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専門家の考察

大体の大枠が見えてきた現状ではあるが、そこから内部に詰めていかなければならない。

分担して色々動こうかという話し合いを重ねてゆく。

 吉田母子を見送って、いざ病院を後にしようとした頃にはもう夕食どきだった。

 中条にも手間をかけたしと言うことで食事をご馳走しようと言うことになり、典孝も終業ということで病院近くのイタリアンの店に行くことにした。

 悠馬に連絡をしたら今ちょうど大学(がっこう)帰りだというので、場所を教えて合流することにする。

 個室というわけではないが、パーテーションが高く張られていて周りが見えない分仲間内の話もできそうな店だ。

「悠馬はもう少しかかるけど、先にいっとこうまず乾杯」

 グラスで揃えられた生ビールで4人はグラスを合わせた。

「いや、すごかったな今日の謎解きみたいなの」

 中条が富山と綾瀬が連絡くれた時の頼もしさを語り出した。

「専門家ってやっぱすげえや」

 先に頼んだチーズの盛り合わせを摘んで、その時の感動を訴える。

富山(とみやま)先生は…と言いますか、精神科の先生は意外と面白い先生が多くて個性的な方多いですからね。趣味の領域に熱心と言いますか」

 典孝もビールをちびちびとしながら、医者の癖などを話してくれる。

「先生の趣味なんだな、洗脳とかマインドコントロールとかの話は」

 時臣が言うと

「まあ、精神科に必須というわけではないですからね。でも必要な時もあると先生も言ってて、そんな感じで暗示をかけられる人を富山先生は探してたんですって。綾瀬さんという方を見つけ出したのはもう執念としか言えないですよ。綾瀬さんも整体の先生で、洗脳等は興味がある程度の方だったのに、やらせてみたら掛け方がいい腕のいい魔術師だったってことでしたからね」

 魔術師って、と中条は笑うが、たしか綾瀬も言っていた。自分はホワイト魔術師だと。

 なんと言っていいかわからないからそう言う言い方がしっくりくるだけだ。その界隈の隠語のようなもの。

「確かにですよね。背景変わったなんて見てるのに気づかなかったですもん。言われてみてから『あ、そういえば』って感じだったのに、あのお二方は一目で見破ってた。しかも連写の画像だけで」

 唯希もチーズを千切りながら話す。

「ほんと、言われなければ判らないよな、あれは」

 大皿で注文したグラタンが届き、一緒に来たシェア用のお皿に唯希が分け始める。

「でもあれは凄いですね。あれで人の心変えてしまうなんてちょっと怖いです」

 確かにあの背景にあった文字などは、肉眼でなど絶対に読めないのに、それを脳が「感じ」とってそして波状攻撃のようにその文字で描かれる対象の顔。

「綾瀬先生も言ってたが、作った人は相当な腕持ってるってさ。でもそこには踏み込むなって釘刺された。怖い業界絡んでるとも言われたな」

 時臣がそう言われたというと、唯希と中条にもいろんな怖い世界が思い浮かぶ。いくらこんな家業でも、首を突っ込みたくない業界はいくらでもあるのだ。

「それに、それ作った人は『依頼された仕事をしただけ』だから罪には問われないだろって。金銭を介しての依頼だからな。まあその依頼をした人物は多少の罪は問えるだろう…とは思うけど、どうなんだ唯希」

「難しいんですよね今の段階だと。最初から殺人や怪我を想定してやっていれば勿論殺人罪や致死罪に問える『可能性』はありますけど…結果みんな自殺であったりしているわけで、しかも証拠速攻消されてしまうと案外…」

 取り分けたグラタンにフォークを入れて、少し考えながら唯希は話すが罪を問えるか…と言ったらやはり裁判で色々な検証を出さないとだし、それでも難しいかもしれない…とすら思ってしまう。

「え~司法ザルかよ。どう見たって自殺に追い込んでんじゃん」

 中条は不服そうだ。

「追い込んでる証拠が出ればね。今日の龍平くんだって何事もないまま助けられたんだから、きっともう今頃パソコン初期化されてるでしょ。何事も証拠だし、自殺なのは誰の目から見ても明らかじゃない。もし犯人が…あの問題の背景を依頼した本人が捕まっても、そんな気は無かったで済んじゃうってことよね」

