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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第902話:試しに紙の取り引き

「こんにちはー」


 ジンを連れて緑の民のショップに来た。

 実家の商売の関係で、紙には興味があるんじゃないかな?

 緑のショップもなかなか盛況だね。

 主に売れてるのは美人絵ポスターだけど。


「よう、精霊使い。そっちは誰だ。新顔だな」

「冒険者だよ。赤の民レイカのパーティーのメンバー」

「ほお? 『レイカ』のポスターは紳士諸君によく売れているぞ」

「むちむちでぷりぷりでばいんばいんだもんねえ」

「むちむちでぷりぷりでばいんばいんだからな」


 アハハと笑い合うが、案外ジンが真剣だな?

 あれ、ポスターじゃなくて紙を見てるじゃん。

 さすが紙屋の子。


「この紙、いいですね。本当に三枚一ゴールドなんですか?」

「え? ああ。緑の民自慢の紙だぜ」

「三〇〇枚ください」

「毎度っ!」


 ふうん、紙屋の息子が認めるくらいか。

 質がいいことはわかってたけど、カラーズではもう一つ需要がないんだよな。

 レイノスの上質紙には対抗できるのかな?


「この紙って量産利く?」

「何だよ、精霊使いまで。これ原料は草だから、例えば掃討戦跡地で栽培するとかだったら、いくらでも作れるぜ?」

「だってよ?」

「父さんはこの紙を見て、何も言ってなかったですか?」

「いや、ヘリオスさんは緑の民の試作の紙を見てったんだよ。どういうことができるか知りたいってことでさ。製品になってる主力の紙は見ていかなかったな」


 試作紙は試作紙で収穫あったけどね。

 主力で販売してる紙も見てもらうべきだったな。


「おい、このボンは何者なんだい? ただの冒険者じゃないのか?」

「この前カラーズに来た、レイノスの紙商人ヘリオスさんっていたじゃん? その息子なんだよ」

「へえ、おみそれしたぜ」

「ヘリオスさんはこの紙に食いつきそうなんだ?」

「品質と価格を知れば、まず間違いなく」

「ヴィルカモン!」


 今日はヴィルの認知のためにも最初から呼んでおけば良かったな。

 しばらくの後にヴィルが現れる。


「ヴィル参上ぬ!」

「今日はシンプルだね?」

「芸風を模索してるんだぬ!」

「ヴィルは偉いね」


 ぎゅっとしてやる。

 向上心の高いいい子だね。


「おう、悪魔ちゃんか。『ヴィル』のポスターの売り上げもなかなかだぜ」

「ありがとうぬ!」


 ヴィルがニコニコしている。

 自分のポスターが売れると嬉しいのか店員がいい気分なのが嬉しいのか、どっちだろうな?


「ヴィル、レイノスのヘリオスさんと連絡取れる?」


 レイノスで目立っちゃ困るんだが。

 ノーマル人至上主義が薄れてきているとは言え、人の意識はそう変わるもんじゃないから。


「大丈夫ぬよ? あの店の奥は大体人がいないぬ」

「あ、よく知ってるね」

「父さんのいる奥は事務所ですから」


 ヴィルもあちこち調べてるんだな。

 マジで偉いぞ。


「じゃあこれ持ってヘリオスさんのところ行って、連絡取ってくれる?」


 『光る石』スタンドと紙三枚を渡す。


「行ってくるぬ!」

「行ってらー」


 ショップの店員が感心したように言う。


「悪魔ちゃんは普通に転移できるんだな?」

「できる。ただ悪魔は転移じゃなくてワープって言うんだ。何が違うのかよくわからんけど」

「どこでも連絡が取れるのかい?」

「場所がわかってるなら確実だね。例えば『黒き先導者』パラキアスさんみたいなレベルの高い人なら、どこにいるかわかんなくても居場所も見つけてくれるよ」

「ほお? すげえんだな」


 ヴィルはメッチャすげえんだよ。

 赤プレートに反応がある。


『御主人! ヘリオスと話できるぬよ』

「ありがとう。代わってくれる?」

『代わるぬ!』

『いやあ、精霊使い殿。驚きましたぞ』

「今後もヘリオスさんと連絡取りたい時には、ヴィルを飛ばすからね」

『ハハハ、わかりましたぞ。これが『光る石』スタンドですな? いただいてしまってよろしいので?』

「もちろん。手を当てて念じると魔力が溜まって使用可になるから、使ってみてよ」

『ありがとうございます。そしてこの紙は?』

「今、ジンとカラーズに来てるんだ。緑の民のショップで売ってる紙を見て、ヘリオスさんが食いつきそうだって言うもんだから、ちょっと見てもらおうかと思って」

『ジンが? 代わっていただけますか?』


 ジンに赤プレートを渡す。


「父さん、久しぶり。それ、いい紙だろう?」

『うむ、カラーズ緑の民の作る紙の質が優れていることは知っている』

「今送ったのは、カラーズで普通に販売してる紙なんだ。こっちでの小売価格が三枚一ゴールド。僕の見る限り品質にバラツキはない。量産も利くって」

『ほう、いい条件が揃っているな』

「父さんは試作品の方を見ていったんだって? ショップの方はあまりチェックしていかなかったみたいだからさ」

『この紙が三枚一ゴールドか。輸送費で二割乗るとしても十分実用に足るな』

「あ、そうか。輸送費がかかるんだな……」

『大量買いつけを約束すれば製造費輸送費は安くなるかもしれんぞ? まあいい、精霊使い殿に代わってくれ』

「もしもしこちら代わったよ。ちなみにこの通信は緑の民のショップ店員も聞いてるからね」

『ハハハ、では三〇〇ゴールド分九〇〇枚注文よろしいですかな?』

「毎度あり! 次の輸送隊は五日後になるんで、その時に出荷するね」

『イシュトバーン翁の画集とともにですな? 楽しみにしております』

「じゃ、ヘリオスさんよろしく。ヴィル、こっちへ戻ってきてくれる?」

『わかったぬ!』


 店員が言う。


「ありがとうよ、精霊使い」

「いいんだよ。貸しを押しつけとくのは趣味だからね」

「え?」


 不安そうな顔になるショップ店員。

 冗談だってばよ。

 あたしだって画集はどんどん増刷頼むと思うから、よろしく頼むね。

 あっ、札取りゲームもだ。


「父は試しにカラーズ産の紙も入れてみた、というだけの感覚だろうと思いますが」

「まあね。評判が良ければガバッと注文入るよ。同時に値下げ交渉されるから、安くし過ぎないように注意ね」

「交渉なんて、あんまり得意じゃないんだが」

「商売してる分際で何を言ってるんだ。職人さんと相談してこれ以上引けないラインはあらかじめ決めておいて。金額以外でサービスしてやればいいよ」

「金額以外? 情報とかか?」

「そうそう。紙飛行機の折り方とかね」


 やり方はいろいろあるよ。


「じゃーねー」

「バイバイぬ!」


 緑の民のショップを後にする。

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