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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第904話:ドーラの未来の構想

「この転移石碑はどこへ繋がっているんだ?」

「掃討戦の跡地だよ。クー川の近く」


 解放されたレイカ及びハオランと合流、灰の民の売るお弁当を食べながらのひと時だ。

 ジンをほぼ一回り案内したから、レイカやハオランにも話すだろ。


「聞いてる? ひどいんだよ。帝国の出国税の問題で、先月ドーラに来た移民は、ほぼ何も所持してなかったんだ」

「今は?」

「法律が変わった。友好国法ってのが施行されて、ドーラへ渡航する際の出国税は撤廃だって」

「では、次の移民からは正常に?」

「そゆこと」


 安心するレイカパーティーの面々。

 レイカがしみじみ言う。


「塔の村も変わったと思ったんだ。最初は灰の民と精霊、エルだけだったのが、段々建物も関わる人も増えて。潜入部隊の襲撃もあったしな。しかし……」


 間を置くレイカ。


「カラーズの変化はよりドラスティックだ。どうしてこうなったんだろう?」

「悪い意味で安定してたからじゃないかな。レイノスほどじゃないけど古い植民集落で、概ね食べるに困らない。他所者を排斥することは一族の結束を高めるという側面があり、それを原動力に各色の村は大きくなった。でも人口がある程度以上に増えてくると、閉鎖社会は物流と経済を停滞させる弊害が大きいことに気付いた」

「ユーラシアさんが動いたから?」

「いや、各村の族長クラスは皆似たことを考えてたんだよ。ちょっとつついたら、交流だ商売だって方向にわーっと方向転換したの」


 ハオランがボソッと言う。


「移民は?」

「問題あるなー。少しずつ来るならともかく、がーっと大量に来ちゃうんじゃ、アルハーン平原の掃討戦跡地しか受け入れられるところがないじゃん? だからあそこを開墾しようぜってこと。クー川の水を引ければどうにでもなるから、転移石碑設置して向こうに人員送り込めるようにして、将来のお客さんの住むとこ作るぞーって」

「今となってみれば、あの時期に掃討戦で魔物を駆逐しておいて良かったですね」

「それも見越してたんじゃないかと思う。あたし今の灰の民の族長サイナスさんに聞かされてたもん。帝国との戦争、後の大量移民の可能性を」


 ジンが驚く。


「え? 掃討戦前の話ですよね?」

「うん。パラキアスさんとデス爺の企むことだから、予想しててもおかしくないって」


 もっとも掃討戦当時、三ヶ月後には帝国から独立してるなんて誰も考えてなかっただろうなあ。

 運命ってどっちに転がってくかわからんもんだ。

 感心する三人。


「ユーラシアはよく情報を拾っているな。ジンとハオランは知らないだろうが、あの掃討戦、直前まで情報が伏せられていたんだ」

「あたしはゴシップ好きなのかもしれない。意識したことなかったけどなー。掃討戦の時は、情報が漏れると悪魔バアルが介入してくるおそれがあったんだって」

「だから電撃作戦か」


 レイカが興味深げな目を向ける。


「これからドーラはどうなっていくと見るんだ?」

「どうなっていくかじゃなくて、どうしていくかだと思ってるよ」

「ふむ、じゃあユーラシアはどうしたいと?」

「やっぱ人口が少ないとつまんないんだよね。大きい商売もできないし、希少な技術の持ち主とか変な発想とかも少ないの。だからどんどん移民を受け入れる。幸いドーラにはそれを可能にする大地があるから」


 頷く三人。


「あとはものやおゼゼがたくさんあった方が楽しいな。売れるもの開発して貿易してドーラを金持ちにしてさ。帝国以外の国とも仲良くできるといいねえ」

「面白い!」

「でしょ? 亜人とも仲良くしたいね。彼らはあたしらの知らないことを知ってるよ。西は亜人が多いから、ノーマル人の可住域は東と北に広げるのがいいね」

「ユーラシアの構想は夢があるなあ」


 あ、ヴィルがレイカのとこ行った。


「ユーラシアさん自身は何に一番注力しているんですか?」

「一番と言われると、カル帝国だな」

「例の皇宮へ飛べるようになったクエストですね?」

「何だかんだで世界最大の国じゃん? 得るものは多いと思うんだ。今簡単に帝国へ行けるのあたしだけみたいだからさ。食い込んで影響力を大きくしておきたいね」

「自分のやりたいことと、ドーラのためとの境目があやふやだ」


 ハオランにしては珍しい、長めのセンテンスだな。


「かもしれない。でも境目なんてあんまり意識はしないかな。あたしはドーラのヒロインだから?」

「背負い過ぎだ。こっちにも少しは任せろ」

「レイカはお姉ちゃんみたいだなー。おっぱい大きいしなー」

「大きいぬ!」


 爆笑。


「私達のやれることは……ユーラシアのやってることに比べると小さいな」

「何言ってんだよ。塔の村は今以上に重要な役割を果たすんだぞ?」

「どういうことです?」

「ドーラ全体としてはレイノスより東に比重をかけざるを得ないんだ。移民を生かさないといけないから。行政府も西域にはノータッチだよ。輸出できそうなものがあったら教えてねーって号令かけてるだけ」

「うむ、あまり変わった感じはしない」

「将来の発展の余地は大きいけど、当面レイノスより東は自給自足が精一杯だよ。西域は生産を受け持ってもらうのが望ましい」


 とゆーか、西域は独自色を打ち出さないと地盤沈下するぞ?

 人口増加が約束されてる東と違うんだから。


「素材産出では、質量ともに『永久鉱山』たる塔のダンジョンに勝るところはないでしょ? これは世界を見渡してもだよ? じゃあ塔の村を中心に、食料の供給を受け持つ集落、亜人との交易を行う集落、素材を利用した産業を興す集落なんかが形成されるべきなんだ。塔の村と周辺集落群が発展すれば、街道沿いだって絶対に賑わうよ。あたしはそーゆーのがいいなー」


 塔の村を中心とした経済圏が作られれば西域は発展できるだろう。

 デス爺も多分似たようなことを考えてるんじゃないかな。

 お、街道沿いが賑わうってのがハオランの琴線を刺激したか?


「どうすりゃいい?」

「頑張ってね」

「丸投げか!」

「塔の村に関わってないあたしに何ができるってゆーんだ」


 人には役割ってもんがあるわ。

 苦笑するレイカ。


「御馳走様。悪かったな、弁当奢ってもらって」

「いいっていいって。売り上げに貢献しないと、うちの族長様の御機嫌が悪くなるからね。じゃあ塔の村に送ろうか」


 転移の玉を起動し帰宅する。

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