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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第97話:『勇者の旋律』

 依頼主が精霊とかおかしなこともあるもんだ。

 依り代タイプの精霊じゃどうやってここへ来たってこともあるけど、そもそも普通の人間相手じゃコミュニケーションが取れないだろうに。

 よっぽど叶えたい強い願いでもあるんだろうか?

 美少女精霊使い的に興味はあるな。


「ねえ君、どうしたの?」


 案山子が答える。


「おう、『精霊の友』が依頼を請けてくれるのか。結構なことだぜ」

「まだ請けるかどうか決めたわけじゃないけど」


 おっぱいさんが瞠目している。

 大方、おっぱいさんが依頼内容とかを聞こうとしても、ロクに口きかなかったんだろうな。

 精霊はそーゆーもんなのです。


「で、わざわざ居心地の悪い人間の多いとこまで来て、やりたいことがあるってことなん?」

「まあな。聞いてくれるかい?」

「聞くだけは聞く」


 精霊の言うことなら力になってやりたいのは山々だが、あたし達が経験の浅い冒険者であることは否定しようがないのだ。

 力不足だったらごめんよ。

 

「依頼内容としては、強草、堅草、賢草、耐草、速草、月草、体力草、魔力草を一株ずつ、オイラのところへ持ってきて欲しい」

「むーん?」


 断わるほどの依頼じゃないが、依頼内容は結構厳しい。

 ステータスアップの薬草はレアで、冒険者だったら手に入れれば食べちゃうから市場に出回んないんだよな。

 期限ありならちょっとムリな依頼だ。

 大体どうして精霊が薬草なんかを欲しがるのか、理由もわからない。

 さすがにそれ聞くのはルール違反だろうしな。


「うーん、期限と報酬教えて?」

「期限は無期限、報酬は言えないが、アッと驚くようなものを提供しよう。どうだ、請けてくれないか?」


 アッと驚くようなものかあ。

 そーゆー引き大好きだなあ。


「よし、無期限なら請けた!」

「本当かい! 楽しみに待ってるぜ」


 案山子の精霊は大喜びだ。

 お茶目なやつめ。


「ではギルドカードを御提出ください」

「いくつか手持ちの薬草あるんだけど、一緒に出しちゃっていいかな?」

「では、今ある分だけでも承ります」


 ギルドカードと強草、賢草、月草、体力草を一つずつ提出する。


「もう半分も揃ってるのかい? しかもレア度の高い月草が含まれてるじゃねえか。やるねえ」

「たまたま持ってただけだけどね。」

 

 昨日の掃討戦であちこち歩き回ってる内に見つけたやつだ。

 祝勝会でお腹一杯だったから、明日の夜にでも食べようと思ってた。

 ラッキーではある。

 それにしても月草って、ステータスアップ薬草の中でもレア度が高いんだ?

 確かに採取したのは初めてだったけど。


「ステータスアップの薬草を採れるか採れないかは運だから、時間かかるかもしれない。けど必ず持ってくるよ」

「おう、楽しみに待ってるぜ」

「ところであんたはどうやってギルドまで来たの?」

「たまたま通りがかった『精霊の友』に助けてもらったのさ。話のわかる男でよ。オイラは運が良かった」


 ふーん、この案件はいろんな運が絡んでるんだな。

 おっぱいさんが付け加える。


「特別でなおかつ難しい依頼ですので、獲得経験値も多くなります。どうぞ精励してくださいませ」

「うん、頑張るよ」


 おっぱいさんと案山子の精霊に別れを告げ、お店ゾーンへ足を運ぶ。


「ユーラシアさん」


 武器・防具屋さんに呼び止められる。

 あっ、『誰も寝てはならぬ』のパワーカードが入荷したのかな?


「ごめんなさい、今お金ないんだ」

「いえ、『誰も寝てはならぬ』の入荷はもう数日かかりますので、お待ちくださいませ」

「何か別件?」


 武器・防具屋さんが笑顔で言う。


「昨日は大層な御活躍だったそうで。ユーラシアさんの獅子奮迅の戦いぶりに関心を覚えた方が多くいらっしゃいまして、何枚かパワーカードが売れたんですよ。ありがとうございます」

「おおう、意外な効果。パワーカード仲間が増えるのは嬉しいなあ」

「つきましては、アルアさんのところへ急ぎカードを仕入れに行ったんです。その際の素材売買で、ユーラシアさんの交換ポイントに一〇〇点加算させていただきましたので、御報告しておきます」

「えっ、一〇〇ポイントも? ありがとう!」

「どういたしまして」


 ニコニコしている武器・防具屋さん。

 交換ポイントに一〇〇点加算だったら、およそ一枚パワーカードが手に入る勘定だ。

 掃討戦タダ働きショックはあったけど、いいこともあるもんだなあ。

 皆が気を使ってくれる。


 買い取り屋で不必要なアイテムを処分した。

 もらったデカダンスのドロップ透輝珠は一五〇〇ゴールドで売れたよ。

 お財布ほとんどすっからかんだったから、本当によかった。


「ユーラシアちゃん、ちょっと」


 オリジナルスキル屋の見かけ幼女大魔道士ペペさんに呼び止められた。

 起きてるのは珍しいな。


「これあげる」

「スキルスクロール?」


 まあペペさんがくれるならそーか。

 さてはロマンスキルだな?


「『勇者の旋律』。味方全員の物理攻撃による与ダメージを上げるバトルスキルよ。これは私のオリジナルじゃないけど、かなりレアなスキルでね。以前スクロール化してくれって依頼があって、結局ボツになった時の試作品なの。ユーラシアちゃんとこみたいなパーティーだったら、物理しか効かない強敵なんかに有効だと思うから。その他にも有効な機会があるけど」


 ん? 含みのある言い方だな。


「ありがとう。でもいいの? スクロールって作るのも手間なんじゃないの?」

「いいのいいの。掃討戦はほとんどユーラシアちゃん達の働きだったのに、結構なバイト料もらっちゃったから。何か悪くって」


 すまなさそうにペペさんが言う。


「ごめんね、ちょっとロマンに欠けるスキルで」

「そこかよ。いや、実用的ならロマンは二の次三の前くらいで」


 言ってる途中でロマンもいると思い直し、『三の前』を追加した。

 これが成長ってやつかな。

 ユー様がエンタメ好きなのは昔からですよ、って目でクララが見てるが。


 『勇者の旋律』か。

 名前が格好いいな。

 うちのパーティーに合ってる気がする。

 この手の一ターン目に使用する支援魔法は、クララに覚えてもらうのがいいだろう。


「次の新スキルは確実にロマンだからね。新しいスキルという言い方は、正確には違うかもしれないけど」


 何だ何だ?

 またもや含みのある言い方だな。

 ペペさんのマイブームなんだろうか?


「うん、楽しみにしてる」

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