第90話:決着・その後
このままじゃデカダンスの『ブリザド』連発に耐えられない!
外野よろしくっ!
「三属性バリアーっ!」
「ファイアーウォール!」
「マナの帳っ!」
セリカ、赤の火魔法使い、黒の呪術師が絶好のタイミングで支援魔法をくれた!
よーし、あんたら最高だ!
ブリザド二連に耐え、さらに聖火教ハイプリーストが連続でリカバー!
もう勝ったも同然だ。
あたしは親指を立て、セリカ達にグッジョブのサインを送る。
四人連続で経穴砕き!
「「「「「「「「二九! 三〇! 三一! 三二!」」」」」」」」
「クオオオオオオオオオッッッッッッ!」
断末魔の叫び声を上げるデカダンス。
一瞬静止したあと、ゆっくりと崩れ落ち、動かなくなる。
闘気と魔力が感じられなくなったのを注意深く確認し、外野の皆のほうを振り向いて右手を上げた。
しょうりをかくしんしたじゅうごさいびしょうじょのおっさんなきめぜりふにおののけ!
「宴会だーっ!」
「「「「「「「「うおおおおおおおおっ!」」」」」」」」
確かに身体は疲れている。
でも皆とともに戦い、勝利した実感が確かにあった。
実感は突き上げた右腕に?
それとも踏みしめた両足に?
違うよ、興奮に包まれたハートの中にあるんだよ。
◇
結局、祝勝会はドリフターズギルドでなく、戦場だったこの地の、灰の民の村に隣接したところで行われることになった。
うんうん、参加者全員の勝利だからね。
ギルド所属の冒険者だけで祝うのはもったいないよ。
灰の民の皆も準備を手伝ってくれている。
「おーいユーラシア、朗報だぜ!」
あたしを見つけたツンツン頭の情報屋ダンが話しかけてくる。
ネタを仕入れるスピードはさすがだなー。
「朗報とは善き知らせなり!」
「何だそれ? 当たり前じゃねえか」
「こーゆーのはノリだってばよ。さあ、朗報って何だろ。楽しみだ!」
小鼻を膨らませるダン。
「さっき小耳に挟んだんだけどよ、あんたがあのデカブツ倒しただろ?」
「ん? まあ」
うちのパーティーだけでデカダンスを倒したわけじゃない。
皆の助けがあってこそだ。
正面からあのデカブツを引き受けたって意味ならばその通りだけど。
「本来はザコだけを今日のメンバーで倒して、人形系ボスを倒すのは上級冒険者に依頼する予定だったんだそうだ」
「あたしも似たようなこと聞いたわ」
デス爺やポロックさんも言ってた。
常識で考えれば、中級以下の冒険者でデカダンスを倒すのなんて無謀だろうからな。
「ところが今日の大勝利だろ? 依頼するはずだった上級冒険者への成功報酬と、結界を維持する予定だった聖火教プリーストへの依頼料。その大部分が還元されるらしいぜ」
「ほうほう、とゆーことはつまり?」
「今日参加した『アトラスの冒険者』全員への分配金が増えるってことよ!」
「やたっ、嬉しい! あたし大赤字だからさあ」
「え? 赤字ってどういうことだよ」
何で不思議そうな顔してるんだよ。
当たり前だろ。
「だってデカダンス倒すために『経穴砕き』のスキルが必要だったじゃん? ダメージ与えられる手段が他にないんだから」
「まあな」
「当然全員分買い揃えるでしょ? ポーションやマジックウォーターもアホほど買い込んだし。今の所持金ゼロに近いわ」
「ん、ちょっと待てよ? 知ってなきゃ準備なんかできないよな? あんたどこまで事前に情報掴んでたんだ?」
「ほぼ全部。あ、そうだ、最近のギルドでの流れ教えてよ。どういう経緯でこの掃討作戦に参加ってことになったのか」
ダンは呆れたように言う。
「全部かよ」
「たまたまクエストで行った先とか寄ったところとかで、ちょっとずつヒントをもらえてさ。ラッキーだったな」
「まあ後々ゆっくり聞かせてくれ。最近のギルドでの流れったって、石板クエストの配給が止まったって騒ぎ出した連中がいてよ。今日の朝説明するから戦闘準備してギルドに集まれってさ。で、いきなりこっちへ送り込まれたんだよ」
大体思ってた通りだな。
カンが冴えてた。
「不参加が許されなかったんだ。ひでえ話だぜ。勝ったからいいようなものの、ブーブー言ってるやつは多かったな」
「ギルドからどこまで説明あったかわからないけど、大掛かりな掃討作戦があることが悪魔なんかにバレると、介入されるかもしれなかったんだってさ。だから参加者の安全のために、内緒にして進めようってことだったらしいの。これギルドで話しといてくれる?」
「マジかよ。悪魔はヤベえな。裏はわかったぜ。……あんた最近ギルドで見なかったけど、今日の掃討戦関連なのか?」
「口滑らせて作戦が壊れると申し訳ないじゃん。いや、アンセリに悟られちゃってさ」
「えっ、あの二人は知ってたのかよ? 道理でスキルハッカーがギルドに来てからも、淡々と焦りもせずマウ爺んとこで訓練してたわけだ。あんたの入れ知恵だな?」
よくわかってるじゃないか。
案外頭の回転が速いよな、こいつ。
「まあね。でも『早耳のダン』をもってしても、事前にギルドで得られる情報はなかったってことだね?」
口をへの字に曲げてダンは言う。
「まるでなかった。ヒントでもあれば怪しいとは思えたかもしれないが。あっ、こらアン、セリカ! あんたらこの掃討戦あるの知ってたんだろ? 俺にも黙ってるなんて、ひでえじゃねえか!」
ソル君パーティーがこっちへやって来た。
「今日の作戦についてか? ソール様以外には話すなと、ユーラシアさんに口止めされていたんだ」
アンがつっけんどんに言う。
「結局あんたのせいかよ!」
「そーだ、あたしが全ての元凶だ!」
口をパクパクするダン。
ハハッ、黙らせたったわ。
「まだ祝勝会まで時間あるね、今の内に図書室行こうか」
「「「はい!」」」
「図書室? 何しに?」
ダンが訝しそうだ。
祝勝会と結びつかないもんな。
「灰の民の村の図書室に、魔法とスキルの本が置いてあるんだよ。それを見に」
「ああ、スキルの習得候補を見繕っとくわけだな?」
「うん。ダンは鋭いなあ。一緒に来る?」
ダンは首を振る。
「いや、普段会わねえ人達も多いだろ? 俺はこっちの会場で色々話を聞きてえんだ」
「おお、さすが情報屋」
あたしはソル君パーティーを連れて図書室へ行く。
慣れた図書室への道を歩くことで、冷めやらぬ興奮がようやく落ち着いてきたのかな。
これが達成感か。
悪くない。
デカダンス退治は、ユーラシアの冒険者生活における一つの大きな節目になります。




