第899話:赤眼族クエスト完了
――――――――――一六七日目。
「たまには心ゆくまでガンガンする人!」
「「「はい!」」」
『焼け野原』の転送先にやって来た。
コブタ肉を土産に、いやまだお肉と言える状態になってないけど、赤眼族の村に行くつもりだ。
今? 当然転送先の縞の建物の中にある、魅惑の銅鑼の前にいるんだよ。
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
「サイコーね!」
「控えめに言って最高だねえ」
うちの子達とともに銅鑼をガンガンする日は久しぶりだなあ。
ストレスが発散されるわ。
え? ストレスなんてないだろうって?
ないけれども。
「姐御、もう一度鳴らしていきやしょうぜ」
「アトムはいいこと言うなあ。採用!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
「ユー様、念のためもう一度いかがでしょう?」
「何が念のためなんだかわからんけど、逆らえる気がしないから採用!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
「ボス、トゥデイズラストチャンスね!」
「ラストである必要は全くないね。でも物事限度とゆーもんも必要か。採用!」
「グオングオングオングオングオングオーン!」×四。
いやあ堪能した。
朝からガンガンはきっといいことがある予兆だわ。
外に出て、クララの『フライ』でコブタを運ぶ。
「あっ、精霊使いの人!」
「おっはよー。お土産持ってきたから、皆で分けてね」
「やあ、ありがとう。でも前のやつがまだかなりあるんだぜ?」
「何言ってるの。お肉の責任じゃないじゃん」
責任問題についてアハハと笑ってる内に、村長とミサイルが来た。
「いらっしゃい」
「おっはよー」
「よく来た!」
「こっちその後どうかな?」
「ダイコンの葉は既に食べられますな」
「肉と煮ると美味い!」
「よし。今日のもおいしく食べてね」
うんうん、表情明るいし、大丈夫だね。
ちょっとミサイルの肉付きが良くなった気がする。
「そーだ、聞きたいことがあるんだよ」
「何です?」
「赤眼族にはかれえって食べ物があると聞いたんだけど?」
村長とミサイル、村人が顔を見合わせる。
あれ? 揃って微妙な表情じゃん。
何で?
「あるな。それが?」
「前に言ったかもしれないけど、あたしは他所の文化のおいしいものに興味があるんだよ。あたしの知ってるかれえと、同じものかと思って」
「カレーを御存じであると?」
「うん。くみん、たあめりっく、こりあんだあみたいな、聞きなれない香辛料やハーブを使った煮込み料理」
「「それだ!」」
村長と村人の声が重なる。
何事?
ミサイルが苦々しい顔で言う。
「不味い」
「不味い? かれえが? んなわきゃないじゃん」
それだっていうからには、美少女精霊使い様が御存じのかれえと同じものでしょ?
なのに不味い?
どーゆーこと?
好き嫌いはあるかもしれないけど、かれえが不味いわけないだろ。
「たまに食べさせられる。草を煮た汁だ。不味い」
「草を煮た汁? 著しく間違ってるような」
「作り方が失伝してしまっているんだ」
「でもくみんやたあめりっくはレシピに残ってるんだよね?」
「名前だけだ。そもそもクミンやターメリックが何だかわからない」
「え?」
赤眼族が追放された部族とゆーのが本当なら、レシピだけあっても香辛料を知らんってのは考えられるな。
うちのクララ先生みたいな、植物の知識を都合よく持ってる存在の方が稀だろう。
調理法以前の問題なんだが。
ちょっと突っ込んでみるか。
「材料の類も、今はわかんなくなっちゃったってことなんだ?」
「いや、『今は』ではない」
「最初からわからないんだぜ」
「どーゆーことだってばよ!」
説明する村長。
「我々は追放された一族である、という伝承があるんだ」
「へー。追放ってどこから?」
やはり予想通り。
バエちゃんとこの世界と赤眼族の因縁が今明らかに?
「わからん」
なりませんでしたー。
「昔のことなんで詳しいことはわからねえ。しかし俺達がどこぞから追い出されたってのは事実らしいんだな」
「カレーは以前の世界で非常に好まれていた、一般的な料理だったらしいんだ。名前やレシピは伝わっているが、材料がまるでちんぷんかんぷんでな」
「味だって誰も知らねえしな。再現のしようがねえよ」
「不味いものは再現しなくていい」
「何言ってるんだ、ミサイル。かれえはすごくおいしいんだぞ?」
「そうなのか?」
「ビックリするよ。スパイシーで、これまでに食べたことないタイプの味だから」
驚く村長と村人。
「食べたことあるのか?」
「本物のカレーを?」
「あるよ。材料の種類からして同じものだと思う」
言い方はぼかしておけ。
本物のカレーっていうの、ちょっと心に響くなあ。
「『アトラスの冒険者』はあちこちに行くから、本物のカレーを食べる機会もあるのか」
「赤眼族のかれえとどう違うのか知りたかったんだけど、わからないってのは予想外だったよ。主要な香辛料は魔境で手に入ることがわかったんだ。今年中に再現できると思うし、来年には量産を狙ってる。だって美味いんだもん、売れるに決まってるから」
「美味いんだったら、俺にも食べさせてくれ!」
「いいけど、夏まで待ちなよ。作物が収穫できてこないとどーもならん」
「わかった!」
ハハッ、ミサイル嬉しそう。
かれえはマジで美味いから期待してていいぞ。
村長が言う。
「できれば香辛料を教えてもらえるとありがたいんだが」
「いいよ。ここでも作れると思うから持ってきてあげる。でも今年は諦めて。かれえ以外に何かに使えるか、腹膨れるかって言われると難しいんだ」
将来的には香辛料は赤眼族が栽培して、売ってもらってもいいな。
でも今年は食べられるものを何とかするのが最優先だから。
そもそも赤眼族の集落は、さほど耕地が広いわけじゃないしな。
「収穫がなかったことが収穫だわ。今日は帰るね」
「ああ、すまなかったね。肉は捌いておいしくいただくよ」
「また来い!」
転移の玉を起動して帰宅する。
『クエストを完了しました。ボーナス経験値が付与されます』
ふむ、これで赤眼族クエストは終了扱いか。
なるほど、ゲレゲレさんが言ってたみたいに、特に何をしたわけでもなく終わったな。
『本クエストについてレポートを書いて、チュートリアルルームに提出してください』
レポート来たぞー。
バエちゃんに相談だな。