「でも俺たちは今日、吉田龍平に対するマインドコントロールの証拠は手にしたぞ?」

「それはあくまで龍平くん個人に対しての証拠であって、亡くなった子たちのものではないでしょ。相応のものがその子たちに施されていた証拠は無いんだから」

「やっぱザルじゃん」

 そんな中条に一瞥をくれて、唯希は黙っている時臣に目を配った。

「ボス?」

 ビールのグラスを握りしめてなにか考えてた時臣は

「罪に問えるかが微妙なのは、これやってる人物もわかってるのかなって考えてたわ。だとしたら巧妙すぎるし、何のためにやってるかが全く解らないんだよな」

 それは中条も考えていたらしい。

「そうなんだよな。たとえ月一万でも学生から徴収してたとしたら、死なれたり消えたりされたら損だと思うんだよ。まあ1万貰ったとしたって、ビルの2フロア借りて、安いものだとしてもパソコン支給して、勉強の問題は本格的だと伊藤瀬奈も吉田龍平も言ってたからそれなりのところから引っ張るなり、現役の教師なりに頼んでるとしたら報酬も出るだろうしさ…まったく得にはならないよな」

「しかも、あのマインドコントロールの背景もきっと依頼なんでしょうしねえ」

 やはり、誰かがマインドコントロールで学生たちを危ない目に合わせる「だけ」ではその誰かの得には全然ならないのだ。

「こういう時にさ、得するのってどこかって思うとさ…」

 中条は言い淀む。まさかだよなぁ…とも続けると時臣が

「葬儀屋か?」

 ボソッという。猪野充の通夜の時の木下が頭に浮かんでいた。

 中条も

「俺もそう思っちまったけど…でも考えてみれば一社に集中するわけでもないしなぁ…葬儀屋連合ってのがあるとしたらあれだけど…」

 そうなのだ。例えそうだとしても、ある特定一社だけが利益を上げるのは難しい。

 木下(あいつ)のあの笑みは一体なんだとずっと考えてたが、もしそれがこれに関連しているとすれば、自分の顔を見て逃げて亡くなった猪野充の通夜に俺が出てたらそりゃあ面白いだろうな

…と思う。

 中条の『葬儀屋』という推察はあながち間違ってはいないような気がしてきた。

「唯希、明日からでいいから最近報道された学生の自殺や事故死、事故で病院入りでもいいがそれが起こった全ての所轄をピックアップしてくれ。そしてその事件に興信所や探偵、それに準ずる第三者が関係していたかも調べてほしい。場合によっては俺みたいな処遇受けたやつもいるはずだ」

 唯希は即座にスマホにメモをして、

「はい、わかりました」

 と頷いた。

「中条は自分の依頼人の現在の様子と、悪いが知り合いの探偵や興信所に連絡して、依頼内容は言わないだろうから逃げられて危ない目にあったかどうかだけを聞き出してくれ。俺も俺の方の依頼者と知り合いでそれはやる」

 出来るならば、依頼者全員に子供に帰るよう促してほしいと言いたいところだが、瀬奈の例を見たり龍平も言っていたが母親との接触を避けるようにもマインドコントロールされているようなので、そこもやにわにはできない。

 つくづく用意周到な罠だ。

「わかった。何だか全面戦争みたいだな」

 ワクワクしたように中条は張り切りだし、体力勝負だ!とか言いながら、目の前のグラタンをかき込み始めた。

「あ、そうだ。典孝は悪いが伊藤瀬奈の家と連絡をとって、瀬奈くんのマインドコントロールを解けるかもしれない先生が見つかったから、と渡りをつけてくれないか。先生と伊藤家の予定を聞いて都合のいい日に会わせてあげてほしい。場所は任せる。伊藤家にはお前が行くことと、名前言っておくから」

「わ…かりました」

 自分には関係ないだろうと、もそもそとグラタンを頬張っていた典孝も、仕事が来た!と少々驚きながらポケットから出した紙のメモ帳へ記して頷いた。

 葬儀屋と関連があったときには木下(お前)…見てろよ…

  時臣は木下の顔を思い出し、頭の中でおもいっきりバッテンをその顔へくれてやった。


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