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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第903話:カラーズのショップ一回り

「これ、いいですね」

「メンズは地味だけど、縫製がしっかりしてるんだよね。あたしも愛用してる」

「あっ、ユーラシアさんの服装はメンズですね?」

「余計なものがついてないから、動きやすいんだよ」

「ユーラシアさん自身が魅力に溢れているから気付きませんでしたよ」

「そうだったかー」


 アハハと笑い合う。

 ジンと他色の民のショップを覗いている。

 青の民のショップはジンも興味あったみたい。


「黒の民のショップ行こうか。ちょっと面白いもの売ってるんだ。売れてないと思うけど」

「売れてないぬ!」


 アハハ、大声で言っちゃうと可哀そうだぞ?

 面白いからいいけれども。

 常にエンタメが優先されてしまう。


「黒の民は何を売ってるんです?」

「メインは調味料と呪術グッズだよ」

「調味料は売れるでしょう?」

「でもやつらは油断してると、調味料のビンにドクロマークとか入れそうなんだよなー」

「えっ?」


 満更冗談でもないのが黒の民のアカンとこ。

 まあ呪術グッズは需要が多くないから、売れなくても仕方あるまい。

 イシュトバーンさんに頼まれてた醤油を買っていかねば。


「こんにちはー。今日はピンクマンとサフランが売り子なの?」

「うむ。たまにはな。そちらは?」


 ふむ、サフランがいても特にピンクマンに固さはないようだな。

 サフランは嬉しそうだし。

 いい傾向だニヤニヤ。


「塔の村の冒険者ジンだよ。画集販売のキーマンであるレイノスの紙商人ヘリオスさんの息子でもある」

「ふむ?」

「ピンクマンは『アトラスの冒険者』、サフランは黒の民の族長の姪ね」

「よろしくお願いします」


 握手。

 人脈大事。


「サフラン、そのエプロンなかなか可愛いよ」

「ありがとうございます。カールさんが選んで買ってくださったんです」

「よかったねえ。あたしにも買ってくれない?」

「ユーラシアはエプロンなど使わないだろう?」

「使わなくてももらうのはやぶさかではないよ」


 ただ揺さぶってみただけの発言だけどね。

 思ったより冷静で何も出てこないぞ。

 つまらん。

 サフランが言う。


「ようやく醤油の方にも力を入れられそうなんですのよ」

「試験的に商業生産を始められたのだ」

「いいことだねえ。ん? 酢の方はどうなってるのかな?」

「消費は落ち着いてきているな」

「とゆーことはレイノスより西へは出てないのか。酢漬けももう少し一般的になってもらいたいけど……」


 ま、これからどんどん移民も来るのだ。

 人口増えれば消費量も増すから、今は醤油を軌道に乗せる方が先か。

 醤油は移民も欲しいようだし。


「この前移民の皆と魚焼いて食べたんだ。醤油欲しいなって話になったから、移民の意見も参考にするといいよ」

「わかりました。聞いてみます」

「それから異世界にめんつゆって調味料があるんだ」

「「めんつゆ?」」


 同時に声を上げるピンクマンとサフラン。

 うんうん、いいハーモニーだよニヤニヤ。


「どんなものなんだ?」

「醤油ベースで塩辛みを押さえて旨みを大量に追加したようなやつ。醤油と同じ使い方もできるし、お湯で割ればまんまスープになるから、使いやすいかなと感じた」

「煮詰めた骨スープと醤油を混ぜたような感じですか?」

「いや、脂っぽくはなかったから、海藻、キノコ、野菜辺りの旨みだと思う」


 でもどー考えても骨スープ込みの方が美味そうだな?

 まあめんつゆの再現に拘らなくても美味い方がいいか。


「醤油をそのまま売るんじゃなくて、使いやすい形に加工して販売するという方向性ですか」

「買う人のことを考えた商品ってことだね。もちろん素の醤油を欲しい人も多いと思うんだけどさ」

「うむ、検討してみよう」


 頑張ってください。

 移民におゼゼさえあれば醤油は間違いなく売れるのだ。


「ジン、これどう思う?」

「ドクロの……ペンダントですか?」

「これ呪術のアイテムなんだよ。特殊効果付き」

「へえ、これが呪術の……呪いですか?」

「そー思っちゃうわなあ。ピンクマン、これどういう効果なの?」

「ラッキーアイテムだ。運のパラメーターが上がる」


 ジンがすごーく複雑そうな顔をしています。


「どうして……幸運のアイテムにドクロが?」

「効果が効果だから、最高のフォルムが必要だろう?」

「必要だぬ!」


 サフランもコクコク頷いてるぞ?

 ドクロは素敵という黒の民の共通認識。


「で、ジンはこの件についてどう思う?」

「特殊な嗜好の人はいるかもしれませんが、一般的とは思えないですね」

「じゃあどういうデザインにすべき?」

「星とかハートとか、希望を感じさせるものがいいと思います」

「だよねえ。これレイノスで売ってるんだよ。精霊様デザインで」

「可愛らしくていいじゃないですか」

「ね、これが通常の感覚だぞ?」


 解せぬ顔のピンクマンとサフラン。

 あんたらお似合いだよ。


「黒の民がドクロに拘るのは知ってるけど、一般ウケを狙っていこうよ」

「精霊が一般ウケのカテゴリーに含まれるのが、小生納得いかんのであるが」

「いや、精霊様騒動っていう、都合のいい事件が起きたから」

「ユーラシアが起こした事件じゃないか」

「誰が起こしたかは関係ないとして」


 クララがアドルフに絡まれた例の事件だ。

 一種の救世主信仰が生まれたというし、大体美少女精霊使いの知名度が上がってるのに、精霊のイメージが悪いわけがない。

 おまけに……。


「精霊の月にちなんで仕掛けが利くしね」

「あっ!」


 おいおい、ジンの尊敬を得てしまうよ?


「得てしまうぬ!」

「こらヴィル、心を読まない」

「ごめんなさいぬ」


 よしよし、ヴィルはいい子。

 ぎゅっとしたろ。


「デザインはともかく、効果の割に安価ですね?」

「大したもんだわ。でもさすがにこの手のアイテムは量産が利かないんだよね。限定品とかを流通させて知名度を上げておいて、受注生産で儲けた方がいい気がしてる」

「「なるほど」」


 ピンクマンとジンの声がハモる。

 その辺が落としどころですぞ?


「量産できないなら冒険者向けの効果の高いやつか、あるいは帝国の富裕層向けに輸出するのをメインにするのがいいのかなあ?」

「小生も調べておこう」

「ってのはともかく醤油買いたいな」

「大ビンと小ビンがありますよ」

「大ビンの一つ」


 目的達成だ。


「じゃあねー。お幸せに」


 ピンクマンはきまり悪げだがサフランは嬉しそう。

 黒の民のショップを去る。

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