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第15話 看病(1)

せっかく文化祭で優勝して手に入れたクラスでの旅行が体調不良により行けなくなってしまった悔しさを嘆いていたら、何故かロニアが部屋に来てくれていた。なんで?そう戸惑う私を他所にロニアは、私をテキパキとベッドに連れていき、薬を飲ませてくれ、横にさせてくれ、頭に水タオルを乗せてくれた。ふぇ、完璧だぁ。と感心してる私に、ロニアは言う。

「……来てよかったです。なにか、して欲しいことはありますか?」

そんななんとも魅力的な言葉。ロニアのキラキラしたお顔も相まって、ロニアが天使に見えてきた。流石義理でありながらもアマリリスちゃんの弟だけある。天使なんだなぁ。と、思いながらロニアのことを見てきた時、ふと、1つの疑問が生まれた。

「ろ、ロニア」

「はい、何ですか?」

「……旅行は、どうしたの?」

その言葉にロニアは「あー……」と少し気まずそうにしながら、言う。

「……パスポートの申請、間に合わなかったんです。……私、姉様とは義理のきょうだいで、それに……ちょっと生まれが特殊で……」

その言葉に、「ああ」と納得した。ロニアは、スラム街で育ち、奴隷商会で売られていた身だ。国外へ行くためのパスポート申請は審査が厳しいし、急に決まった旅行に対して準備するのは難しかっただろう。

「……そうなんだ」

行けなかったことへの同情はもちろんある。あるのだが……

「……来てくれて、ありがとね。」

弱っている時に誰かが側にいてくれるのは、とってもありがたい。自分勝手で、申し訳ないけど。

私のお礼にロニアは少し笑って「どういたしまして」とこたえた。

作ってもらった雑炊を食べて薬を飲む。デザートの果物も用意してもらった。至れり尽くせりだ。

「病気になるのも悪くないね」と言う私に「馬鹿ですか貴方は」と苦言を言うロニア。その刺々しい口調に隠された優しさを、私は知っている。

あたたかな気持ちになりながら、ロニアの食器の後片付けの音を聞きながら、私はゆっくりと意識を手放した。



目が覚める。窓の外を見る。もう、夜が近いのだろう。日は落ち、薄暗くなっていた。

もう、ロニアは帰っただろう。そう思いながら起き上がると

「……目、覚めましたか?」

ロニアはソファで本を読んでいた。私が起きたのに気が付き、本を閉じて、額に手を当てる。

「熱、下がったようですね。顔色も良くなったようで、よかったです」

そう微笑むロニアを見て、胸がぎゅっと締め付けられる気持ちになった。ずっといてくれたことへの申し訳なさと……それを上回る「嬉しい」という感情。

「夕飯は、鍋にあります。あたためて食べてくださいね?薬はテーブルに置いてます」

そう言いながらロニアは帰りの用意をする。その様子に私は思わず「帰るの?」と聞いてしまった。私の言葉を聞き、ロニアはピタリと動きを止める。私を見て、ゆっくりと言った。

「……帰らないで、欲しいんですか?」

その言葉に私は少し考えた後、首を縦に振った。そんな私の様子にロニアは何かを堪えるようにぎゅっと目を瞑った後「明日も来ますから」と困った顔をしながら宥めるように言う。

その約束をしてくれただけでも有難い。感謝をし、別れの言葉を述べるべきだ。分かっている。分かっているが……人は弱ってしまうととことん寂しがり屋になるのかもしれない。私は帰ろうとするロニアの服の裾を、きゅっと引っ張った。

「…………やだ。今日は、ここにいて……お願い」

その私の言葉にロニアは暫く俯いて黙り込んだ後、「……わかりました」と返事をしてくれた。やった!言ってみるもんだな!とはしゃぐ私と、大きなため息をつきながらしゃがみ込むロニア。その様子に少し心配になり、声をかける。

「……ご、ごめんね。わがまま言っちゃって……迷惑だったよね……」

そう言うとロニアはバッと顔を上げる。

「めっ……迷惑ではないです…………頼っていただけたのは、嬉しいんです……嬉しいの、ですが……」

私が「ですが?」と首を傾げると、ロニアは気まずそうな顔をして、目線を逸らした後、小さく言う。

「……あたなが……心配で……」

心配?……あ、体調崩した私のことが?そう思い、「なら、泊まって正解じゃない?」と言うが、ロニアは首を横に振り、私を見て、言う。

「……泊まるから……心配なんです」

その言葉の意味は分からないまま、私はとりあえず「そ、そうなんだ?」と曖昧な返事をし、ロニアはそんな私の様子を見て、またため息をついた。


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