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ブラックマジシャン

木下の部屋へ入るのに成功はしたが、飛田たちまできたことに飛田は身を硬くする。

先ずは時臣たちの話からということになり、話は等々力組を絡めて進んでゆく。

 505の部屋の前に立ち、中条がインターフォンを押すとーどうぞーの声と共にドアは簡単に鍵が開く。

 中条はドアを開け、中に入ると木下が立って待っていた。

 2人が中に入ると、

「あまり片付いてませんが…」

 とお決まりのことを言って背を向けた時、残りの3人も玄関へと入り込んできた。

「え!あ…騙したんですか!」

 入り込まれた恐怖に木下の顔が一気に引き攣る。

「騙したつもりはないんですが、まあさっき帰ったと言ったのは嘘でしたすみません」

 中条が木下の背中に手を当てそう言って続けて

「でも、私どもが今日来た話には、彼らも必要なので…この者の知り合いでもありますから、悪いようにはしませんよ」

ー自分らがいるうちはーと言う言葉は言外に置いて、ちょっと中でお話を…と他人(ひと)の家なのに木下を勝手に中へと(いざな)ってゆく。

 飛田たちもそれに続くが、1人だけ靴を履いたまま玄関に立ち、万が一の逃走に備えている。

『飛田って偉いんだな』

 言われなくても行動をする部下を引き連れている飛田を、時臣は少し感心する。 が所詮ヤクザはヤクザだ。

 少し生気が消えかかりそうな木下をリビングであろう場所のソファに座らせ、中条と時臣がその対面に座り、飛田ともう1人の男はその後ろに立っていた。

「は…話というのは…」

 ここまできたら話しは聞かないとならないと覚悟を決めたのか、木下はそう言って両指を絡める。

 中条も体を前に起こし、両肘を両膝の上に置いて同じように指を組んだ。

「先日、高円寺で『塾』のようなものが摘発受けたのをご存知ですか?」

「はい、知ってます。テレビでやっていましたね」

 時臣は中条の隣でじっと木下の些細な動きも見逃すまいと見つめていたが、今の話を聞いても木下は眉ひとつ動かさなかった。

「我々が本日伺ったのは、とある筋からこのようなものを入手しましてですね」 そう言いながらスマホに表示した、例の請求書を木下の前に置く。

「お名前こそ表示されていませんが、あなたのこの部屋からのものだということは判明しているんです」

 木下は目だけでその画面を見てほんの一瞬瞳が揺らしたが、次の瞬間には

「いえ…そう言われましても私には見覚えのないものですね」

 また目線を下へと戻し、早く終わらないかなと祈る気持ちでいる様子は見て取れる。

「そうですか…ではこれを、後ろにいる方々に見ていただいてもよろしいですかね。請求書の差出人のお名前…書いてありますけれど」

 中条はわざとその部分を隠して表示させていた。

 今この部屋に請求人が居るからどう誤魔化してくるか見てみようと思っていたが、その事は一瞬でも失念したか、当たり障りのない返答をしてきた木下にわざと確認をしてみる。

「あ…」

 不意に顔が上がり、思わず2人を飛び越えて飛田の顔を見てしまった。

 一瞬で認めてしまった合図。

「そ…れは、個人的なものなので、他所(よそ)の人…」

 までいって2人の後ろの人物達は当事者の請求人だと悟り黙って再び俯いてしまった。

「なんだなんだ?俺らに関係ある話か?見せてみろよそれ。まあ大体察しはつくけどな」

 飛田は後ろを回って中条の隣に座り、ゆっくりとした動作でスマホを取り上げる。

「なるほど…これのシラを切ってるんですか~キノシタサン」

 スマホ越しに木下を見る飛田は、スマホを中条へ返しソファへ寄りかかり

「何が知りたいんだ?時臣と中城(なかじろ)さん?は」

 背もたれに手を回して、中条の肩を抱くような感じになりながら問う。

中条(なかじょう)っす。俺らが知りたいのは、これはなんの金かと言うことですよ。これが何の金かわかればさっき話した高円寺の『塾』と、この木下さんとの関係が繋がるんです。俺たちは、この木下さんと『塾』の関係が知りたいんですよ」

 時臣は相変わらず木下をじっと見つめている。

 さっきよりは余裕はなくなってきた。

 なんせ自分が黙っていても飛田が話したらもう、高円寺との関係はバレてしまう。

ー何で今、賢也さん経由で俺に話を聞きにきたという探偵と、等々力組(あいつら)が一緒にここにいることになったんだー

 そう思えば思うほど、気持ちに焦りが出てくる。

「これが何の金なのか…ねえ。言ってもいいですかね、キノシタサン。割と身の破滅的な話っすよね」

 時臣が横目で飛田を見た。

 ある意味は身の破滅(そうかも)しれないが、『塾』との関連が繋がったところで、学生がマインドコントロールされて奇行に走った挙句亡くなったことにまでこの男を追及できるかは薄いのだ。

「身の破滅ってのは…どう言うことだ」

 時臣に問われて飛田は身を起こす。

「この金はな…」

「…それは言わないでくれ!」

 見事に余裕を無くした木下は、立ち上がって飛田に縋ろうとしてもう1人の男に止められ、今まで座っていたソファに強制的に座らされ後ろに立たれた。

「この請求書はあと5枚くらいあるよねキノシタサン。請求書総額600万、プラス遅延金200万そして慰謝料500万。千百万の金額になるなぁ」

「千百万??」

 これには時臣と中条が声が揃ってしまった。

 その金額ならヤクザも動くか…と納得もできる。しかし慰謝料というのは…。

木下(こいつ)な、とある男に…」

「やめてくれ!言わな、ぐぁっ」

 再び身を乗り出して止めようとして、木下は後ろに立っていた男に髪を掴まれ引き戻される。

「とある男にな、強制的に変な…動画なんだろうなあれ、そんなもの作らせててな、金は一応払ってはいたんだが随分と安い金で使ってくれてて、しかもその男とデキてやがってなぁ…そんな関係からも相手を見下して、次々と仕事させてたんだよ。やっすい金でな」

 未だ髪を掴まれたままの木下が、俯けないまま一生懸命目だけを下に向けている。

「動画?まさかあの…」

 例のあのマインドコントロールする薄い文字が出たり消えたりする問題の背景のことだと、2人はすぐに気づいた。

 この説明で、木下が『塾』と繋がっていたことは立証された。

 あのマインドコントロールできるものはやはり木下が手配していたのか。

 しかし何かが引っ掛かる。

「まだ5枚以上あるその請求書は、安く使ってくれた金額の補填分と、まあさっきいった遅延金と、その可哀想な男への慰謝料な訳だよ」

 時臣は遅延金高えなとは思いつつも飛田の顔を見た。

「請求書の内容はわかった。しかしその内容になんで等々力組(お前ら)が関わってるんだ?」

 飛田は時臣の言葉に立ち上がり、木下の隣に立つとその足のつま先を踏みつけ徐々に体重を乗せていく。

 木下の顔が苦痛に歪んできた。

「その、とある男っていうのはな、等々力(うち)の子飼いのブラックマジシャンでなぁ…」

 その一言で、時臣も中条も大体を理解した。

 綾瀬の言っていた黒魔術師。

 人を治癒したりするホワイトと違って、対照的にブラックと言われる人を貶めたりする仕事をする綾瀬と同じような職種の人間がいると聞いていた。

 木下はやはりそれと関わっていたか…というか、デキてたのか。

 

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