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探偵への挑戦?

2人目の確保には、今回気を遣った。

依頼対象者をなんとか抑え込んだ時臣は、仲間の探偵中条を呼び出し真相解明へ乗り出した。

 時臣は、図書館の閲覧スペース兼学習スペースに座っている青年に向かっていた。

 いつもではあるが、人探しの依頼は多い。しかし最近疑問なのは、10代後半から20代中頃までの失踪者がやたらと多いことだった。

 今見つけた青年も、22歳の大学4年生。警察では取り合ってくれなかったと1週間前に両親から依頼があり、調査の結果今目の前にいる。

 そしてこのての依頼は、早く見つかるのも何か引っ掛かるものがあった。

伊藤瀬奈(いとうせな)くんだね」

 前回の猪野充の例に倣い、伊藤瀬奈が椅子を引いて逃げないようにさりげなく足を椅子に絡めて動かないようにかませながら、時臣は座る瀬奈の脇に立つ。

 瀬奈は何気なく時臣を見上げて、口元が『どちらさま…』とでも言おうとしたのか『ど』の口元あたりで急に

「うわあああっ!」

 と声をあげ、立ちあがろうと椅子を後ろに引こうとしたが、それは時臣の足に邪魔をされ、片方だけ動いた椅子の足に逃げようとした足を取られその場に転倒した。

 それをすかさず時臣は抑え込み、声で駆けつけた職員に

「救急車をお願いします、発作なんで」

 などと軽く嘘をつき、結構な力で暴れる瀬奈を押さえ込んでいる。

 その間にも、伊藤瀬奈はーひいぃぃ~ーだのー触るな!寄るな!ーと時臣を拒絶するかのような言葉を発し、取られた腕を解こうとバタバタと暴れていた。

ーやっぱりか…なんかがおかしいな、俺限定に怖がってるんだよな…ー暴れる伊藤瀬奈を、横四方固めだか十字固めだか判らない押さえ込みをしながら時臣は内心疑問を抱く。

「今呼びましたので、10分ほどで来るそうです」

「あ、わかりましたすみません」

 10分か~押さえてるの大変だ…などと思うが、それ以外方法はない。

 多分だが今逃してしまうと、一直線にこの図書館の最上階へ行き飛び降りる。

 この図書館はビルの3階4階を利用してできており、ビル自体は10階建てだ。

 猪野充の様な目には遭わせたくないし、自身もあんな顔はもう見たくなかった。

 最近になって、同業者の話を聞いたことがあったのだ。

 人探しの依頼を受けて、それは意外にも早く見つかるのだが、見つけた時に自分を怖がると…。

 理由は全くわからないが、探している相手を怖がるという現象が若者の失踪者に多く見られていた。

 今度警察にも確認をと思ってはいるが、今の結果を見ても何が起こっているんだ…と首を傾げるしかない。

 間違っても逃してはいけないのでその場からも動けずに、周りの学生さんや何かの調べ物に来ていたサラリーマンなどに遠巻きにされてバツの悪い時間を過ごしている。

 サイレンの音が響き、ビルの前に止まった音がしてホッとしたものだ。

 担架を走らせてきた救急隊員に暴れるからと軽く拘束を頼んで、自分は車で後を追うと告げ、一緒にビルを出た。

 病院について救急隊員と共に病院へ入るが、時臣は瀬名の視界に入らないように続き、その時に隊員から聞いた話では救急車の中では全く暴れる様子もなかったが、一転を見つめてぶつぶつ言っていたので、逆に頭をぶつけたか等を数点質問された。

