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警視庁捜査一課長

結城の紹介で、警視庁捜査一課の課長である難波と会えた。

難波は時臣が調べたものを確認し、協力を惜しまないと言ってくれた。

 初めてくるわけじゃあないが、警視庁の捜査一課の部屋は目つきが鋭い刑事たちが多く、顔馴染みである結城がーやあやあーなどと軽く挨拶をしながら堂々と真ん中を突っ切る後ろでー誰だ?ーな顔つきでジロジロ見られている時臣は、悪い事をしてもいないのにいたたまれない気持ちになってしまう。

「お、来たな」

 その1番奥の窓際に、こちら側を向いたデスクに座っていたのがこの捜査一課課長の難波亨だ。人懐こい顔をして笑ってはくれたが、目は笑っていなかった。

「よう難波、久しぶり」

 結城がデスクを挟んで前に立つと、難波も立ち上がり握手をして結城の腕を叩いて来た。

「久しぶりだなぁ。半年ぶりくらいか」

 そう挨拶しながら時臣へ目を移す。

「この方が例の?」

「そうだ、連絡した篠田だ、経堂で探偵をやってる。そして篠田、こっちが難波亨。本庁捜査一課の課長でおれの同期だ」

 時臣はそう紹介されて、名刺入れから名刺を取り出し難波も用意していた名刺と交換をした。

 握手をした後、手にした紙袋を差し出し

「これは皆さんで」

 警視庁の捜査一課に何を持っていけばいいのかわからなくて悩んだが、ちょっとつまめるすぐ食べられる簡単なものとして、うさぎやのどら焼きにした。

 商品としての通りもいいし、軽食にもバッチリ♪

「いや気を使わせてしまったな。ありがとう」

 難波は受け取って礼を言う。

「こいつ警察学校の同期なんだが、出世欲が強くてな。警察学校出てから試験受けてなんちゃってキャリアになりやがった」

 結城は笑いながらそう言って、まあ出てこいと難波をデスク向こうから引っ張り出す。

「そう言うなよ、俺なりに頑張ったんだから。一般からの試験上がりなんでキャリアより苦労してんだこれでも」

 こんな冗談も言い合える仲なのだろう。多分階級も2階級くらい違うはずだから、同期でもなければ本来こんな口の聞ける相手じゃないはずだ。

 デスク向こうから出てきた難波は、時臣と対峙し

「今回は情報を下さるそうで感謝します」

 と軽く礼をしてくれた。

「こちらこそお手をお貸しいただいて助かります。我々ではもう限界に近かったので」

 時臣も礼を返す。実直そうな人だった。

「じゃあこちらへ」

 と促され、時臣と結城はパーテーションで囲まれた場所へ案内された。

 その途中で難波は、近くにいた主任と呼んだ刑事に

ー腹が減った順にいただけー

 と時臣が渡した紙袋を渡し、それを手にした刑事は時臣にーありがたくーと軽く礼をして何人かが集まっているところへ持っていった。

 そこではーうぉぉ~うさぎやじゃないっすか!ーやー美味いんだよなここのどら焼きーとか評価は上々。唯希に感謝だ。

 2人は如何にも警察署!と言った程の硬いソファに座り、男性の中で気を張っていますと言った顔の女性刑事が持って来てくれたお茶に礼を言う。

「綺麗な人ですね」

 結城に小さく耳打ちをしたが、それは届いてしまったようで少々睨みながら女性刑事はそれでもきちっと礼をして去っていった。

 ー余計なこと言うなーと結城に嗜められる。

 いくつかのクリアファイルとボイレコを持って戻ってきた難波は、2人の前に座って、そのクリアファイルをテーブルに置く。

「早速だけど話に入らせてもらうな。これは、結城に言われて取り寄せた都内全所轄から集めた、ここ2ヶ月間に起こった20歳(はたち)前後の男性の自殺と交通事故死の記録と調査書だ。本来なら所轄管理で門外不出だが、無理を言って送ってもらった。勿論何事もなかった所轄分は無い」

