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にわか冒険者の破天荒な一年間 ~世界の王にあたしはなる!  作者: 満原こもじ


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第901話:姉弟だったの?

 家族水入らずの時間は大事だからね。

 レイカを置いて、ジンとハオランとともにもう一度緩衝地帯へ。


「黄の民のショップ行こうか。フェイさんがいると思うから」

「……」


 無言だけど嬉しそうなハオラン。

 フェイの兄貴には小さい頃よく遊んでもらったって、以前言ってたしな。


「フェイさんというのは?」

「黄の民の若い新族長だよ。あたしの見る限り、カラーズで一番できる男だね。いや、一番悪いやつかな」

「へえ、ユーラシアさんがそこまで認める人ですか」

「……」


 無言だけどハオランが聞き耳立ててるのはわかるわ。

 ジンは人脈を大事にしたいみたいだな。

 フェイさんとは知り合いになっとくといいよ。


「ちょっと前に、あたしとフェイさんの縁談があったんだよ」

「「えっ?」」


 ハハッ、さすがにハオランでも無言を貫けない話題だったらしい。

 かくかくしかじか。


「……とゆーわけで、フェイさんの策略だったんだ。悪いやつだから」

「話を壊しっぱなしってことはないですよね? ユーラシアさんらしいですが」

「あたしらしいってどーゆー意味だ。別の子と話まとまったんだ。一年後くらいに結婚って話だよ。輸送隊の副隊長やってる子で、他色の民の皆もお似合いだって言ってるんだ。めでたしめでたし!」

「ユーラシアさんはいいんですか?」

「あたしもその子推しだったからいいんだよ」

「いえ、ユーラシアさん自身の身の振り方は、という意味で」

「でもあたしはドーラのアイドルだし」

「「……」」


 無言になるなよ。

 不安になるだろーが。

 黄の民のショップにとうちゃーく。


「おーい、フェイさーん!」

「おう、精霊使いユーラシアか。そちらの二人は?」

「赤の民カグツチ族長の娘のレイカが、西の果て塔の村で冒険者やってるんだ。そのパーティーメンバーだよ。一人はこの前来たレイノスの紙商人ヘリオスさんの息子ジン」

「ほう、ヘリオス殿の息子か。よろしく」

「よろしくお願いします」

「もう一人が西域の自由開拓民集落クルクル出身の拳士ハオラン。元々は黄の民の出だって言うんだけど」

「ハオラン? おお、面影がある。大きくなったな。見違えたぞ」

「お久しぶりです」

「インウェン! ハオランが現われたぞ」


 一応説明。


「インウェンが輸送隊の副隊長で、フェイさんの嫁ね」

「……」

「あっ、ハオランいらっしゃい!」

「姉ちゃん……」

「え?」


 えーと?


「インウェンとハオランは実の姉弟なのだ」

「全然似てないじゃん」


 マジかよ!

 全く想定外だったぞ?

 ハオランは横がガッチリなのに、インウェンはほっそりじゃないか。

 いや、黄の民の男女に大体当てはまることか。


 フェイさんがからかう。


「ユーラシアが驚くのは珍しいな」

「いやー、まーったく考えてなかったわ。ノーヒントだったからなー」


 言われてみればインウェンは長女気質だ。

 実直そうなところも、ハオランと共通するっちゃ共通する。

 でもなー、ハハッ、やっぱ似てないわ。


「私も五年ほど前まではクルクルにいたんです。しかし両親の折り合いが悪くなり、私は母と戻ってきまして……」

「ふーん、人生色々だなあ」


 インウェンとハオランはまだ幼かった頃、西域で一旗揚げることを目指した両親とともに黄の民の村を離れた。

 後にインウェンは黄の民の村に戻り、ハオランは父親とクルクルに残ったということか。

 インウェンが黄の民に仲良さそうな女子がいないことや、黄の民の子供達定番の肝試しを経験していないことが、おかしいなと感じたことはあった。

 幼少期に黄の民の村から出たことが理由だったのか。

 ……ちょっと後押ししてやるか。


「黄の民の諸君注目! ハオランが凱旋したぞお!」


 何だ何だと集まる黄の民と、何を言い出すんだという目で見るハオラン。

 黙って聞いてなさい。

 あたしのやることは間違いないわ、大体は。


「ああ、ハオランか」

「面影あるな」

「よく来た!」


 おおむね歓迎ムードじゃないか。

 何があって両親が黄の民の村を出てったかは知らんけど、深刻な理由じゃないみたいだな。

 深刻な理由だったら、インウェンがフェイさんの嫁なんてあり得ないか。


「ハオランは現在、塔の村の上級冒険者として活躍中だ。拍手!」

「「「「「「「「パチパチパチパチ!」」」」」」」」

「先々月には赤の民レイカのパーティーの一員として、帝国軍潜入工作部隊の足取りを捕捉することに成功。これを打ち破るのに大きな役割を果たした、ドーラ独立の知られざる英雄だよ!」

「そりゃすげえ!」

「ほお、精霊使いが評価する冒険者か」


 ハオランよ、こういうのは居心地が悪かろう。

 でも得意技の無口を生かし、黙って持ち上げられているがいい。

 あたしのターンだ!


「ハオランはまだ黄の民の村に戻るわけにはいかない。何故なら必要とされている場所があるから。しかしハオランの魂は黄の民の下にあり! 姉インウェン共々よろしくっ!」

「「「「「「「「うおおおおおおお!」」」」」」」」


 大歓声。

 ハハッ、気持ちよく煽ったった。

 ハオランとインウェン揉みくちゃになってるぞ?


「ユーラシアよ、すまんな」

「サービスだよ」


 フェイさんが謝意を示してくる。

 いいんだよ、インウェンはあたしの推しでもあるからね。


 弟ハオランがドーラでも有力な冒険者であるという事実を知らしめることは、姉インウェンの立場を引き上げることにもなるのだ。

 フェイさんとインウェンの婚姻は、まだ正式に成立したわけではない。

 上流二家との縁談は流れたとはいえ、インウェンサイドに隙があれば復活するかもしれないしな。

 インウェン推し材料があれば、あたしが目一杯膨らませたるわ。

 

「ジン。今識字率向上のための切り札、札取りゲームっていうのを作ってるんだ。ヘリオスさんにも注文もらってるんだよ。製品の木の部分は、黄の民が作ってるの」

「うむ、ヘリオス殿とカラーズは、今後関わりが大きくなるだろう」

「今後も父ともどもよろしくお願いいたします」


 ジンは経験を積み、見聞を広めるために冒険者になると言っていた。

 カラーズにはそうそう来られるものじゃなし、もう少しあちこち案内してやろう。


「フェイさん、しばらくハオランのことよろしくね。あたし達ぶらぶらしてくる」


 大きく頷くフェイさんと別れ、あたしはジンとデートだな。

 緑の民のショップへ。

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