ーやっぱり俺にしか反応してないんだな…ー

 処置室へ運ばれたのを確認してから瀬名の母親へ連絡を入れ、病院名と今の現状を報告する。

 そして同業の中条航一郎なかじょうこういちろうに連絡をとり、時間があれば来てくれないかと病院を告げて了承得ていた。

 中条は年も近い同業者で、色々話ができるやつでもある。

 もしも探偵業を営む者の顔全てを恐れるならば、中条の顔を見ても怯える筈なのだ。

 それがなんでなのかまではわからないが、まあ首実験として中条を招集した。

 30分もしないうちに中条は処置室の前に座っていた時臣の元へ

「なんの用だよ~」

 などと、いつもの柄シャツにカーゴパンツ、そしてオレンジに近い茶髪の頭に格好に合わないハットをかぶってやってくる。

「相変わらずふざけた格好してやがんな。何歳だよ、俺とかわんねえだろ。落ち着けよ少し」

「『来てやった』のにその態度か?んん?じゃ帰ろ」

 ズボンのポケットに入っている両手を広げる様にしてそう言って、中条がくるっと体をまわすと

「ああ、待て待て、帰る前にそこの処置室で処置を受けてる青年に会ってってくれよ」

 時臣がその背中に言う。

 中条がドアが開放されている処置室を除くと、2人の看護師と1人の医師と何かを話している人物が見えた。

 もう起き上がって普通に見える。

「あの子ってこと?」

 顎で示しながら、再び向き直る。

「そうそう。お前少し前に言ってたよな。人探ししてて、見つけたけど顔見て怯えられたって」

「ああ、あったあった。俺は浮気調査が多いから珍しい仕事で張り切ってたんだけどな、顔見て怖がられたのは初めてだったんでちょっと傷心よ」

 胸に手を当てて、大袈裟に目を瞑り近くのベンチに崩れ座る。

「あの子もそうでな」

 親指で処置室をさして軽くため息をつく。

「さっき図書館で保護しようとしたら、すげー抵抗されてさ衆人環視の中10分もその場に寝転んで横四方固めもどきしてたの辛かったわ」

 中条が同情するような目で見てくるのも、少々辛い。

「それに俺なんかちょっと前には怯えられた末に、ビルから飛ばれたしな。ちょっとトラウマになってるわ」

 タバコが吸えないからとポケットからハイチュウを出して、口に放り込み一個いるかと中条に差し出した。

 中条はそれを受け取りながら、

「ああ、そうだったな。それは同情するわ…」

「だろ?俺だってそれなりに…」

「飛び降りたくなるほど怖い顔してるもんな…お前…」

 時臣は数秒中条の顔を見て、

「お前も病院(ここ)の屋上から飛ぶか?手伝うぞ?」

 その言葉はあまり冗談に聞こえなくて、中条はーイエ、ステキナオカオデスーと訂正をし、舌を鳴らしてハイチュウを口に入れた。

「俺ぶどう味がよか…」

 また睨まれて、美味しいですと小さな声で言った時、中の瀬奈が不意に中条を見ていることに気づく。

「なあ?」

「ん?」

「俺、その…顔見せする子と今目があってるんだけど…」

 あん?と思って時臣も覗こうと今までは見えない位置に座っていた顔をひょいと出して中を覗くと、ベッドの上に座っていた瀬奈が再び叫び出してベッドからころげんばかりに暴れ出した。

 看護師も突然のことに驚いて押さえ込もうとするが、成人男性の力は強い。

 周りにいた男性看護師や医師が数名で取り押さえ、鎮静剤の様なものを点滴から注入されて、瀬奈はベッドの上に横たわっていった。

「やっぱり俺か…」

 ベンチの元の位置に戻り、わっかんねんだよなあ…と寄りかかる。まあわかったことは、中条には反応しなかったということだ。

「どういうことなん?」

 中条も聞いてくるが、それがわかれば苦労はしない。

「で、そのお前を怖がった子のことは、お前どうしたんだ?」

「ああ、俺様を怖がるのはわかるが、そこまで化け物を見た様な目で見るなよ、つって怒鳴りつけて後ろ手に縛って足も拘束して車に乗っけた」

 つよ…

「それで逃したらどっかの上から飛ぶか、車道に飛び込むかされてたんだろうな」

「まあ多少強引とは思ったけどな、そのまま家に連れ帰ったわ。後ろ手と足を縛った理由を親御さんに話すのは苦労したけど、お前の事ちょっと使ったわ。逃げられてしまうと命に関わりかねなかったってな」

 今回の伊藤瀬奈を押さえつけていたことを思い出し、確かにそこまでしないと命は守れないなと思う。

「でも自殺願望を持つような感じの子達じゃねえよな」

「そうなんだよな。俺もすぐに見つけてから本人か確認するのに後つけてたけど、家に戻らないだけで友達とも会ってたし、中々楽しそうではあったんだよ」

 中条の言うことは猪野充にも当てはまった。

 大学では普通の学生だったのである。それが自分が現れてから突然走り出し、ビルの屋上まで駆け抜けていったのだ。

「何が起こってんだ?」

 言いながら中条(なかじょう)がもう一個くれと手を出す。

探偵(おれら)への挑戦かなんか誰かがしてるとか?」

 茶化すように言って、ハイチュウ一個を手に乗せてやる。

「悪の組織かっつの」

 受け取ったハイチュウを剥いて口にいれた中条は、ーはぁっーとやるせない溜め息をついてベンチで体をずらした。

 その後、やってきた瀬奈の母親と対面し、医師から話を聞くために瀬奈が鎮静剤でうとうとしている隙に処置室へと入って行った。


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