 そのクリアファイルは見ただけで何十束もあり、中身は一枚だったり数枚だったりはあるが、結構な枚数だ。

 時臣はその枚数分今回の件に絡んでいるのかと思いゾッとする。

「まあ、中には純粋に交通事故や自殺もあるだろうけれど、その選別にはやっぱり関係者として探偵や興信所の人間が絡んでいることが条件にはなるな」

 と結城が言ってくれ、目の前の枚数分が全てそうではないと気づいて少々安堵した。

「そこの所を詳しく聞きたいんだよな」

 難波も話しやすくしてくれてるのか砕けた口調できてくれる。

「では、今回起こっている自分が知っている限りのことをお話しします」

 時臣も、手持ちの書類バッグからA4の紙束が入った茶封筒を出し、難波の前に置いた。

「取り止めもないかもしれませんが、一応今回の件が今に至るまでの経過をまとめて来ました。口頭でも軽くお話ししますが、最初は6月5日に受けた、大学生の家出…と言うか失踪の捜索依頼でした」

 そこから話し始めて、猪野充が自分を見て恐れて逃げた挙句ビルから飛んだ件。伊藤瀬奈を図書館で、やはり自分を恐れて逃げようとするのをなんとか取り押さえて保護した件。依頼を受けた対象者を尾行し、高円寺のビルを突き止めそこの内容を伊藤瀬奈に聞いた件などを順を追って説明をした。

 難波は封筒から取り出した資料を、時臣の話を聞きながら目で追っている。

「マインドコントロールなどと聞くと突拍子もない事だと思われるでしょうが、同封させていただいたUSBメモリーに、話を聞いた子が対象の人物…まあ俺なんですが、俺を見て怯える様子も入っていますので、それも参考にしてみてください」

 言われて難波が封筒を確認すると、丁寧にエアクッションに包まれて黒のUSBメモリーが入っていた。

 それも取り出しデスクへ置く。

「そして自分が確認できた最近の件ですと、3日前に起きた三鷹での学生が男性を道路に引き摺り出して事故に遭ったやつですね」

 時臣は難波が置いたクリアファイルの三鷹所のを取り出し中身を確認した。

「ああ有ったよかった。刑事事件になったのでここにはないかと思いましたが…」

 一枚の調書を取り出して難波の前に置いた。まだまだ被疑者被害者ともに病院で、被疑者に関しては未だ意識不明故に調査も進まない状態では有ったが時臣はこれがこの件に踏み込むチャンスになるかもと難波に話した。

「これはどういった…?」

「この土井拓実が今回の件の一つの可能性があると考えるのは、結城さんがなんとか話せる状態になった栗山から、土井拓実の両親から依頼を受けていたことを聞き出してくれたからなんです。20歳(はたち)前後の学生が興信所に捜索されていると言うことのみでは、まだその『塾』にいたという確証にはなっていませんが、そうだと仮定して話をします」

 三鷹のその事件の書類を見ながら聞いていた難波が、時臣へを顔を上げる。

「これまでの依頼対象者は、お話ししたとおり追手の顔を見ると逃げるように強いマインドコントロールをかけられていたんです。見かけたらそれこそ自分の命も顧みないほどに逃げるはずなんですが、今回の三鷹の事件はその依頼対象者は追手に向かって行きました」

 それを聞いても難波は首を傾げるだけだ。

「今まで自分らが調査してきた事からは、考えつかない出来事です。自分で命を断とうと思うほど回避するマインドコントロールが掛けられているのに、その相手に向かってゆくのは今までになくて。でもですよ、土井拓実が被疑者になったおかげ…とは言いたくはないですが、なったからこの『塾』への強制捜査の可能性がでましたよね。勿論土井拓実と『塾』の関連性が判ってからですが」

 例え栗山が土井拓実が調査を依頼された対象者であると言ったとしても、マインドコントロールをかけられていたと言うのは可能性であって、判っている自分たちからしたら確実に『塾』と関連があると認識をしていても、それもまた可能性でしかないのだ。

