第93話:赤の火魔法使いと『永久鉱山』
「カンが良かったんだよ。さすがあたし」
「新しい『地図の石板』が出なくて変だと騒ぎ始めた人が出たところだったんです。助かりましたよ」
「それにしてもあたしお腹減ってたんだな。いくらでも食べられちゃう」
ソル君パーティーと合流した。
気持ち良く話しながら、なおもお肉を口にする。
空腹もだけど、野外で皆がいて祝勝パーティーだもんな。
勝利は最高の調味料だ。
またしても後ろから声をかけられる。
「あの……ちょっといいか?」
振り向くと赤の民火魔法使いの女の子がいる。
この子もたくさん食べたんだろうな。
より一層ムチムチになってる気がする。
「おお、助かったよ! さっきはありがとう!」
「どなたです?」
「さっきのデカブツ戦の時、セリカと同じタイミングで支援魔法くれた子だよ」
アンが驚く。
「えっ? ユーラシアさん、あのギリギリの戦いの最中に、どこから魔法来るかわかったのか?」
「そりゃわかるよ。魔力がぶわーっと大きくなるじゃん」
セリカが聞いてくる。
「あ、あの時、確か三方向から魔法かかったと記憶しています。ひょっとしてもう一人の方も把握してるので?」
「場違いな黒いドレス着てた、黒の民の呪術師の子だよ。一〇分くらい前に話してさ、今度その子ん家へ遊びに行く約束したんだ」
ソル君パーティーと火魔法使いが、ぽかんと口を開けて絶句する。
こんなことでビックリされると思わなかったな。
ちょっと反応しづらいからさ、褒めるんだったらしっかりバッチリ褒めておくれよ。
「ユーラシアさんのカンがいいのは知ってたけど……」
「一流の冒険者とはこういうものか……」
「あたしは一流じゃねーわ」
まだデビューして一ヶ月も経ってない、超駆け出しの冒険者だよ。
ソル君より三日先輩なだけだわ。
赤の火魔法使いが決心したように話し出す。
何だどうした?
「私の名はレイカ」
「レイカっていう名前だったか。よろしくね」
「ユーラシアのような冒険者になりたいんだ!」
「やめとき」
一言のもとに却下したった。
呆然とするレイカ。
「な、何故だ! 私の実力が足りないからか?」
「いや、食べていけないから」
再び呆然とするレイカ。
「職業として考えると冒険者はちょっとなー。そもそも何で冒険者なんかになりたいの?」
「最後の大型人形魔物戦! あれだけの戦いぶりを見せつけられて、血が滾らない方がおかしいだろうが!」
あー熱血の人か。
こらそこの三人アンドうちの子達、うんうんって首を縦に振るなよ。
「冒険者ってのは、基本依頼を請けて解決して賃金を得るお仕事じゃん? 名の売れた冒険者ならばともかく、依頼を探すこと自体が難しいわ。あんたは赤の民の村の人間で外のことはあまり知らないかもしれないけど、一般に冒険者の評価なんてひどいもんだよ。ごろつきと盗賊の中間みたいな扱いだよ?」
「き、君らはどうしてるんだ? 冒険者なんだろう?」
「あたしとこっちのソル君は『アトラスの冒険者』なんだ」
「『アトラスの冒険者』?」
「ギルドがあって、クエストを斡旋してくれるの。基本的に仕事には困らないんだよね」
「じゃあ私も『アトラスの冒険者』になれば……」
あたしはレイカを制して言葉を続ける。
「理屈としては合ってるんだけど、『アトラスの冒険者』は募集してないの。なろうと思ったってなれないんだよ。あたしは別に冒険者志望じゃなかったけど、突然家に転送魔法陣設置されて、あれよあれよの間に巻き込まれたわ。ソル君も同じだと思う」
ソル君が頷く。
「こっちの二人の子達は冒険者志望で、『アトラスの冒険者』のパーティーメンバーになりたくて参加してるんだ。でもレイカは誰かのパーティーに入りたいんじゃなく、自分で冒険者したいんでしょ?」
図星のようだ。
レイカが絶望の声を上げる。
「じゃあどうやってもムリなのか!」
「ところがムリでもない」
「「「「えっ?」」」」
ソル君のテナー、アンのアルト、レイカのメゾソプラノ、セリカのソプラノ。
うむ、素っ頓狂なハーモニー悪くない。
「要はおゼゼを稼げる手段さえあれば、冒険者は仕事として成り立つってことだよ。おーい、じっちゃーん!」
近くで食休みしてた輝く禿げ頭ことデス爺を呼ぶ。
「何じゃ、騒々しい」
「知ってるかもしれないけど、灰の民の族長ね。じっちゃん、この子は赤の民のレイカ。冒険者やりたいんだって。今日ソロで魔物退治してたから、腕はあると思うよ」
移住先のダンジョンで冒険者を集めて素材回収して売る、みたいな話を以前コモさんがしてたがどうか?
あたしもその計画を詳しく聞きたいのだ。
うまく回ればドーラ全体を活性化させられるだろうっていう、スケールの大きな計画だそうだから。
大きい話は大好き。
「おおそうか。奇特なことじゃ」
「じっちゃん達がやろうとしてること、この子に説明してやってよ」
デス爺は大きく頷き、語りだす。
「港町レイノスの西、カトマスの村から自由開拓民集落群へ街道が伸びておる。ちょうど西域街道の突き当たりに、『永久鉱山』の塔があるのじゃ」
「『永久鉱山』?」
「魔力の流れが集中している場所には、稀に素材等を採取しても再び生成されて枯渇しない場合があり、『永久鉱山』と呼ぶ。ワシらは件の塔付近に集落を作り、募集した冒険者が塔で取してきた素材等のアイテムを売買することによって、発展させようと考えているのじゃ」
「つまり、素材を取ってくれば金になると……」
「うむ。順調に発展してくれば素材運搬の護衛や盗賊退治、街道整備等の依頼も出せるはずじゃ」
「おお……!」
むーん?
レイカは感動してるけど……。
「急がんでもよいぞ。一般の冒険者より仕事は安定するであろうからの。興味があるなら西の果てまで来てくれい」
「ありがとうございます!」
レイカは大喜びで帰っていった。
後ろ姿を見送りながらソル君が言う。
「大きな計画があったんですね」
「うーん、あたしも興味がないではなかったけど、魅力的ではないからね」
「どうしてですか?」
「ちょっと考えてごらんよ。冒険者って言うより、魔物のいるダンジョンで働く歩合制鉱山労働者だからね? 冒険者のロマンとは程遠い気がする」
「これユーラシア、滅多なことを口にするでない」
ハハッ、デス爺もそう思ってたんだろうなあ。




