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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第94話:精霊使い倒れる

 デス爺の塔の村開発計画を、魔物のいるダンジョンで働く歩合制鉱山労働者じゃんってくさしたら、こんこんと説教された。

 ドーラ全体の発展を睨んだ意欲的な計画なのじゃから、滅多なことを言うなと。

 デス爺の言いたいことはわかるけどな。

 聞いただけじゃあんまり魅力的には思えないだけだ。


 もっともあたしの考えなんて、出現する魔物が人形系とお肉が多かったりするなら簡単にひっくり返る程度のものでしかないが。

 ……人形系とお肉ばっかり出るんだったら、あたしも塔の村へ行きたい。


「じゃ、オレ達は失礼します」

「またねー」


 ソル君達と別れたあとも食べた食べた。

 満腹だぞー満足だぞー。

 腹一杯食べたあとのハーブティーは、サッパリして実にいいな。

 眠くなってきたし、そろそろお開きの時間か。


 おや、ポロックさんとおっぱいさん、食堂の大将とペペさんの四人が、頭を寄せて話をしている。

 どうしたんだろ?

 祝勝会に相応しくない、深刻な表情に見えるが?


「ユーラシアも気付いたか。おかしいだろ?」

「あ、ダン」


 チャラそうではあるが、案外その観察眼はバカにならない男ダンだ。

 早耳を自称するだけあって、既にあの四人のおかしな雰囲気を察知していたらしい。


「ギルドの正職員と嘱託の店主。普通に考えりゃ、『アトラスの冒険者』関係で何かあったんだろうな」

「うーん、まだ魔物が残ってるってことはないよね?」


 ダンが首を振る。


「ねえな。だったら見張りから連絡が来て、即対応のはずだ。あんなところで額を合わせて相談する意味はねえ」


 ダンの言う通りだ。

 じゃあ何だろう?


「変だねえ。この祝勝会の予算がオーバーしちゃったとか?」 

「ハハッ、まだそっちの方があり得るな。俺ら冒険者の知ったこっちゃないが」


 気になるなあ。

 そもそもこの掃討戦には高位魔族が絡んでくる可能性があるから、参加者にも内緒で電撃作戦にしたとのこと。

 まさか今になって悪魔がしゃしゃり出てくるのか?

 悪魔ってメッチャレベル高くて強いんでしょ?

 シャレにならんのだが。


「こんなところで話してるなら内緒事でもないんだろ。聞いてこようぜ」

「うん、そーだね」


 四人に声をかける。


「どうしたのかなー? 皆さんで面白くなさそうな顔して」

「一体何があったんだ?」


 あたしの顔を見た四人がビクっとした。

 えっ? あたしに関わることなのか?

 何なの?


「ああ、ユーラシアさん、君のチャーミングな表情が曇らないことを祈るよ」

「内容によるんだけど」


 ポロックさんはそう言うと、おっぱいさんをチラッと見る。

 どうやらおっぱいさんが説明してくれるらしい。


「ユーラシアさん、落ち着いて聞いて下さいね」

「はい?」


 ちょーっと待ってくれよ。

 難しそうな顔並べられるようなことした覚えないんだけど。

 いや、マジで全然心当たりないぞ?


「ユーラシアさんに今回の討伐作戦参加分配金が支払われないことになったんです」


 ななななな、何ですと?

 よーするに今日ただ働きってこと?

 大赤字なのに頭の中は真っ白だ。

 あはは。


「ど、どーして……」

「おっかしいだろ! 今日一番働いたのユーラシアだぜ?」


 ダンが噛みついてくれる。

 周りの皆も騒ぎに気がついたらしい。

 何だ何だと集まってきた。


 おっぱいさんが困ったような顔をして説明を続ける。


「今日ユーラシアさんは、『アトラスの冒険者』からではなく、カラーズ灰の民の代表として掃討戦に参加されたでしょう?」

「うん、あっ!」


 つまり『アトラスの冒険者』の参加枠じゃないから、支払われるべき報酬がない?

 な、る、ほ、ど、全然考えてなかったわ。

 一本取られた。


「私達もユーラシアさんの際立った活躍を本部に説明したんですが……。報酬に関しては厳密に適用せよということで聞き入れてもらえず……」

「そりゃひでえ!」

「何とかなんねえのかよ!」

「ギルドの信用に関わりますよ?」


 皆があれこれ言い立ててくれる。

 あーちょっとぼーっとしてきた……。


「ユー様!」

「大変だ、精霊使いが倒れたぞ!」

「毛布持ってこい! 横にしとけ!」


          ◇


 ううーん。

 何か悪い夢を見た気がする。


「おーい、精霊使いの意識が戻ったぞ!」


 何だ?

 たくさんの顔がこっち見てるんですけど。


「あたしが可愛いのはわかるけど、皆して乙女の寝顔を眺めるとか、趣味悪くない?」

「あんたが倒れたからだよ!」


 おー、そうだった。

 でも全然疲れが取れてない気がするわ。


「ユーラシアさん、大丈夫か?」


 アンが心配そうに聞いてくる。


「大丈夫大丈夫。でも気が抜けちゃったみたい」


 あたしは身体を起こし、ポロックさんとおっぱいさんに告げる。


「ごめんなさい。今日はもう家で休みまーす」

「あ、ああ。気をつけてね」

「明日、ギルドに顔出すからね」

「……はい」


 申し訳なさそうな顔するけど、おっぱいさんが悪いわけじゃないよ。


「失礼しまーす」


 転移の玉を起動し家へ帰る。


          ◇


 ――――――――――二八日目。


 色々あったせいで昨日は疲れた。

 しかしまさか美少女精霊使いともあろう者が、タダ働きさせられるハメになるとは。


 ……もっとも実はトータルで損したとは思っていない。

 ギルドからの報酬がなかったのは確かに残念ではあるけど、デカダンス戦の莫大な経験値が全てあたし達のところへ転がり込んできたからだ。

 ザコ掃討分も含め、あたし、クララ、アトムは一一、ダンテは一二レベルが上がり、全員二八となった。

 一般にレベル三〇を超えると上級冒険者の仲間入りとされるので、もうちょっとだな。

 少し気恥しい感じがする。

 『ポンコツトーイ』と『実りある経験』による経験値嵩増しの結果であって、あたし達自身全く経験不足であることはよくわかってるからだ。


「まだ新しい『地図の石板』来ないねえ。おゼゼ稼ぎたいんだけど?」


 日課の畑仕事の後、素材を回収しに海岸へ来ている。

 ドーラ特有の東風が心地よいが、次のクエストはまだのようだ。


「こんだけレベルが上がったんだ、次のクエストは楽勝ですぜ」

「ありがたいね」

「レベルアップを見越して、リオーガナイズしてるかもしれないね」


 あり得る。

 上昇したレベルに応じたクエストを割り振ってくれるほうが、おそらくより稼げるだろう。

 石板クエストがいつから分配されるのかは、ギルドで確認しなきゃな。


 しかし先にやっておかねばならないことがある。

 タダ働きの衝撃があたしを打ちのめすよ……。

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