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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第99話:背負い投げ~

 ――――――――――二九日目。


 昨日の慰労会は楽しかったし、おいしかった。

 皆があたしのことを気にかけてくれていたとわかったことも嬉しい。

 ああいうのは毎日開いてくれてもいいなあ。

 でも励ます会を開いてもらうためには、励まされることがないといけないのか。

 ちょっと勘弁だわ。


 あとで気付いたが、あの場にピンクマンがいなかった。

 掃討戦のボスのデカダンスを相手にまともに戦えたのは、彼の整理された発言があったことが大きい。

 慰労会みたいな場に合うキャラじゃないけど、礼を言いたかったなー。


 日課を終え、灰の民の村へ。

 今日はサイナスさんが黄の民の村へ行くので、そのお供とゆーお仕事だ。

 他色の民の村の中まで行くのは実は初めてなので、かなり楽しみではある。


「具体的には、村の東にできた広大な空き地をどうしようかってことなんだ」

「カラーズ各村が好き勝手したら、いずれ来るかもしれない移民に迷惑かもしれないもんな。ある程度どう利用するか決めとくのは、ドーラの今後のために必要かもねえ」

「おっ、ユーラシアはドーラ全体のことを意識しだしたのかい?」

「ドーラのヒロインユーラシアってのは語呂がいい気がして」


 アハハと笑い合う。 


「事前の話では、灰の民の村に隣接してる一部は耕作地として編入していいってことだったんだよ。でもどこからどこまでを、とまでは決まってなくてさ」

「灰の民にばかり有利な話がまとまるわけないじゃん。何で前もって細かいとこ詰めとかなかったの?」

「作戦計画そのものが極秘だったからな」

「あ、なるほど」


 道すがら、サイナスさんと話しながら行く。

 灰の民の村からは西に当たる位置に、カラーズ各村が自領としない取り決めになっている緩衝地帯があり、各村およびレイノスへの通路になっている。

 まーこれが呆れるほど荒れ放題なのだ。

 カラーズの孤立性と内部各村の排他性を、嫌ってほど象徴している。

 入植者が来るって建て前なら、もう少し整備しとかないとダメなんじゃないの?


「魔物がいなくなったから、うちの村の南の海岸沿いに道を通せる」

「その道を通って他の村が東側開拓しちゃダメなの? どこをどうするっていうアウトラインは必要だろうけど」

「というセンで交渉するしかないと思ってるんだけど」


 灰の民の村ばかりにメリットがある話じゃ他の民が反発するに決まってる。

 他所にもメリットを見せればあるいは、か。


「入植者が来ること考えれば、なるたけ開墾進んでた方がいいんだよね?」

「そりゃそうだ。入植者だって何の支援もなく、ただ放り込まれたんじゃ困っちまう」

「でも使いやすいところばっかり開墾したんじゃダメなのか。じゃあこーゆーのはどうかな?」


 あたしはサイナスさんに一つの考えを話した。


          ◇


 カラーズ各村の緩衝地帯から真北へ行くと黄の民の村だ。

 大きな門を潜って村域に入る。

 パッと見にも灰の民の村と違いが大きい。

 というか建物が大きい、人がゴツい。

 クララがこそっと言う。


「緑が少ないですね」


 そーゆーところにすぐ気付くのはさすが植物系の精霊だな。

 確かに畑はあるのだが、土の露出している部分が多い気がする。

 耕作はカラーズ各村の内、灰の民の村が一番上手だろ。


「よく来てくれた。サイナス族長と精霊使いユーラシアよ」


 大柄のモヒカン男、フェイさんだ。


「本来、族長である父が折衝すべきであるのだが、あいにく病で臥せっておってな。代理の俺が話を聞こう」


 フェイさんは黄の民族長の息子さんなのか。

 跡継ぎがしっかりしてて、黄の民は安泰だなあ。

 サイナスさんが尋ねる。


「君が黄の民の全権を委任されている、と解釈していいのかな?」

「うむ、そういうことだ」

「ちょォッーと待てよ。フェイがリーダーなんて、認めてるやつばかりじゃないんだぜェ?」


 いきなり割り込んできた男がとにかくデカい!

 フェイさんも相当だと思ったけど、それより一回り大きい。

 体重ならあたしの三倍以上あるんじゃなかろうか?

 隻眼なのか右目に眼帯をつけている。


「控えろズシェン! 客人の前だ」


 フェイさんも苛立たしげだ。

 ははあ、要は次期族長候補が二人いるんだね?

 どっちがあたしらにとって都合がいいかなんて、一目瞭然だけれども。


「客人?」


 ズシェンと呼ばれた隻眼の大男は、バカにしたように鼻を鳴らす。


「フン、灰の連中じャァねェか。こんなやつらにへりくだるから、おめェは腰抜けなんだよォ!」


 周り見るとズシェンに賛同してる人もチラホラいるようだ。

 これではフェイさんもやりにくいだろうなあ。


「フェイさん、何なのこいつ。身のほどを知らないようだけど」

「なんだァ? てめェ」


 フェイさんもあたしの言い様に驚いたようだが、目くばせをしたら意を感じ取ってくれた。

 できる男だなあ。


「精霊使いユーラシアは、先の魔物掃討作戦を成功に導いた立役者だぞ。お主ではとても相手にならん。引っ込んでおれ!」

「オレッチが丸腰の小娘相手にどうにかなるわけねェだろォがァ!」


 煽り方もお上手。

 眼帯男よ、あんたマジで役者が違うからすっこんでなよ。


 と、急に眼帯が反転し殴りかかってきた。

 しかし伸ばした腕を捕まえて一本背負い!

 びったーんと、ものすごい音がする!


「あっ、ごめん!」


 メチャメチャレベル上がってたの忘れてた!

 息してるだろうな?

 ヤベっ!


「クララ、『レイズ』して!」


 戦闘不能状態から蘇生させる呪文で息を吹き返す眼帯男。

 何が起きたかわからないのか、キョロキョロと周りを見回す。


「ごめんね、いきなりだったから手加減できなかったよ」


 いやあ、よかった。

 交渉に来たのに人を殺めてしまっては、さすがにシャレにならん。


 周りの見物人からは声も出ない。

 そりゃそうだろう。

 不意打ちだったにも拘らず、村一番の大男が舐めてかかった小娘に目にもとまらぬ速さで投げ飛ばされたのだから。


「ズシェンよ、運が良かったな。ユーラシアが武器を使っていたら、お主の首は胴を離れていたのだぞ」


 見物人の一人が言う。


「えっ? でも武器なんか……」


 あたしはパワーカード『スラッシュ』を起動し、刃を具現化させる。

 フェイさんが解説する。


「あれが精霊使いの特殊装備だ。冒険者が丸腰などということがあるものか」


 再び声も出ない黄の民一同。


「同胞が失礼したな。客人よ、こちらへ」

 基本的にいっぺんに一〇以上もレベル上がることなんてないので、身体の感覚が慣れるまでに時間がかかります。

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