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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第92話:祝勝会

「本日の栄えある勝利と来たるべき素晴らしい未来、美少女精霊使いの大活躍と皆の大いなる支援にかんぱーい!」

「「「「「「「「乾杯!」」」」」」」」


 『西アルハーン平原魔物掃討戦』、とゆーのが今日の作戦の正式名称らしい。

 今後聞く機会があるかはわからんけど、祝勝会が始まった。

 今日の主役だヒロインだと煽てられて、あたしが乾杯の音頭を取ったのだ。

 いやあ、気分がいいなあ。


「やあ、灰の民の精霊使いよ。今日は世話になったな」


 焼いた肉の香ばしい匂いが漂う中、黄の民のでっかいモヒカン拳士が話しかけてきた。


「あっ、こんにちはー!」


 大男総身に何とかとはよく言うが、この人はできる男だ。

 黄の民にしてはフレンドリーだしな。

 今後カラーズ諸部族の関係改善を考えるにあたって、キーになる人物かもしれない。


「どんどん食べてくれよ、俺達が狩った獣もかなり含まれてるはずだぜ」


 モヒカンの取り巻きが得意げに言う。

 黄の民ズには魔獣狩りを任せたんだった。

 力勝負になる魔獣狩りなら黄の民は活躍できるだろう。

 草食魔獣は基本的にうまーい!


「うん、たくさんいただくよ。あたしは遠慮しないぞー。お腹減った時はお肉だよねえ」

「ハハハ、そうだな。今日のお主の戦いぶりは見事だった。見慣れぬ不思議な武器を使っていたようだが、あれは?」


 パワーカードに興味を持ったか。

 『スラッシュ』のカードを取り出して見せる。


「パワーカードって言うんだよ。装備者の魔力を流して起動すると、刃とかが具現化するの」


 起動して『スラッシュ』のブレードを見せた。

 ほうと感心するモヒカン。


「精霊は実体を持たないから、普通の装備品は苦手なんだよね。パワーカードは精霊が装備できる、事実上唯一の装備なの」

「なるほど、精霊側の事情があってパワーカードをメイン装備にしているのか」

「そーだね。これは武器タイプだけど、防具タイプや分類できないようなカードもあるんだよ」

「非常に面白いが、しかし……」


 難しそうな顔をするモヒカン。

 気付いたか。

 マジでやるなあ。


「うん、これ単体じゃあんまり強くない。七つまで同時に起動できるから、組み合わせを工夫して戦うものなんだ。かなり融通が利くところは気に入ってる」


 モヒカンはしげしげとパワーカードを眺めている。

 しかしって言ってた割には随分と興味を持ったみたいだな。

 御入用の際はあたしに言ってね。

 パワーカード使用者が増えると職人も多くなるだろうから、あたしも嬉しいのだ。


「工夫して戦う、か。お主らに相応しい装備だな。俺の名はフェイだ。黄の民の村に遊びに来ることがあったら訪ねてくれ、灰の民ユーラシアよ」

「ありがとう。ぜひ行かせてもらうよ」


 フェイさんと握手を交わす。

 何かあたし有名になった?


          ◇


「働いて汗かいたからかな。塩味が程よく利いててイケるなー」 


 食堂の大将は美味い肉じゃないって言ってたけど、結構おいしいよ。

 野外で皆がいるからか?

 それとも大将の腕がいいのかな?

 ガツガツ平らげていると後ろから声をかけられた。


「あの……ユーラシアさん?」


 振り向くと黒のロングヘア黒のロングドレスの女性がいる。

 魔物に追いかけ回されてたところを助けた、黒の民の呪術師だ。


「おー、今までどこにいたの。ありがとう! 最後助かったよ!」


 あたしの声で何だ何だと人が集まってくる。


「最後の大型魔物戦の大ピンチのところ、絶好のタイミングで支援魔法くれた三人の内の一人でーす。拍手!」

「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」

「名前聞いてなかったな」

「……サフランです」

「黒の民の呪術師サフランでーす! もう一度拍手!」

「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」


 照れてる照れてる。

 ごめんよ。

 あんたみたいに内気系の子を持ち上げると大体面白いもんだから。

 ついエンターテインメントを優先してしまう。


「ところであの魔法何? デカダンス戦で支援してくれたやつ。聞いたことないんだけど」

「ああ、『マナの帳』?」

「『マナの帳』ってゆーのか。あれただの支援魔法じゃないでしょ?」


 魔法防御が上がるのは事前に聞いてた通りだった。

 しかしそれだけでは説明できない魔力の高まりを感じたな。

 他にどんな効果があるのか知りたい。

 図書室行って『魔法スキル大全』読めって?

 眠くなっちゃうだろーが。


「対象パーティーに聖属性耐性と闇属性耐性、魔法防御上昇を同時に与えるという防御魔法ですのよ」


 クララがこそっと言う。

 聖属性や闇属性を扱うのは非常に難しいです、と。

 サフランはレベル一だろうに、そんな結構な魔法を唱えるだけのマジックポイントを持ってるんだな。


「黒の民に伝わる魔法なの。アターシ達は悪魔や天使とも馴染みが深いから」

「ふーん、変わった魔法があるんだねえ。ところでサフランは普段何してるの?」

「え、普段? ……呪術?」


 だから呪術で何やってんだよ。

 呪術じゃお腹は膨れないだろーが。


「今は主に酢を作って、黒の民に分けているわ」

「買った!」

「え?」


 変な声を出す黒の民の呪術少女サフラン。

 この子は背の高さに比べて顔が小さいから、髪を盛ったり着飾ったりするのが似合うなあ。


「黒の民が酢を造ってたのか。欲しかったんだけど、灰の民の村に入ってくると値段がバカ高いんだよね」

「で、でもどうして酢が欲しいの? 黒の民には馴染みがあっても、他所の民がさほど欲しがるようなものじゃないんだけど?」


 サフランが戸惑う。

 需要はあんまりないかもな。

 酢は保存食などに用いられることがあるが、ドーラではあまり一般的とは言えない調味料なのだ。

 せいぜいレイノスの高級食堂で、帝国からの輸入品が使われるくらいかな?


「『まよねえず』っていう異国の調味料があるんだよ。サラダや揚げ物につけて食べるとおいしいんだけど、作るのに酢を使うんだ。どっかで手に入らないか、探してたの」

「まよねえず? ふうん、じゃあ一緒に作らない?」

「乗った! よおし約束だぞ! 近い内にレシピ持って、黒の民の村行くから」

「そ、そう? じゃあ楽しみに待ってるわ」


 呪術師サフランは軽やかな足取りで去っていった。


 これまでカラーズ他色の民と知り合う機会がなかったから、親交の意味でも今日の経験は大きいなあ。

 遊びに行く口実もできたしな。

 楽しみが増えたぞ。

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