「じゃあ、今回の三鷹の被疑者と、この『塾』とやらの関連性を我々は探ればいいんだな」

 難波は言ってくれた。

 仮に土井拓実が一命を取り留めたとしても、時臣には事情聴取を行使する権利などは無いのだ。

 1番手っ取り早いのは、土井拓実本人に聞くことなのだから。

「関連性を突き止める方が難しいよな。土井が話せるようになってくれたらいいんだが」

 結城も三鷹署の事故調査書を見ながら唸る。

「そうなんですよね。その『塾』に土井拓実の私物があることを確認するとか、そこへ出入りしていた画像や動画が有るとかなら…まだ助かるんですがね」

 取り敢えずはそこで行き詰まるのだ。

 そこでふと、時臣は思いついた。

「あ、でも…ダメ元で確認できるところはないことはないかもしれないな。ちょっと失礼」

 時臣はスマホを持って立ち上がり、少し離れたところで唯希に連絡を入れた。

『はい、どうされました?』

「悪いんだが、伊藤瀬奈くんと吉田龍平くんに連絡とって、土井拓実という子を知っているかの確認となんらかの証拠、画像とか有るか聞いてみてもらえないかな」

『なるほど。土井拓実と『塾』の関連性ですね。解りました…聞いて連絡します』

「宜しく」

「そう言うことか、すまん聞こえてしまったが、元いた子に存在だけでも確認はできるな。画像等が出れば完璧だ」

 結城が片手で謝って言ってきた

「ええ。時期的に被っているとは思うんですが、この塾は嫌な言い方をすれば回転が早いので、状況はころころしてるとは思うんですよね」

「つまり?」

 本庁の一課長(いっかちょう)は追求が激しい。

「依頼を受けて我々が探し当てる時間がそう長くないんです。すぐに見つけて我々を見て怯えさせて、事故に合わせてる節が見て取れます」

「…それは…」

「ええ、悪い言葉で言えば計画的殺人…ということになりますね…」

 難波の顔が引き締まった。

「君らを見て怯えさせて、『殺す』のが目的だと?」

「はい、なので我々は葬儀屋が絡んでいると踏んでいます」

 頭の中に木下が浮かぶ。

「葬儀屋…?」

「見てください」

 時臣は調べが可能だった依頼対象者と事故の結末、そして葬儀社まで記載した唯希の作った書類を前に置いた。

「蓮清堂用賀支店。偶然かもしれませんが、7名亡くなった内4件の葬儀がそこなんです」

 難波も唸る

「火葬場が近かったり、営業に熱を入れているとかもありますが、この狭い調査内で7分の4は少し不気味です」

「よくここまで調べたなぁ…」

 難波は感心して、時臣が持ってきた資料を読んでいる。

「確かにこの葬儀屋はなんかあるな…。会社ぐるみなのか、それとも…」

 またしても時臣の脳裏に木下が浮かぶ。話すべきかどうかは迷うが今はまだ言わないでおく事にした。

 数分後唯希から返信があった。

 電話ではなくLINEである。

〔瀬奈君と龍平君に連絡を入れたところ、龍平くんが知っていました。龍平君より3日ほど遅れてきた子で、特に自己紹介はなかったけれどまた新しい子がいると言うことで覚えていたそうです。今一緒に送った画像は、龍平君が持っていたんですが、鹿島って覚えてますか。『塾』で面倒を見ている先生と言われる人物ですが、その人がそこにいる子達と何気なく撮ってくれた画像があったそうです。後ろに座っているのが土井君だそうですので結城さんに顔の確認をお願いします〕

 それを読んで添付してあった画像を結城に見せると、結城はすぐに気づいた。

「この子だ、免許証と学生証を確認しているから間違いない。後ろに座っているこの子は土井拓実だ」

 なんだか不意に繋がってしまった。

「お手柄です篠田さん。これでその『塾』と土井拓実との関連が繋がりましたね」

 難波も結城からスマホの画像を見せてもらい、時臣に自分に転送してくれるように告げた。

 これだと龍平にも警察の聴取とかが行ってしまうかもしれないが、その時は一緒にいてあげようと思った。彼の証言が今1番大事なのだから。



 それからはこの一件は警視庁の捜査一課の管轄となり、三鷹の事件ごと難波が仕切ることになった。

 その日はそのまま捜一のメンバー各班のリーダーが集められ、時臣の話を聞いたリーダーは班別に分担して今判っているだけの探偵及び興信所に依頼した親御さんの元へ聞き込みに回ることになった。

 ただ気掛かりなのは、何故親御さんが駆け込んだ探偵なり興信所の代表が割れたかと言うことだ。

 それは引き続き、時臣たちで調査することになり、詳細が判り次第難波の方へ連絡をすることになった。

 何にしろこれは、この件の根幹なのできっちり調べたいところだ。


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