いや、居場所がなくなる程度ならまだいい。最悪警察に捕まるかもしれない。捕まって、牢屋にぶち込まれて、そんな間に時は経ち……100年の眠り!!!

絶対にバレてはならないし、ここはなんとしても何かの情報を手に入れないと!

そう気合を入れてストーキングを続行する。流石に部屋に入るのはなぁと、取り敢えずドアに耳をつけ盗聴を試みる。

……この行為もヤバいのでは?そうまともな思考を取り戻しそうになった時、聞こえてきた。小さく、でも確実に。

苦しそうな、えずきが。

そんな時思い出した。毒見という言葉を。毒見後手を付けられずに捨てられたデザートを。それは、アマリリスちゃんは食べておらず、ロニアが毒味をしていたことを。

思わず扉を開けてしまった。驚くロニアに構わずに近づく。

「毒消しは!?」

そう問いかける私に、ロニアは怪訝そうにしつつも答えてくれる。

「……使いました……そのうち、良くなります……今回のは少し強めのものみたいです」

その言葉に安心しながらも苦しそうな様子に心配になる。私はロニアの背中に手を当てながら、回復魔法をかけた。

「…………どうし……て」

少し楽になったのだろう。顔色が良くなるロニアにほっとした。どうして……そんな疑問になんて答えようか。「あなたを救いたくて」「心配で」そんなヒロインみたいなセリフが頭を掠めるが、こんな所までストーキングしていることがバレている時点で、もうヒロインらしさは無いだろう。取り敢えずここに自分がいることの言い訳と、敵意は無いことを伝えないと。えっと、えっと……

「あなたが……苦しそうだったから……」

「……どうしてここに?」

「えっと……その……」

どうしよう。追跡魔法でついてきたなんて言えない。

「……やはり、姉様を狙ってるんですね。毒を盛られた私の様子を観察し、姉様の隙を伺おうとした。とかですか?」

「ち、ちがう!!」

慌てて否定するが、ロニアの表情は険しくなるばかりだ。……ここは早めの退散が吉かもしれない。

「あ!!私用事があったんだったー!!それでは!!」

そう逃げるように走った。頑張った。頑張って走った。でも追いつかれた。ロニアの足は速い。頭も良くて足も速くて顔もいいなんて、将来有望!!優秀!!素敵!!だからその綺麗な顔、そんなに近づけないでください!!私の心拍数が異常値です!この人、私を殺そうとしてきてます!!ただでさえ100年の眠りに落ちてしまう可能性あるのに!!

「……どこに行く気です?姉様の所ですか?返答次第ではただではすみませんが」

待ってこの人バックハグしてきたと思ったら首に手を添えてきた。やっぱり本当に殺そうとしている。物理的に。

大変だ。ここで私の返答が間違えば私は死んでしまうだろう。もちろん物理的にだ。せめて社会的に殺す方にしてくれないかなぁ。命は失いたくないなぁ。そんなことを考えながら、最期になるかもしれないし、素直に生きようと私は恐る恐る、言葉を発する。

「……あなたが…………綺麗で……心臓がもちそうに、なくて……逃げましたごめんなさい」

そう謝罪をする。すると……私の首を掴んていたロニア手が、ほんの少し、緩むのを感じた。




――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




アゼリア・サトリーは優秀な人だと聞いている。学年代表を務める頭の良さに、隙のない綺麗な容姿。

そんな彼女に義姉であるアマリリスはいつも怯えていた。試験に合格後、学園に登校できる期間があった。姉はその間、学園に行くことはなかった。彼女が、アゼリア・サトリーがいたからだ。

アゼリア・サトリーは、図書館に行くことが多かった。特に問題があるようには見えなかったのは、彼女が隠れて禁術書や呪い書に手を出しているのを知らなかったからだ。彼女はその優秀さ故に、既に様々な魔法を習得していた。透明化魔法を使い、本来なら見てはいけない書を次々と見ているとのことだ。その辺りの魔術に詳しいセバン先生がそのように話していた。

ただ、読んでいるだけで悪さはしている様子はない。姉は、何か誤解をしているのではないだろうか。そう思い、姉を学園に誘いかけた。姉はちょっと顔を暗くしたものの「ロニアがそこまで言うなら……」と、私にくっつきながら登校した。こういう所が可愛らしいなと思いつつ、姉上に安心して欲しくて、敢えてアゼリアがいるであろう図書館に向かう。アゼリアの姿を見て緊張させる姉様。大丈夫だと背中を撫でると、少しホッとした顔をする。そのまま何もなく帰る……筈だった。

「……いたっ」

「!姉様、どうしました?」

帰る際に靴を履き替える、そんな時だった。姉様の足から、血が出ていた。

姉様の、靴に、刃物が入れられていた。

その途端、姉様の顔色が悪くなる。苦しそうにその場に蹲る。涙を隠すように顔を覆い、まるで誰にも聞かれないようにしているような、小さな、小さな声で姉様は呟いていた。

「いじめてないのに、アゼリアちゃん、いじめてないのに……」

姉様の口から漏れるアゼリアという単語。それが、アゼリア・サトリーを表しているのだと、すぐにわかった。どうしてこんなことになったのか、分からない、分からないが、その原因はアゼリア・サトリーにあるのだと、そう思った。そう、思いたかったのかもしれない。

だから僕は、アマリリス姉様を守ることに全神経を注いだ。毒を飲むのも厭わなかった。あの日、嫌がっていたのに学園に連れていき、姉様が傷付く原因を作ったのは自分だ。その責任を、取るべきだ。

だからこそ、アゼリアをこのまま逃がすわけにはいかなかった。場合によっては殺してもいいと思った。今まで飲んできた毒は、どれも姉様を殺す為に入れられたものだ。彼女を殺すことで姉様の安全が守られるのであれば、それもよいと思った。

なのに……戸惑ってしまった。彼女から発せられる言葉に嘘が帯びているようには聞こえない。

もしだ。万が一だ。彼女が無実だったら?何も関係がなく、姉様がただ誤解をしているだけだったら?

無実の何も関係のない女の子。そんなただの女の子を、貶し、捕まえ、首を絞めようとしている。

自分を見上げる彼女の赤い頬に、潤んだ瞳に、心拍数が上がりそうになるのを、何とかこらえる。密着することにより感じる花の香。これは、良くない。

 



――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



ロニアは私から手を離してくれた。何故か。その理由は分からない。でも、ロニアの表情はさっきまでの険しいものではない……寧ろ……。

「……あ、あの……私は本当に、アマリリス様に何もしません。なので……」

取り敢えず弁明しようと言葉を発したが、その言葉を言い切る前にロニアは言う。

「……分かりました」

「え」

驚く私に彼は続ける。

「今日のところは信じます。……ただ……また、何かあるようでしたら……その時は、覚悟してください」

……ほ、保護観察付執行猶予!!堪えました!堪えました!!いや、やばいのか?何もしていないのに有罪判決喰らってるような環境下で、この判決はもうアウトなのでは?いや、諦めてはならない!ここから私の無実を証明すれば大丈夫だ!!まず、何の罪を着せられているのか教えてもらってもいいですかー!?!?

なんて、そんなことは叶わないままロニアはアマリリスちゃんの所に向かっていく。取り敢えず、ポイ捨てされているゴミでも拾おう。徳を積むことで救われるかもしれない。こうなりゃ神頼みだ。

そう、目の前にあった空き缶を拾う。ぎゃ!最悪!!中身中途半端に入ってて手汚れた!!



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